台湾への特許出願とは? 手続の流れや特許の検索方法などを紹介します



現在、多くの日本企業が台湾の特許庁へ特許の出願を行っています。台湾は日本と交流の深い隣国でもあり、半導体をはじめとしたハイテク産業で世界のトップを走る国でもあるため、今後、台湾での特許取得は一層重要性を増すものと考えられます。


ここでは、最近の台湾への特許出願状況や、台湾への特許出願で押さえておきたい基礎知識、実際の手続の流れや先行調査に利用できる検索用データベースなどを紹介します。



台湾への特許出願状況


多くの日本企業が台湾へ特許を出願している

台湾への特許出願は、日本企業をはじめ多くの外国企業が行っています。


2019年の調査によると、台湾の特許庁である「智慧財産局(TIPO)」への特許の出願件数は48,268件でした。そのうち、台湾以外の外国からの出願件数は29,284件(60.7%)に達します。


外国からの出願で最も多いのは日本からの出願で、出願数は13,195件でした。2位の米国(6,341件)、3位の中国(2,723件)と比べても、その多さがわかります。


出典:台湾特許の概況と特許調査用データーベース|日本アイアール株式会社



台湾へ特許を出願する企業が多い理由とは

台湾など海外で特許を取得するメリットは、日本で特許を取得するメリットと同じです。特許権を取得することで、その国での製品の製造・販売がしやすくなり、模倣品への対応も可能になります。


日本企業から台湾への特許出願が多い理由は、まずひとつに、日本企業が多く進出していることがあります。1,500を超える日本企業が進出しているとされており、日本の製品やサービスは台湾の人々の生活に溶け込んでいます。


また、台湾が半導体などのハイテク分野において、世界トップの生産力を保有していることも関係しています。独立行政法人工業所有権情報・研修館の調査によると、外国からの出願上位企業として、東芝、東京エレクトロン、富士フイルム、三菱電機などの名前が並びます。半導体などのハイテク分野は今後の注目分野であり、台湾への特許出願は今後さらに増えていくことでしょう。


出典:台湾における専利(特許、実用新案、意匠)出願の出願人ランキング(国外出願人)|新興国等知財情報データバンク(独立行政法人工業所有権情報・研修館)



台湾の特許庁「智慧財産局」


台湾の特許庁にあたる機関は、「智慧財産局(Taiwan Intellectual Property Office、通称TIPO)」という名称です。台湾の知的財産権を扱っており、日本の経済産業省にあたる「行政院経済部」の管轄です。


▼智慧財産局ホームページ

http://www.tipo.gov.tw


智慧財産局のホームページでは、主に中小企業向けに知財に関する情報を提供しています。


智慧財産局では、専利法(日本における特許・実用新案・意匠)、商標法、著作権法、営業秘密法、IC回路配置保護法などを所管しています。ただし、公平交易法(日本のおける不正競争防止法)は行政院公平交易委員会という別組織の所管です。



台湾への特許出願の基礎知識

出願は「直接出願」もしくは「パリ条約ルート」

台湾への特許の出願方法(出願ルート)は2つあります。ひとつは、台湾の特許庁である「智慧財産局(TIPO)」に直接出願する方法です。


もうひとつは、日本で1年以内に出願した特許がある場合に「優先権」を主張できる、「パリ条約の例による優先権」を利用したルートです。台湾はパリ条約に加盟していませんが、相互主義により、日本と台湾の間の特許出願では優先権の主張が認められています。


なお、海外への特許出願の定番である「PCT国際特許出願(通常PCTルート)」は利用できません。これは、台湾がPCT非加盟であるためです。



出願言語は中国語(繁体字)。外国語は翻訳文を要提出

台湾への特許出願は、台湾で用いられる中国語の「繁体字」が基本となります。また、日本語、英語など、9つの外国語での出願も可能です。


外国語で提出する場合は、指定された期間内に繁体字による翻訳文を提出することで、明細書等を提出した日に行った出願として認められます。



出願には現地代理人が必要

台湾への特許出願には、現地の代理人が必要です。日本を含む多くの国では、その国の特許庁に対して代理手続ができるのは、その国で資格を取得し登録している弁理士のみとなっています。これは台湾も例外ではありません。


台湾では、日本の弁理士に相当する「専利師」が現地代理人を務めるケースが大半で、日本語の明細書などを現地代理人に渡し、台湾用の特許出願書類を作成してもらうのが一般的です。智慧財産局(TIPO)からの通知も、原則、現地の代理人へ送られます。



台湾への特許出願の流れ

1.出願に必要な書類

台湾への特許出願に必要な書類は、以下の5つです。

  • 願書

  • 明細書

  • 特許請求の範囲

  • 要約

  • 図面

繁体字が基本ですが、日本語や英語での出願も可能です。その場合、4ヶ月以内(2ヶ月延長可能)に繁体字の翻訳文を提出する必要があります。


受理される外国語は、日本語、英語、韓国語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、アラビア語、ロシア語の9言語です。



2.審査請求

台湾も日本と同様、特許を出願しただけでは審査がされないため、審査請求を行う必要があります。


審査請求は、智慧財産局(TIPO)への出願日から3年以内に行うことができ、その期間に審査請求がされない場合は、出願は取り下げたものとみなされます。



3.審査

審査請求を行うと、審査が開始されます。智慧財産局(TIPO)が特許の審査に要する期間は、通常2~3年程度です。


ただし、審査を早める「早期審査プログラム(AEP)」や「特許審査ハイウェイ(PPH)」といった制度も用意されています。AEPが適用された場合6~9ヶ月、PPHが適用された場合は約4ヶ月まで審査期間が短縮されます。



4.再審査

審査の結果、拒絶査定となった場合、査定書送達日の翌日から60日以内に限り、再審査の請求ができます。


再審査は、これまで当該の出願特許の審査に関与していない、別の審査官が担当します。



5.登録

特許庁が審査を進めた結果、晴れて特許が認められたら登録となります。


特許査定書の送達日の翌日から3ヶ月以内に、証書料と1年目の特許料(NT$3,500)を納付することで登録となります。


なお、万が一、故意でなく納付期限を超過してしまった場合は、6ヶ月以内に1年目の特許料の倍額を納付することで登録が可能な救済措置が適用されます。



台湾の特許期間と特許年金


台湾の特許期間は「20年」

台湾の特許の存続期間は、出願日から数えて20年までです。


なお、医薬品・農薬品と、それらに関する特許に限って、5年を限度に1回のみ特許期間を延長できる制度が用意されています。



台湾の特許年金

台湾も、特許の維持のために年金を納める必要があります。年金額は以下の通りです。


【特許年金の金額】

  • 1年目(年金+証書料) NT$3,500/年

  • 2~3年度 NT$2,500/年

  • 4~6年度 NT$5,000/年

  • 7~9年度 NT$8,000/年

  • 10~20年度 NT$16,000/年


台湾の特許調査に利用できるデータベース


特許を出願する前に、似た特許がすでに登録されていないかの調査が必要です。台湾の特許を調査する方法はいくつかありますが、代表的な方法を紹介しましょう。



▼智慧財産局ホームページ

http://www.tipo.gov.tw

ひとつめは、智慧財産局(TIPO)が提供するウェブサイトです。無料で使用できますし、智慧財産局の公式データベースのため、最も信頼性があります。


▼WEBPAT

http://www.property.ne.jp/

他に、台湾企業が提供する有料のプラットフォームもあります。こちらは、台湾で使われている繁体字だけでなく、日本語・英語・簡体字での検索も可能です。検索機能が充実していることから、利用されるケースが多くなっています。


▼incoPat

https://www.incopat.com/login?locale=ja

中国企業が提供する有料プラットフォームも利用可能です。こちらも、日本語と英語での検索が可能ですが、簡体字・繁体字での検索の方が精度面・機能面が充実しています。


まとめ

ここでは、日本から台湾への特許の出願状況や、その方法などの基礎知識を紹介してきました。


台湾は、世界最大の半導体ファウンドリーTSMCを中心に、世界トップクラスの半導体企業が集中している技術大国です。今後、台湾で製品や技術を展開する上で、台湾での特許取得はより重要性を増していくものと思われます。



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海外への特許出願の場合、現地代理人との的確なコミュニケーションが必要です。海外の特許出願に関する知識や、実務経験のある国内代理人を通すことは、スムーズな特許取得に欠かせません。


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