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特許侵害予防調査とは? 調査が必要な理由や流れについて解説します



「新製品の販売をはじめたら、他社から特許侵害を理由に差止め請求されてしまった……」


そんな事態を回避するために、新製品開発や新たなサービスの展開に先立ち特許侵害予防調査を行いましょう。今回は、特許侵害予防調査の意義と特許実務における調査の流れを解説します。



特許侵害予防調査とは?

特許侵害予防調査とは、自社製品の製造・販売やサービスの提供が、他者の特許権侵害にあたらないかを予め調査することです。


いくつかの呼び方があり、以下の4つはすべて同じ調査のことを指しています。


  • 特許侵害回避調査

  • 抵触調査

  • 特許(パテント)クリアランス調査

  • FTO(Freedom to operate)調査


特許侵害予防調査が必要とされる理由

特許侵害予防調査が必要とされる理由は、自社製品やサービスが他者の特許権に抵触していることを知らずにビジネスを展開してしまうと、特許権者である他者から製品の製造・販売やサービス提供をやめるよう差止め請求されたり、損害賠償請求されたりするリスクがあるからです。


調査が必要になる局面としては、主に次の3つが考えられます。


  1. 新製品開発や改良に着手する局面

  2. 新製品やサービスを市場で展開しようとする局面

  3. BtoBビジネスで他社に自社製品を納入しようとする局面


1.新製品開発や改良に着手する局面

例えば、「新製品を開発して市場投入する直前に、その製品に他者の特許技術と同じ技術が搭載されていることが発覚した。特許権者から特許権侵害の警告を受けたため、新製品の販売を断念せざるを得なくなった」というケース。これでは、新製品の開発に費やしたお金や労力が無駄になってしまいます。


2.新製品やサービスを市場で展開しようとする局面

製品の販売を開始した後に差止めや損賠賠償を求められるケースも勿論あります。そのような場合は、販売を中止して製品を市場から引き上げるか、特許権者にライセンス料を支払い販売継続できるよう交渉することになるでしょう。いずれにせよ、余分なコストが発生してしまいます。


3.BtoBビジネスで他社に自社製品を納入しようとする局面

自社の部品が他者の特許権を侵害していると知らずに第三者に納入していたようなケースでは、その部品を使って製品を製造・販売している第三者が、特許権者から差止めや損害賠償請求をされてしまう可能性もあります。


納入先との信頼関係を損なわないためにも、自社製品の特許侵害予防調査が重要です。納入先によっては、取引対象となる製品が特許侵害予防調査済みであること、すなわち「特許保証」を求める企業もあります。


このように、自社製品として展開する場合も、第三者の製品やサービスの一部として自社製品等を提供する場合も、安心してビジネスを展開するには特許侵害予防調査が欠かせません。



特許侵害予防調査の流れ

特許侵害予防調査は、以下のようなプロセスで行われます。


  1. 自社製品の技術要素の分析と調査対象の特定

  2. 母集団の作成と特許侵害該当性の調査

  3. 調査報告書にまとめる


1.自社製品の技術要素の分析と調査対象の特定

まずは、自社の製品やサービスの実施行為(製品の製造や販売、サービスの提供など)に含まれる技術要素を分析して、調査対象を特定します。


自社製品やサービスには通常、複数の技術が搭載されているものです。例えば、1つの機械全体を動かす機能そのものに何らかの技術が使われているだけでなく、その機械を構成する部品や素材にもまた、別の技術が搭載されています。


したがって、まずは自社の製品やサービスに関連する技術要素を細かくリストアップしたうえで、それらの技術要素を整理・分析し、どの技術要素を特許侵害調査の対象とするか判断しなければなりません。この段階で、すでに特許保証がなされている技術や公知技術に該当する技術などは、調査対象から除外することができます。


2.母集団の作成と特許侵害該当性の調査

調査対象を特定したら、調査対象となる技術要素の実施が他者の特許権侵害にあたるかどうかを調査します。具体的には、技術要素が母集団の「特許請求の範囲」に含まれるかどうかを調べます。


母集団とは、調査対象となる特許公報のまとまりのことです。発行済みの特許公報をすべて調査することはほぼ不可能なので、調査対象を絞り込んだ「母集団」を対象に、できる限り効率的かつ網羅的な調査を試みます。


母集団を作成するには、特許分類とキーワードを組み合わせて論理演算子でつないだ「検索式」と呼ばれる式を使います。検索式を的確に作るには、高度な知識が求められます。


母集団を作成したら、母集団の「特許請求の範囲」と調査対象である製品・サービスの技術要素とを比較して、調査対象製品・サービスの実施が特許権侵害にあたるかどうかを判断します。


3.調査報告書にまとめる

最後に、調査結果を調査報告書にまとめます。


報告書には、検索式や使用した特許分類の他、発見された特許権、特許権と調査対象製品ないしサービスの技術的要素の対比、特許権侵害の可能性の有無、どの部分が特許権侵害になる可能性があるか等が記載されます。



特許侵害予防調査にかかる費用

調査対象を比較的特定しやすい新規性調査や先行技術調査などと比べて、特許侵害予防調査は難易度が高い調査です。したがって費用も高額になる傾向があります。


特許侵害予防調査の費用は、母集団の件数や技術領域(機械系、化学系、電気系など)によって異なります。また、対象となる特許調査の範囲が国内か海外か、海外であれば英語圏か否かによっても変わってきます。


特許侵害予防調査をご検討の際は、ぜひ一度、ご予算と希望される調査内容をご相談ください。



まとめ

特許侵害予防調査は、新製品の開発や新サービスの提供、新製品の市場投入、さらにはBtoB顧客との取引といった場面で必要とされる調査です。


安心してビジネスを展開するうえできわめて重要度の高い調査であると同時に、調査対象となる技術要素の特定や関連する特許権の調査手法は専門的で、的確な調査を実現するには高度な知識とノウハウが求められます。


井上国際特許商標事務所では、お客様の製品やサービスに搭載されている技術から、展開を予定されているビジネス内容、懸案されている事柄まで、丁寧にヒアリングいたします。そのうえで、特許侵害予防調査の経験豊富な弁理士が、的確な調査を迅速に行います。ぜひお気軽にご相談ください。


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