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特許分類とは?|IPCやFIなどの種類や検索方法について説明します


特許分類とは、膨大な数の特許文献を体系的に整理し、分類したものです。国際的な特許分類である「IPC」に加えて、日本の特許庁が独自に設けた「IF」、「Fターム」といった分類もあります。


今回は、特許分類の意義とメリットを解説したうえで、代表的な3つの特許分類、IPC、IF、Fタームの概要を紹介します。特許情報プラットフォーム上でIPCの分類から特許検索を行う方法も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。



特許分類とは?


特許情報に効率よくアクセスするために整理した分類

特許分類とは、膨大な数の特許文献に記載された特許情報に効率よくアクセスできるよう、特許文献を体系的に整理した分類のことです。特許文献上では、次のように表示されます。


【公開特許公報に掲載された特許分類の例。(51)の欄に特許分類が記載されている】


特許分類は漏れのない先行技術調査を行うために必要なもの

特許庁で特許審査が行われる際、審査官は、出願された発明がすでに出願されたり公開されたりした技術と同一または類似でないかを審査します。このとき、先行技術調査を行います。


また、企業や研究機関も、新技術を研究・開発する際に先行技術調査を行います。時間と労力をかけて新技術の開発を進めても、他社がすでに特許出願していたら自社の特許は認められないからです。


このように、特許審査をする特許庁や、効果的な特許戦略のもとで研究・開発を進めたい企業にとって、効率的な先行技術調査は欠くことのできない重要な工程です。


そして、特許文献が技術分野ごとに体系的に整理されていれば、効率よく漏れのない調査を行うことができます。特許分類は、こうしたニーズのもと整備されました。


特許分類による検索方法のメリット


テキスト検索の難点

特許文献の検索方法は、特許分類による検索方法のほかにも、キーワードから検索するテキスト検索の方法もあります。しかしながら、テキスト検索では、検索範囲が広がりすぎたり、逆に漏れが生じたりするおそれがあります。


例えば「スピーカー」の特許文献を検索しようとするとき、正式名称の「ラウドスピーカー」から、日本語の「拡声器」、「電気音響変換機」、さらには上位概念の「音響装置」まで、様々なキーワードが考えられます。考え得る全てのキーワードで検索をかけるのは現実的ではありませんし、年月を経て使われなくなった言葉もあります。テキスト検索で先行技術を網羅することはほぼ不可能といえるでしょう。


特許分類による検索の利点

この点、特許分類には次の3つのメリットがあります。

・必要な調査範囲内で効率よく網羅的に検索できる。

・古い言葉が含まれる特許文献も漏れなく検索できる。

・言葉では表しにくい形状や位置関係を表現した技術でも検索しやすい。


特許分類では、全ての特許文献を技術分野ごとに区分けした上で、各区分ごとに階層を設けてさらに細分化し、論理的に検索ができるよう工夫されています。検索においてキーワードに縛られたり引きずられたりすることがないため、網羅的で漏れのない検索が可能になります。


特許分類の種類


続いて、代表的な特許分類「IPC」「FI」「Fターム」の概要を紹介します。


IPC(International Patent Classification)

IPCは、国際特許分類“International Patent Classification”の略で、世界共通の特許分類です。このような国際的な特許分類が設けられた背景には、次の4つの目的があります。


  1. 国際的な特許文献調査ツールを確立するため。

  2. 特許文献に記載された技術にアクセスしやすくするため。

  3. 特許情報を利用者に広く普及させるため。

  4. 各分野における技術の発展を評価する統計作成の基礎とするため。


IPCでは、全技術分野がA~Hの8つのセクションに分類されており、各セクションはさらに、クラス、サブクラス、グループ、サブグループの階層に細分化されています。


例えば「A41D10/00」は、セクションA(生活必需品)からクラス41(衣類)、サブクラスD(外着;保護衣;付属品)、グループ10/00 (パジャマ;寝衣)へと細分化していきます。




FI(File Index)

FIは、日本の特許庁が独自に設けている特許分類で、“File Index”の略語です。


日本の特許技術の中には、日本独特の技術や、他国に比べて進んでいる技術分野があります。このため、IPCの分類に沿って日本特有の技術を分類しようとすると、1つのグループに大量の特許文献が集中するという事態を招きます。


そこで、日本ではIPCに加えて、IPCのサブグループをさらに細分化して展開する分類「FI」が設けられました。


FIは、IPCの分類の最後に「展開記号」ないし「分冊識別記号」を付けて表します。展開記号は、IPCのサブグループを細分化する3桁の数字で、100からスタートします。分冊識別記号は、IPCまたは展開記号をさらに細分化するための記号で、A~Zのアルファベット1文字(IとOを除く)で表します。


このため、FIは数字で終わることもあれば、アルファベットで終わることもあります。パターン化すると、次のとおりです。


  • IPCのサブグループまでの記号+展開記号(例:H01L21/28 301)

  • IPCのサブグループまでの記号+分冊識別記号(例:G01C 21/26 C)

  • IPCのサブグループまでの記号+展開記号+分冊識別記号(例:H01L21/28 301 A)


Fターム(File Forming Term)


Fタームは、FIを所定の技術分野ごとに「観点」でさらに細かく区分したものです。


ここでいう「観点」とは、目的、用途、構造、材料、製法、処理方法、制御手段など、様々な技術観点を指します。


特許文献の数は増加の一途をたどるうえ、技術は複合化・融合化し、製品も多様化しています。Fタームは、このような変化に対応しながら効率的に検索ができるよう、機械検索に最適化された特許分類です。


区分された各々の技術範囲は「テーマ」と呼ばれ、FIで定められたテーマの技術範囲は「FIカバー範囲」と呼ばれます。さらに、それぞれのテーマには、その技術分野を示す「テーマ名」と、英数字5桁の「データコード」が付与されます。


現在、すでに全技術分野の約7割の分野でFタームの整備が完了しており、先行技術調査の円滑化に寄与しています。


 

特許分類の検索方法


特許分類の検索方法のうち、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」でIPCの分類を用いた検索方法を簡単に紹介します。(画像はすべて「J-PlatPat」からの出典)



手順1

J-PlatPatトップページ「特許・実用新案」にカーソルを合わせ、プルダウンメニューの「特許・実用新案分類照会(PMGS)」をクリックします。



手順2

「コード照会」の「検索対象」のラジオボタン、「IPC(最新版)」にチェックを入れます。


そうすると、その下に、AからHまでのIPCセクションが表示されます。ここから、クラス、サブクラス、グループ、サブグループと、調査したい技術内容を絞り込んでいきます。


手順3

ここからは、「ランニングシューズ」の特許文献を調べながら、手順を具体的に解説します。


表示されたセクションのうち「A」(生活必需品)の左側にある「+」をクリックすると、サブセクションが展開します。サブセクションのうち、「個人用品または家庭用品」の中に「43」(履物)というクラスがあるので、「A43」の左側の「+」マークをクリックします。


すると、「B」「C」「D」の3つのサブクラスが表示されます。「ランニングシューズ」は、これらのうち「B」(履物の特徴;履物の部分)に該当しそうです。



手順4

「A43B」の左側の「+」をクリックすると、グループが展開します。


表示されたグループの中に、「5/00(スポーツ用の履物)」というグループがあるので、「A43B5/00」の左側の「+」をクリックします。


再びサブグループが展開するので、この中から該当するものを探します。この場合は、「5/06(ランニング用の靴;陸上競技用の靴)」というサブグループが、調査したい技術「ランニングシューズ」に該当します。



手順5

次に、「A43B5/06」をクリック(画像①)すると、画面上部に新たにウィンドウが登場し、自動で「A43B5/06」が入力されます(画像②)。


この状態でウィンドウ右端にある「特実検索にセット」をクリックすると(画像③)、特許・実用新案検索の画面がポップアップ表示されます。




手順6


特許・実用新案検索の画面をスクロールして下部にある「検索」をクリックすると、検索結果として「A43B5/06」の特許分類に含まれる特許文献一覧が表示されます。


検索結果が3000件を超えると結果が表示されないので、その場合は日付などで検索対象を絞り込んでください。




特許分類で検索する際の注意点

特許分類を使った検索は、キーワードで検索するテキスト検索よりも高精度かつ網羅的な検索ができます。一方で、特許分類には詳細なルールが定められていたり、専門用語が多用されていたりと、難解な面があることは否定できません。


効率よく正確に特許調査を進めるには、特許分類や技術分野に関する専門知識とノウハウが求められることに注意が必要です。また、技術の進歩が著しい昨今、特許分類に反映されていない最新技術があることも要注意です。



まとめ

特許分類を使うことで、網羅的に精度の高い検索ができる反面、分類の規則性を把握し、効率よく検索するには、専門知識を前提とした検索スキルが求められます。また、特許分類は毎年のように改正されるため、最新情報を注視しておくことも重要です。


特許分類を最大限活用して特許調査を行うには、特許分類の知見とノウハウが豊富な専門家に依頼することをおすすめします。


井上国際特許商標事務所では、特許調査に熟練した専門家が在籍しております。特許分類を用いた特許調査にお悩みの方は、ぜひご相談ください。


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