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個人のブランドでも商標登録はできる? あなたのブランドを守る方法を解説します


近年、個人でブランドをつくる人が多くなっています。これは、広告費用をかけなくてもSNSを利用してコストをかけずに宣伝できるようになったことや、BASEやメルカリなどのプラットフォームを利用して、低いコストでネットショップが開けるようになったことなどが理由です。


個人がアパレルや文房具、雑貨などのブランドを立ち上げて人気ブランドに成長するケースも増えてきましたが、このとき気をつけたいのがブランドの保護です。ブランドは商標登録を行うことで保護できますが、先願主義のため"早い者勝ち"でもあり、また、効果的に保護するためには、登録の際の「区分」にも細心の注意を払わなくてはなりません。


ここでは、個人ブランドを守るための「商標登録」の必要性について詳しく解説します。


個人ブランドの商標登録とは


個人でブランディングを行い、商品に統一したブランド名をつけて販売する場合は、ブランド名の商標登録をするとよいでしょう。


商標は、他の商品から当該ブランドの商品を識別し、差別化する機能をもちます。また、ブランドの認知度が高まってくると、消費者にブランドのもつイメージを想起させるとともに、「この人が提供するものなら安心して購入できる」という信用を担保する効果もあります。


商標登録の基本やメリットについては、以下の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。



個人ブランドの商標登録が必要な理由とは?


個人ブランドの商標登録は、なぜ必要なのでしょうか。ここでは、商標登録を行わない場合に起こりうる2つの例を挙げ、商標登録が必要な理由を解説します。



【Aさんの場合】ある日突然ブランド名が使えなくなった

Aさんは、自身の園芸体験をもとに園芸用品のブランド「緑の友」を立ち上げ、ネットショップでオリジナル商品を販売していました。ショップと連携したホームページやSNSも開設し、イベントなどを通じたコミュニティの形成を行うなどの努力もあり、ブランドの認知が高まってきました。


ところがある日、AさんのもとにZ社からブランド名使用の停止を求める警告文が届きました。Z社は近日発表する園芸用品の新ブランドを「緑の友」と命名し、すでに商標登録を完了したというのです。「緑の友」として親しまれてきたAさんの園芸用品は、別名での再スタートを余儀なくされました。



【Bさんの場合】粗雑な模造品が出回りブランドの信頼を失った

Bさんは、手作り革製品のレザーブランドを立ち上げて、ロゴを刻印した財布やキーケースなどを製作、販売していました。製作過程や想いを伝えるストーリーをSNSで発信しつつ、小規模な実店舗とオンラインショップで販売してきたところ、SNSのフォロワーが1万人を超え、売り上げも安定してきました。


ところが、SNSに偽アカウントが複数登場し、同じロゴを刻印した模造品が出回り始めました。低価格な模造品は販売を伸ばし、誤って購入する人も続出。店舗や店のHPには、「縫製が粗雑ですぐ壊れた」という苦情が届くようになりました。



商標は「先願主義」に則り"早い者勝ち"である

Aさんのケースでは、後発のZ社が先に「緑の友」のブランド名につき商標出願の手続きをとり登録を完了したため、Aさんはこれを使えなくなってしまいました。


ではなぜ、Z社は「緑の友」を使用した実績がないにも関わらず商標登録ができたのでしょうか。これは、商標法では「先願主義」がとられており、使用実績の有無に関わらず先に登録出願した者がブランド名を使用できる制度になっているためです。


商標は原則として早い者勝ちになるため、先手を打って登録することが肝要です。Aさんが「緑の友」を立ち上げた段階で、速やかに商標登録を行えば、こうした問題は起こりませんでした。


商標登録をしていれば損害賠償請求ができる

Bさんのケースは、ブランド名を他者に商標登録されることはなかったものの、商標登録をしていなかったためにブランド名が使われてしまい、模造品が販売されました。


商標には商品やサービスを他の商品・サービスから識別する機能があり、同カテゴリー内に同名のブランド名を重ねて登録することはできません。もし、商標権を侵害する模倣品を製造・販売された場合には、その相手に対して損害賠償請求ができます。


このケースでも、やはりBさんがブランド立ち上げと共に商標登録を行っていれば、模造品は販売されなかった可能性が高く、もし販売されていても損害賠償請求が可能でした。


ブランド名には品質保証や広告としての機能もある

ブランドを育てる側は、商品やサービスの品質を維持向上させ、よいイメージをもってもらおうと努力を重ねます。その結果、消費者は期待と信頼を込めて商品やサービスを購入するようになります。すると、商標には、いわばブランドの信用を保護する品質保証機能も備わってきます。


また、ブランドが育ってくれば、「ルイ・ヴィトンは高級なブランド」というように、消費者に価値やイメージを想起させるようになり、商標が商品購入を促す広告機能も伴うようになります。Cさんのケースでは、このような広告機能を利用されたうえ、品質保証機能も侵害されてしまいました。


せっかく時間とコストをかけて育て上げたブランドを失ったり、信頼を損ねたりしないためには、ブランド立ち上げと同時に速やかに商標登録を行うことが大切です。



個人ブランドを商標登録するための手続きと費用

商標出願から登録完了までの流れ

商標登録の手続きは、特許庁への出願から審査を経て、最終的に登録査定が下りれば登録料を納付し、登録完了となります。審査は方式審査と実体審査の二段階で厳密に行われるため、出願から登録完了までに数カ月から場合によっては1年以上を要します。


実体審査では、拒絶事由である「自他識別力に関する要件(普通名称、慣用商標、記述的商標、ありふれた氏または名称など)」該当性の判断など、専門的知識が必要なケースもあります。スムーズな登録完了を目指すなら、専門家への依頼を視野にいれるとよいでしょう。


費用

商標登録にかかる主な費用は、出願にかかる手数料と登録時に納付する設定手数料です。

  • 出願時 3,400円+(8,600円×区分数)(非課税)

  • 登録時 32,900円×区分数(非課税)


商標出願の費用については、以下のページで詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。


個人ブランドを商標登録する際は「区分」に注意しよう


個人がブランドを商標登録しようとする際に注意しなければならないのが、「商標権者が商標の効果を主張できる範囲は、登録された区分の範囲に限られる」という点です。 区分とは、簡単にいうと商品やサービスのカテゴリーのことで、商標法上は45の区分が設けられています。出願時には、商標法施行令別表に表示された「商品及び役務の区分」に従って、「商品」ないし「役務(サービス)」を指定します。なお、どの商品やサービスがどの区分に分類されているかを確認するには、「商標法施行規則別表」を参照するとよいでしょう。


例えば、先ほど例に挙げたAさんが、ブランドの立ち上げと同時に園芸用品ブランド「緑の友」を商標登録しようとするなら、第21類に分類された園芸用手袋、ウィンドーボックス、じょうろ及び散水ホース用ノズルなどを指定して出願します。Bさんのケースであれば、第18類の財布、巾着袋、かばんなどを指定することになるでしょう。


しかし、例えばAさんやBさんがそれぞれ関連商品としてTシャツやハンカチなどの販売も想定しているような場合は、第25類も指定しなければなりません。区分と商品・役務の指定は、当該ブランドで想定している商売の範囲や商標出願・登録にかかる費用などを総合的に考慮して、慎重かつ漏れのないよう確定する必要があります。



まとめ


今回は、個人ブランドの商標登録の必要性や手続きについて解説しました。個人ブランドを立ち上げる際には、ブランドの信用を守り、継続的にブランド名を使い続けるためにも、速やかに商標登録しておくことをおすすめします。


登録できる商標や指定区分の確定には、専門家のアドバイスが有効です。ぜひ一度、井上国際特許商標事務所にご相談ください。

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