【PCTルート・パリ条約ルート】外国への特許出願にかかる費用とは?減免制度や助成金も紹介



製品やサービスを海外でも展開する際、ぜひ検討したいことが外国での特許出願です。知的財産権は国ごとに独立しているため、日本で特許を取得しただけでは、海外で自社製品やサービスの権利を保護することができません。


しかし、海外での特許出願には高額な費用がかかるため、躊躇している中小企業の担当者や個人事業主もいらっしゃることでしょう。そこでここでは、外国への特許出願にかかる費用を説明するとともに、費用を軽減できる減免制度や助成金についても紹介していきます。



外国へ特許を出願する際の2大ルート


まずは、外国へ特許を出願する際に利用される、代表的な2つのルートを紹介します。


▼PCTルート(PCT国際出願)

PCTルートとは、日本の特許庁で「国際出願」を行うことで、特許協力条約「PCT(Patent Cooperation Treaty)」に加盟している他国でも日本と同時に特許を出願したのと同じ効果が得られる出願方法です。


この方法で特許出願すると、日本の特許庁への出願日から1年以内であれば、PCT加盟国において日本で国際出願を行った日を出願日のように扱ってもらえる「優先権」が与えられます。


しかし、日本で国際出願しただけでは他国で特許を出願したことにはなりませんので、それぞれの国で「国内移行」と呼ばれる手続きを行う必要があります。その際、日本で特許出願した内容を、その国が指定する言語で翻訳する必要がありますが、これには30ヶ月の猶予が与えられています。


なお、台湾と一部の南米諸国はPCTに加盟していません。これらの国ではPCTルートを利用することができないため注意しましょう。


▼パリ条約ルート

パリ条約ルートは、日本出願して1年以内の特許について「優先権」を主張できる、「パリ条約による優先権」を利用した方法です。こちらもPCTルートと同じく、日本で特許出願した日から1年以内であれば、その国でも日本と同日に出願したように取り扱ってもらうことができます。


PCTルートと大きく異なるのは、優先権が主張できる1年の間に、出願する国の言語で翻訳文を作成し特許出願を行う必要があることです。PCT出願ルートであれば30ヶ月の猶予を与えられるため、比較するとかなり短くなります。


その代わり、各国ごとに特許を出願するため、出願する内容を国ごとに微調整することが可能になります。



PCTルート・パリ条約ルートでの出願にかかる費用とは


PCTルートやパリ条約ルートで海外へ特許を出願する場合、どのような費用が必要になるかをみていきます。



1:日本の特許庁に支払う費用

PCTルートでの出願(国際出願)の際に、日本の特許庁に必ず支払う費用は以下の通りです。


【PCTルート(国際出願)時に必ず必要になる費用】

  • 国際出願手数料 179,000円 ※

  • 送付手数料 17,000円

  • 調査手数料 143,000円

  • オンライン出願した場合の減額 ▲40,400円


合計:339,000円~(オンライン出願の場合 298,600円~)


※国際出願の用紙の枚数が30枚まで。30枚を超える用紙1枚につき2,000円の追加費用が発生


手数料は頻繁に変更されるため、下記リンク先より最新の手数料をご覧ください。


出典:国際出願関係手数料表|特許庁(2022年6月)



パリ条約ルートの場合は、日本の特許庁に対して通常の特許出願を行います。その際、特許庁に対して支払う費用は、最低でも16万円以上となります。詳しくはこちらのページをご覧ください。



2:日本の弁理士に支払う費用

特許出願に関する手続きは、その専門性の高さから、知的財産権を扱う国家資格者である弁理士、もしくは、弁理士が所属する特許事務所へ手続きの代行を依頼するのが一般的です。


費用は弁理士や特許事務所によって異なります。参考として、当事務所で国内での特許取得の手続代行を行う場合、30万円~が目安となります。詳しくはこちらのページをご覧ください。



3:現地代理人に支払う費用

PCTルートを利用する場合、それぞれの国で「移行手続」が必要です。また、パリ条約ルートを利用する場合は、それぞれの国で特許出願手続を行う必要があります。


日本人や日本企業が海外でこれらの手続を行う場合、多くの国で「現地代理人」を通した手続が義務づけられています。義務づけられていない場合でも、円滑な手続のためには現地の事情に精通した現地代理人の存在は重要です。


現地代理人に支払う費用は、その国の物価によって大きく異なり、同じ国でも事務所によって異なります。



4:出願する国の特許庁に支払う費用

国際出願した特許は、各国で審査を進めるため「国内移行」と呼ばれる手続きを取ります。この国内移行にかかる費用は国ごとに異なります。


【PCTルートで国内移行~登録までに必要な費用(目安)】

  • アメリカ 100万円程度

  • 欧州   220万円程度


【パリ条約ルートで外国出願する際に必要な費用(目安)】

  • アメリカ 120万円程度

  • 欧州   250万円程度


これらはあくまで一例ですが、欧州は特に割高です。また、アメリカや韓国、カナダなどには中小企業向けの減免制度もあり、安い費用で済むケースもあります。



PCTルートとパリ条約ルート、どちらが費用を抑えられる?

どの国へ特許を出願するかにもよりますが、一般的に、出願する国が2ヶ国程度までであれば、パリ条約ルートのほうが費用を抑えられるケースが多くなるでしょう。


しかし、各国へ支払う費用そのものは、PCTルートを利用したほうが抑えられます。そのため、出願する国が増えるほどPCTルートのほうが割安になります。



費用削減のためにもぜひ利用したい「予備調査」



海外への特許出願にあたっては、予備調査制度が設けられています。利用には費用がかかるものの、特許出願後の手続きがスムーズになり、結果的に費用を削減できる場合もあります。


国際予備審査

国際予備審査とは、PCT出願(国際出願)する際に、出願する予定の国における正式な審査の前に受けられる予備審査のことです。特許権を取得するために必要な要素である新規性や進歩性に関して具体的な指摘を得られるため、補正を行った上での出願が可能になり、登録までがスムーズになります。


国際予備審査は義務ではなく出願人の任意です。希望する場合は、日本特許庁に請求することで、日本語での審査が可能です。


【特許庁での国際予備審査にかかる費用】

  • 143,000円 / 件(日本語の場合)


出典:国際出願関係手数料表|特許庁(2022年6月)



EPO(欧州特許庁)による国際調査

EU加盟国を中心に38ヶ国が加盟しているのが、EPO(欧州特許庁)です。ドイツ、フランス、イギリスを始めとする欧州の主要国が加盟しており、さらに締約拡張国2カ国が加わった、40ヶ国で効力を発揮します。


EPOで特許を取得する際に必要な費用は、日本や米国より高額です。そこで利用したいのが「EPOによる国際調査」です。これも、実際の特許審査が始まる前に出願内容について具体的な指摘を得られる制度となっています。


EPOによる国際調査を行うことで、審査がEPOで始まった後に補充調査が行われないため、それに現地代理人を通して対応するための費用が圧縮できます。特許取得までの期間も多くのケースで早まるため、出願を維持するための維持年金の節約にもなります。


こちらも利用は任意ですが、特許庁での国際調査と併用できるため、適切に活用したい制度です。


【特許庁での国際予備審査にかかる費用】

  • 229,000円 / 件


出典:国際出願関係手数料表|特許庁(2022年6月)



外国への特許出願時に使える減免制度・助成金

外国出願費用は高額であり、資金力に乏しい中小企業や個人にとっては大きな負担となります。そこで活用したいのが、中小企業や個人を対象とした減免制度や助成金です。


特許庁では手数料の軽減措置を行っている

特許庁では、中小企業や研究機関、独立行政法人を対象として、国際出願に必要な手数料の軽減措置を行っています。


これは、送付手数料(17,000円)、調査手数料(143,000円)、予備審査手数料(34,000円~)の3つの費用が1/2または1/3に軽減される制度で、対象になれば少なくとも10万円近い軽減が受けられるのでぜひ活用しましょう。


【中小企業】

中小企業、組合、NPO法人、個人事業主を対象とした軽減措置

  • 送付手数料、調査手数料:1/2に軽減

  • 予備審査手数料:1/2に軽減


【中小ベンチャー企業】

中小ベンチャー企業、小規模企業、個人事業主を対象とした軽減措置

  • 送付手数料、調査手数料:1/3に軽減

  • 予備審査手数料:1/3に軽減


その他、大学や研究機関、独立行政法人、福島復興再生特別措置法の認定を受けた中小企業などの軽減措置については、以下の特許庁のページをご覧ください。


出典:国際出願に係る手数料の軽減措置の申請手続|特許庁(2022年6月)



外国での手続の際に受けられる減免制度も

外国での移行手続や、特許出願時に受けられる、海外の減免制度もあります。


例えば、アメリカでは、従業員500人以下の小規模企業や、個人、非営利組織を対象にした減額制度が用意されています。さらに、米国での出願が過去に4件以下であれば1/4まで減額される可能性もあります。


また、韓国では、出願人が発明者であることを条件に、出願に関する費用を最大7割減額する制度なども用意されています。


外国へ出願する際は、事前にその国の減免制度をチェックし、対象になるのであればぜひ活用して費用を抑えましょう。



外国への特許出願を対象とした助成金も

大企業でなければ、助成金の対象になる可能性もあります。


例えば、特許庁が行っている「中小企業等外国出願支援事業」では、中小企業や商工会議所、NPO法人などを対象として、補助率1/2、300万円を上限とした外国出願の助成金を用意しています。


他にも、JETRO(日本貿易振興機構)が行っている「中小企業等海外侵害対策支援事業」では、中小企業や商工会議所、NPO法人などを対象として、補助率2/3、400万円を上限とした助成事業を行っています。


また、東京都知的財産総合センターが行っている外国特許出願費用助成事業のように、自治体で行っている助成金制度もあるため、大企業でない場合は、特許出願前に調査を行いましょう。



まとめ

ここでは、外国へ特許を出願する際の2大ルートの紹介と、それらにかかる費用について紹介するとともに、減免制度や助成金について紹介しました。


経済のグローバル化に伴い、中小企業の海外進出が増えました。しかし、知的財産権は各国で独立しているため、海外進出にはこれらの費用も必要となります。


減免制度や助成金を上手に利用して費用を抑えつつ、自社製品やブランドを守るために、海外での特許の取得も確実に行っていきましょう。



外国での特許出願をお考えなら、井上国際特許商標事務所にご相談ください

井上国際特許商標事務所では、これまで、個人の事業者から大企業まで様々な技術分野の海外特許出願を取り扱ってきました。


現地代理人との連携を密に行いスムーズな特許取得を目指すとともに、減免制度や助成金を利用することで、特許取得にかかる費用を軽減しております。


確実かつ、無駄なコストを抑えた海外特許出願をご希望の方は、ぜひ一度、井上国際特許商標事務所までご相談ください。