知的財産権侵害とは? 事例や対処法を解説します
- Eisuke Kurashima
- 2024年10月9日
- 読了時間: 5分

人間の知的創作活動から生まれたアイデアや創作物についての権利は、知的財産権として法律で保護されています。
本記事では、知的財産権の中でも「特許権」「商標権」「意匠権」「著作権」を中心に、知的財産権の侵害について解説します。具体例と対処法も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
知的財産権とは?
知的財産権とは、人間の知的創作活動の成果である創作物やアイデアのうち、財産的価値のあるものに法的保護が付与された権利のことです。
技術発明、ブランドロゴ、デザイン、音楽や小説など、形のないアイデアや創作物がその保護対象となり、それぞれ「特許法」「商標法」「意匠法」「著作権法」などの個別法の枠組みで保護されています。
知的財産権の具体例
知的財産権の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
ソフトウェア、アプリ、特許技術、新規事業アイデア、マーケティング戦略など、アイデアを対象とする特許権
ロゴ、ブランド名、商品名など、商標を対象とする商標権
イラスト、製品デザイン、建築物など、デザインを対象とする意匠権
音楽、映画、小説、ゲーム、キャラクターなど、創作物を対象とする著作権
知的財産権侵害とは?
他者のアイデアや創作物を無断で使用したり盗用したりする行為は、知的財産権の侵害にあたります。
知的財産権侵害があると認められた場合には、裁判所から侵害者に対して、侵害行為(模倣品の製造・販売など)の中止を命じる「差止命令」や、権利者への「損害賠償命令」が出されることがあります。
場合によっては、「名誉回復措置」として新聞やウェブサイトへの謝罪文掲載が命じられたり、罰金や懲役刑などの「刑事罰」が科されたりすることもあります。
特許権侵害の例
特許登録されたアイデアやノウハウを無断で使用すると、特許権侵害にあたります。
「リチウムイオン電池」から「折りたたみ傘の折りたたみ機構」まで、私たちの身近な技術に関する特許侵害が争われるケースは多数あります。
近年の特許権侵害が認められた裁判例としては、LINE社の「ふるふる機能」が、京都市のシステム開発会社の特許技術を侵害するものであるとして、損害賠償の支払いを命じた例が挙げられます。特許権侵害とされたLINEの同機能は、現在は廃止されています。
商標権侵害の例
商標登録されたロゴマークやブランド名、商品名などを無断で使用すると、商標権侵害にあたります。
例えば、ある企業の「Oggetti」というロゴマークが、商標登録された他社の「OGGETTI」というロゴマークに類似しているとして、ロゴマークの使用差止めと損害賠償が命じられた事件があります。
また、同業他社の商標登録された名称を自社の販促物に記載したケースや、類似する業界の商標登録された商品名を自社商品に使用したケースなど、「出所の混同」を招くおそれのあるさまざまな事例で商標権侵害が認められています。
意匠権侵害の例
意匠登録されたデザインを不正に利用したり模倣したりすると、意匠権侵害にあたります。
意匠権をめぐる有名な事例としては、アップル社がサムスン社に対し「『iPhone』や『iPad』のユーザーインターフェースの意匠特許(design patent)を侵害している」として米国裁判所に訴えた事件が挙げられます。
意匠特許とは、米国の知的財産法における意匠権の一種です。米国の知的財産制度では、意匠法が存在しない代わりに、デザインを保護する意匠特許制度があるのです。裁判では、サムスンによる意匠特許侵害が認められ、賠償金支払い命令が出されました。
著作権侵害の例
他者の創作した著作物を無断で使用したり、その模倣品や海賊版を販売・購入したりすると、著作権侵害にあたります。
近年話題となった著作権侵害の例としては、出版社3社が、海賊版サイト「漫画村」(現在は閉鎖)によって著作権を侵害されたとして、元運営者に損害賠償を求めて提訴した事件が挙げられます。なお、「漫画村」の元運営者には、この事件に先立ち、著作権法違反や組織犯罪処罰法違反などの罪で懲役3年、罰金1000万円が科せられていました。
インターネットが普及した現在、このような海賊版の流通や、インターネット上の画像・音楽の無断使用、SNS投稿における著作権トラブルなどが増加しています。また、生成AIを用いて作られた作品の著作権侵害など、テクノロジーの進化とともに新たな著作権の問題が浮上しています。
知的財産権侵害を防ぐための対策
知的財産権侵害は、他者とのトラブル、自社の信用失墜、ときには刑事罰のリスクをも伴います。安心して製品を開発したりビジネスを展開したりするには、知的財産権侵害の予防策を講じておくことが不可欠です。
まずは、知的財産権に関する基礎知識を押さえたうえで、社内教育や研修などを通して従業員間にも周知を図りましょう。
また、他社との提携や協業の際には、知的財産に関するトラブルを未然に防ぐべく、権利関係を契約書で明確化しておくことが重要です。
知的財産権侵害を受けた場合の対処法
知的財産権侵害は証明が難しいケースが多いため、自社が知的財産権侵害を受けた場合には、証拠の保全が不可欠です。
模倣品であることを示す現物や資料、類似商標の使用状況を示す資料や記録、侵害コンテンツのスクリーンショットやアクセスログなど、侵害の事実を立証できるような証拠を保管しておきましょう。
そのうえで、侵害の内容や程度、侵害者との関係性など、法的な条件やビジネスの状況を踏まえ、適切な手段を選択することになります。
知的財産権侵害の有無を判断するには、知的財産に関する法的知識だけでなく、知的財産の実務、裁判例や判例の深い理解が求められます。対処法を検討する際には自社で抱え込まず、知的財産の専門家に相談しましょう。
まとめ
知的財産権は法律で保護された重要な権利であり、これを侵害すると法律上のペナルティが課せられるだけでなく、企業の信用問題にも関わります。また、自身の発明や商標、著作物を保護するために、侵害に備えることも重要です。
他者の知的財産権を侵害してしまわないためにも、自身の知的財産権を保護するためにも、知的財産権に関する知識を深め、予防策を講じておきましょう。万が一、侵害を受けた場合は、速やかに専門家に相談し、適切な対応を取りましょう。
井上国際特許商標事務所には、知的財産全般の知見が豊富な弁理士が所属しています。ぜひご相談ください。
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