商標のサービスマークとは? 基礎知識から申請方法まで徹底解説
- Eisuke Kurashima
- 3月28日
- 読了時間: 9分

商標のサービスマークは、自社のサービスを他社のサービスと区別し、自社サービスへの信頼を確立するうえで、重要な役割を持っています。
今回は、商標のサービスマークの基本的な知識から、登録のメリット、申請方法、権利活用まで、ビジネスに役立つ情報を分かりやすく解説していきます。
商標のサービスマークの重要性
自社のサービスを他社と区別し、顧客に認識してもらうために欠かせないツールとなるのが、商標のサービスマークです。自社のサービスに対する信頼やブランドを保護する商標のサービスマークは、ビジネスの基盤となる重要な資産なのです。
例えば、有名なコーヒーショップのロゴを見るだけで、消費者は、どのようなコーヒーが提供されるのか、お店の雰囲気はどうかなど、さまざまな情報を想起できます。これは、そのロゴがサービスマークとして機能し、長年のビジネス活動を通じて消費者に認識されてきた結果です。

商標のサービスマークの基礎知識
商標のサービスマークを理解する前提として、まずは「商標」と「サービスマーク」のそれぞれの意味を押さえておきましょう。
商標とは?
商標とは、事業者が自社の商品やサービスを他社のそれと区別するために使用するマークのことです。具体的には、ブランド名、スローガン、ロゴ、図形、記号、キャラクター、音、色、ホログラム、動き、位置商標、立体商標など、多様な形態があります。
商標の中には、特許庁への出願を経て登録された「登録商標」と、未登録のまま使用される「未登録商標」がありますが、商標法のもと排他的な権利が認められるのは登録商標のみです。
サービスマークとは?
サービスマークとは、無形のサービスを提供する事業者が、自社のサービスを他社のサービスと区別するために使用する商標のことです。具体的には、次のようなサービスが挙げられます。
運輸サービス(鉄道、航空、バスなど)
金融サービス(銀行、保険など)
教育サービス(学校、塾など)
通信サービス(電話、インターネットなど)
娯楽サービス(映画、音楽、ゲームなど)
飲食サービス(レストラン、カフェなど)
修理サービス
美容サービス
例えば、先に示したスターバックス社のロゴマークは、同社の「飲食サービス」に使われるサービスマークです。
商標とサービスマークの違い
商標の保護対象は、大きく「商品」と「役務(サービス)」に分けられます。そして、商品を保護対象とする商標(商品商標)は「トレードマーク」と呼ばれ、役務を対象とする商標(役務商標)は「サービスマーク」と呼び分けられます。
例えば、ある企業が新しいスニーカーを開発し、そのスニーカーにロゴマークを付けて販売する場合、このマークを商標登録したものはトレードマークと呼ばれます。一方、同じ企業がホテルを経営し、ホテルのロゴマークを作成した場合、これを登録したものは「サービスマーク」と呼ばれます。
このように、サービスマークは商標の一種であり、商標はサービスマークの上位概念にあたります。そして、一口に商標と言っても、トレードマークとサービスマークは保護対象が異なるため、自社のビジネスに応じて適切な種類の商標を登録する必要があります。
サービスマーク導入の背景と目的
かつて「商標」とは、トレードマーク(商品商標)のみを意味していました。このため、文脈によっては「トレードマーク(商品商標)」を指して狭義の「商標」と呼ばれることもあります。
しかし、サービスの経済化の進展に伴い、無形のサービスに対する識別力や信頼性の重要性が高まってきました。サービスの経済化が進んだ世の中において、消費者は、サービスを選択する際に、提供元の信頼性や品質を判断する明確な指標を求めるようになったのです。
このような背景から、サービスの出所表示を明確にする「サービスマーク(役務商標)」も、商標法のもと保護されるようになりました。
商標のサービスマーク登録のメリット
商標のサービスマークを登録することで、各社のビジネスには次のようなメリットがあります。
ブランド保護
サービスマークを登録することで、サービス内容を独占的に使用できる権利が得られます。これは、類似したサービスを提供する他社が、自社のサービスマークと同一または類似のマークを使用することを法的拘束力をもって禁止できることを意味します。
サービスマークを登録することで、自社のサービスを商標法のもと保護し、市場での競争優位性を維持できるのです。
顧客からの信頼向上
顧客からの信頼向上にもつながります。第三者機関である特許庁の審査を経て登録されたサービスマークは、サービスの品質や信頼性を保証するシンボルとなるためです。
また、サービスマークは、サービスに対する責任の所在を明確にする役割も果たします。 問題が発生した場合、どの事業者が提供したサービスなのかがすぐに判別できるため、顧客は安心してサービスを利用できます。
結果として、顧客からの信頼が向上します。
模倣品対策
サービスマークを登録することで、模倣品対策を効果的に行えます。模倣品とは、既存のサービスマークと酷似したマークを無断で使用し、消費者に混同させてサービスを提供する行為です。これにより、正規のサービス提供者のブランドイメージが毀損され、経済的な損失を被る可能性があります。
サービスマークを商標登録していれば、模倣業者に対して模倣品の販売差し止め、損害賠償請求などの法的措置がとれます。これにより、模倣品の出回りを抑制し、ブランド価値を保護できます。
商標登録の区分とサービスマークの指定区分
商標には、商品やサービスの種類ごとに区分された「商品及び役務の区分」(いわゆる「区分」)が存在します。商標登録出願をする際には、自社の商品・サービスがどの区分に該当するかを特定し、指定する必要があります。サービスマークもこの区分に従って登録されます。
区分は全部で45区分あり、1~34類までは商品、35~45類まではサービスを分類しています。サービスマークは、サービスを提供する際に使用されるため、35類~45類のいずれかの区分に該当します。例えば、飲食店を経営している場合、サービスマークは43類に該当します。複数のサービスを提供している場合は、複数の区分を指定できます。
適切な区分を指定することは、商標権・サービスマーク権を適切に保護するためにきわめて重要です。場合によっては、弁理士などの専門家に相談しましょう。
サービスマーク登録の手続き
サービスマーク登録は、特許庁に出願して行います。出願後、特許庁による審査が行われますが、審査期間中に特許庁から意見照会などがある場合もあります。審査を通過すれば、サービスマークが登録されます。具体的な手続き手順は次のとおりです。
申請書類の準備
まずは、特許庁に提出する書類を準備します。必要書類は、特許庁のウェブサイトからダウンロードできます。また、特許庁窓口や一部の郵便局でも入手可能です。
必須書類である商標登録出願の願書には、出願人情報、サービスマーク、指定役務(サービスマークを使用するサービスの種類)などを記載します。指定役務は、商品役務審査基準等を参考に選択します。サービスマークを明確に表す画像も提出します。画像は、鮮明で正確なものを用意しましょう。
出願
続いて、特許庁にサービスマークの登録を正式に申請します。インターネット出願と、書面出願の二つの方法がありますが、インターネット出願の方が手数料が安く、手続きも簡便です。
出願時に必要な主な情報は次の通りです。
商標画像:サービスマークのデザイン
指定商品・役務:サービスマークを使用するサービスの種類及び区分
出願人:サービスマークの権利を取得する個人または法人
願書:所定の様式に必要事項を記入
出願が完了すると、特許庁から「出願番号」が通知されます。この番号は、その後の手続きで必要となるため、大切に保管しましょう。出願内容に不備があると、補正指示が出される場合があります。指示に従って速やかに補正を行いましょう。
審査
出願が完了すると、特許庁による審査が始まります。この審査では、商標法に基づき、登録要件を満たしているかが厳密にチェックされます。主な審査項目は以下の通りです。
類似商標の有無:既に登録されている商標と類似していないか
標章の識別性:サービスの出所を示せるか
公序良俗違反の有無:公序良俗に反する標章ではないか
審査期間中は、特許庁から連絡が来る場合があります。審査状況は特許庁のウェブサイトで確認することも可能です。
登録
審査を通過すると、「登録査定」となります。登録査定の通知が届いてから30日以内に忘れずに登録料を納付しましょう。登録料の納付が確認されると、商標登録となります。
登録後は、特許庁のデータベースで商標が公開されます。これにより、第三者があなたの商標を確認できるようになります。商標権の設定登録の公告は、官報にも掲載されます。
商標権の存続期間は登録日から10年間です。なお、更新することで権利を維持できます。
サービスマークの維持
登録商標・サービスマークは、適切に維持し、活用することで初めてその価値を最大限に発揮します。サービスマークの維持に不可欠な更新手続きと使用状況の管理について解説します。
更新手続き
商標権のサービスマークは永久的なものではなく、有効期間があります。日本では登録から10年ごとに更新手続きが必要です。更新を怠ると権利が失効し、保護を受けられなくなるため、期限管理は非常に重要です。有効期間を把握し、特許庁での更新手続きに漏れがないよう気を付けましょう。
使用状況の管理(不使用取消審判)
サービスマークは、登録後一定期間使用していない場合、不使用取消審判請求の対象となる可能性があります。不使用取消審判請求のリスクを避けるには、サービスマークを継続的に使用することが大切です。使用の証拠は、広告、ウェブサイト、カタログ、領収書などの形で残しておきましょう。
「不使用取消審判」とは、権利を保有しているにも関わらず、実際に使用していないトレードマークやサービスマークを排除し、市場の健全な競争を促進するための制度です。この制度のもと、サービスマークは、継続して3年以上、そのサービスマークを指定役務に使用していない場合、何人も特許庁に不使用取消審判を請求できます。
審判請求があった場合は、サービスマークの商標権者は、「使用していること」または「不使用につき正当な理由があること」を証明しなければなりません。なお、正当な理由の例としては、以下のようなものが挙げられます。
天災地変、経済不況など、やむを得ない事情があった場合
新型コロナウイルス感染症の影響など
事業準備を進めていた期間
まとめ
商標のサービスマークを登録することで、顧客の信頼を獲得し、模倣品を防ぎ、サービスの価値を高められます。サービスマークの登録に際しては、適切な手続きや区分の指定を行い、登録後は適切に管理し、継続的に使用し続けることが重要です。専門家のアドバイスを得ながら、効果的にサービスマークを維持・活用しましょう。
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