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韓国への特許出願の基礎知識|必要な費用・特許年金・検索方法など詳しく解説

更新日:2024年3月12日



日本にもっとも近い国のひとつである韓国は、世界的にも特許出願件数の多い国として知られています。日韓間での人や企業の交流も多く、日本企業が韓国で商品を販売したり、サービスを展開したりすることも頻繁に行われています。


そういった背景もあり、韓国への特許出願に関しては制度が整えられており、比較的手間をかけずに出願することが可能です。ここでは、韓国への特許出願の方法や、特許調査のための検索方法など、基本的な知識を解説します。


韓国の特許出願状況と傾向


まずは、韓国の特許出願状況についてみていきます。


韓国の特許出願数は世界でも上位


韓国は、世界的に見ても特許の出願数が多い国です。WIPO(世界知的所有権機関)によれば、2021年にPCTルート(詳細は後述)を用いて出願された特許は、中国、アメリカ、日本のトップ3に次いで、韓国が4位となっています。


韓国特許庁(KIPO)への出願の内訳は、内国人(=韓国人)による出願の割合が高く、外国人の出願は20%前後で推移しています。この割合は日本と近いものです。なお、アメリカと欧州は外国からの出願比率が50%を超え、反対に中国は10%台前半に留まります。




出願分野はIT関連やAI関連技術が目立つ


近年、韓国特許庁に出願される特許の内容は、IT関連やAI関連技術などが目立ちます。これは、サムスンやLGを始めとした世界的な電子機器メーカーや、アメリカや欧州で一定のシェアを獲得している現代自動車(ヒュンダイ)を始めとした大企業の存在と無関係ではないでしょう。


特許出願数に占める内国人の比率の大きさについても、自国のマーケットこそ大きくないものの、海外で戦える企業が多いという点で、日本と共通しているといえます。



韓国へ特許出願する3つの方法


韓国で特許を取得するにあたっては、主に3つの方法が存在します。


1.PCTルート


PCTルートとは、特許協力条約「PCT(Patent Cooperation Treaty)」に基づいた手続き方法です。この方法で出願を行えば、複数のPCT加盟国に同時出願する場合に、個別に出願する手間が省けます。


PCTルートを利用した出願では、日本の特許庁で「国際出願」をすると同時に、PCT加盟国(韓国もPCT加盟国)にも出願したのと同じ扱いとなります。さらに、国際出願から31

ヶ月以内に、韓国特許庁(KIPO)に対し「国内移行」手続きを取ることで、正式に手続きが開始されます。


海外での出願日は日本で国際出願を行った日となり、出願日から1年経過していなければ「優先権」を主張できます。なお、特許性審査は韓国の基準で行われるため、日本で特許を取得できたとしても、必ずしも韓国でも認められるとは限りません。



▼PCTルートのメリット・デメリット


PCTルート最大のメリットは、特許出願のための書類が日本の特許庁に提出するものだけで済むことです。さらに、日本での特許出願から韓国への国内移行まで最大で31ヶ月の猶予があるため、市場動向をしばらく様子見できますし、翻訳文を作成する期間も長めに確保できます。


一方で、出願する国が少ない場合は、後述するパリ条約ルートよりも費用が高くなる可能性があります。3~4カ国以上に同時出願する場合であれば、PCTルートのほうが費用が安くなるケースが多くなるでしょう。国内移行を行う国が決まっていない場合、PCTルートであれば、日本での特許出願から30ヶ月の間に国を選択できるメリットもあります。



2.パリ条約ルート


パリ条約ルートとは、日本で1年以内に出願した特許について優先権を主張できる、「パリ条約による優先権」を利用して出願を行う方法です。


優先権制度とは、日本で特許出願した日から1年以内に海外に特許を出願すると、その国でも日本と同日に出願したかのような扱いを受けられる制度です。


パリ条約は、韓国の他、アメリカやヨーロッパの主要国、中国など約170ヵ国が加盟している、知的財産権に関する国際条約であり、日本から海外への特許出願の手続きでは、多くのケースでパリ条約ルートが利用されています。



▼パリ条約ルートのメリット・デメリット


パリ条約ルートは、特許権を取得したい国それぞれへ出願を行います。そのため、国ごとに出願内容を変更できるメリットがあります。また、PCTルートと比べた場合、1〜2国への特許出願であれば費用も抑えられます。


一方で、国ごとに手続きが必要となりますし、各国の公用語による明細書の作成も日本の特許出願から1年以内に行う必要があります。これらの手間が、パリ条約ルートのデメリットと言えます。



3.直接出願


日本での特許出願を行わずに、韓国特許庁(KIPO)へ、直接特許を出願する方法もあります。


商品を韓国のみで販売し、他の国では特許を取得する予定がないケースや、できるだけ早く韓国の特許を取得したい場合は、この方法でもよいでしょう。



韓国への特許出願には現地代理人が必要


日本から、韓国特許庁(KIPO)に特許出願を行う場合、韓国の弁理士を代理人として起用する必要があります。韓国の弁理士は日本に近い制度になっており、韓国特許庁での手続きや、裁判所(特許法院)での取消訴訟などを代理できます。


韓国の弁理士は、英語や日本語で対応できる人も多く、日本語の明細書を渡すことで書類の作成までしてもらえるケースが多くなっています。そのため、出願に至るまでの難易度は、諸外国に比べると低いといえるでしょう。



韓国への特許出願の流れ


ここからは、日本から韓国へ特許出願する際の流れをみていきましょう。


1.出願/国内移行


パリ条約ルート、及び、直接出願の場合は、韓国特許庁(KIPO)に対して出願書類を提出します。


なお、韓国語だけでなく、英語での出願も可能です。しかし、その場合は、出願日または優先日のいずれか早い方から1年2ヶ月以内に、韓国語の翻訳文を提出する必要があります。


【特許出願に必要なもの】

  • 特許出願書

  • 明細書

  • 必要な図面

  • 要約書

  • 委任状


PCTルートを利用する場合は、国内移行手続きを行います。その際は、以下の書類を提出し、国内移行手数料を支払います。


【PCTルートの国内移行手続きに必要なもの】

  • 明細書の韓国語翻訳文

  • 請求の範囲の韓国語翻訳文

  • 図面の説明の韓国語翻訳文

  • 要約書の韓国語翻訳文


2.出願公開・審査請求・自発補正


韓国特許庁に出願、または国内移行手続きを行った特許は、出願日から18ヶ月を経過した後に公開されます。


韓国は日本と同様、審査請求手続きを行わないと、特許性審査はされません。審査請求は、出願日(PCT出願の場合は国際出願日)から3年以内に行います。それまでに審査請求が行われなかった場合は、出願は取り下げたものとみなされます。


また、特許査定を受けるまでは原則として自発補正も可能です。例外として、拒絶理由通知を受けた後は、期間や補正できる項目に制限がかかります。これらは日本の制度と同様です。



3.特許性審査


審査請求手続きを行うと、特許性の審査が行われます。


通常、審査にかかる期間は10~12ヶ月ですが、早期審査制度「特許審査ハイウェイ」が日韓の間では用意されており、適用されれば2~3ヶ月で審査結果が出ます。


日本からの出願であれば、PCTルート、パリ条約ルートのどちらでも適用されます。




4.特許査定


審査の結果、特許が決定すると、特許査定書が送られます。特許査定書を受け取ったら、3か月以内に最初の3年分の特許料を納付する必要があります。


なお、納付期間終了後6ヶ月間の猶予期間がありますが、それを過ぎると特許出願は放棄されたものとみなされます。



5.拒絶査定を受けた場合


審査の結果、拒絶査定を受けた場合は、補正書を提出して再審査を請求できます。補正を行っても拒絶理由が解消されない場合は、拒絶査定の不服審判を請求することも可能です。



韓国の特許期間と特許年金


韓国の特許も、日本と同じく存続期間があります。また、特許維持のための年金も必要です。


韓国の特許期限は出願から最長20年


韓国の特許の存続期間は、韓国特許庁への特許出願から、最長で20年までです。PCTルートで出願を行った場合は、国際特許の出願日から起算して20年までとなります。


なお、特許発明のために法令に従って許可を受けたり、登録等をする必要があり、試験に長い期間を必要としたなどのケースでは、特例として5年の延長が一度だけ認められる場合があります。



韓国の特許を維持するには年金の支払いが必要


日本と同じく、韓国の特許を維持するためには「特許年金」を支払う必要があります。年金の金額は以下の通りです。


【韓国の特許年金の金額(1請求項の場合)】

  • 1~3年目 84,000 ウォン/年

  • 4~6年目 62,000 ウォン/年

  • 7~9年目 138,000 ウォン/年

  • 10~12年目 295,000 ウォン/年

  • 13~25年目 415,000 ウォン/年


韓国の特許の検索方法


韓国へ特許出願する際は、類似の特許が既に登録されていないことを確認しましょう。韓国の特許を検索する方法を紹介します。


▼特許技術情報センター(KIPRIS)


韓国の特許は、韓国特許庁に属する「特許技術情報センター(KIPRIS)」のウェブサイトで検索できます。


利用は無料で、特許の他に実用新案や商標などの検索も可能です。



まとめ


韓国の特許出願状況や、日本から特許を出願する際の方法、事前に韓国の特許を調べる方法などの、基本的な知識を解説しました。


韓国の特許制度は日本に似ている部分が多く、また、現地代理人が日本語で対応できるケースも多いなど、特許取得のハードルは低いものになっています。


今すぐでなくても、今後、韓国で商品を販売したり、サービスを展開したりする予定があるのであれば、日本での特許出願と同時に、韓国特許の出願も検討するとよいでしょう。



韓国への特許出願なら井上国際特許商標事務所までご相談ください


井上国際特許商標事務所は、個人事業者から大企業まで、様々な技術分野の特許出願手続きを代行してきた実績があります。


海外への特許出願の際は、現地代理人との的確なコミュニケーションが必要です。また、海外の特許制度に関しても深い知識が必要なため、海外特許の実務経験のある国内代理人を通すことをおすすめします。


韓国や、その他海外での特許取得を検討されている方は、ぜひ一度、井上国際特許商標事務所までご相談ください。

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