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「虚偽表示」の判断基準とは?特許取得していない商品に「特許」と表記するリスク

  • 4月6日
  • 読了時間: 6分

製品や技術の優位性を示す手段として、「特許取得」や「特許出願中」といった表示をすることがあります。しかし、実際には特許が存在しないのに特許で保護されているかのように表示してしまうと、特許の虚偽表示として刑事罰や信頼失墜につながるおそれがあります。


今回は、特許の虚偽表示の概要や判断基準、具体例を解説するとともに、実務上の注意点についてもわかりやすく紹介します。



特許の虚偽表示とは


特許の虚偽表示とは、実際には特許権が存在しないにもかかわらず、あたかも特許によって保護されているかのように表示する行為です。特許法では第188条に虚偽表示の禁止が定められています。


特許の虚偽表示に該当する行為


特許法188条では、主に次の3つの行為を虚偽表示として禁じています。


特許がないのに特許表示をすること

商品や広告などに、「特許」「特許取得」「PATENT」など、特許を受けた発明であると誤認させる表示をすること。


出願中でないのに「出願中」と表示すること

実際には特許出願をしていないにもかかわらず、「特許出願中」「特許申請中」「Patent Pending」などと表示すること。


紛らわしい表示をすること

「特許的製品」「当社の特許技術」など、一般に特許と誤解されるおそれのある表示。必ずしも「特許」という言葉を使わなくても、誤認が生じるような紛らわしい表示をしていれば規制対象となる。



特許法188条では、商品本体のみならず、容器や包装、カタログ、広告、チラシ、Webサイトなど、製品のマーケティング全般に関わる媒体が広く虚偽表示の規制対象となります。


特許法188条の趣旨

虚偽表示に該当する行為ないし媒体が広く捉えられるのは、同条が次の2つを目的としているためです。


  • 消費者や取引先による誤認を防ぐ

  • 実際に特許を持つ企業との公平な競争を守る


もし虚偽の特許表示が横行すると、実際には特許を持たない企業がその技術力や品質を過大に見せることができてしまいます。ひいては、特許制度への信頼そのものも失われてしまいます。このため、同条では比較的広い範囲の虚偽表示を禁止しているのです。



特許の虚偽表示の判断基準


虚偽表示に当たるかどうかは、主に次の3つの観点から判断されます。


実際に特許権が存在するか

存在しない特許権を存在するかのように表示すると、虚偽表示にあたります。また、特許料の未納や存続期間満了などで特許権が消滅しているにもかかわらず、失効した特許の表示を続けた場合も、虚偽表示となり得ます。


表示が誤解を招く内容か

「特許取得」と明示している場合に限らず、特許取得を連想させる表示や誤認させる表示も、虚偽表示に該当し得ます。例えば、「PATENT」、「特許発明」、「特許製品」、「特許取得済み構造」などが挙げられます。


特許と表示対象の関係

実際に自社が有効な特許を持っていたとしても、製品と関係ない特許番号を表示してあたかも当該製品が特許製品であるように表示していた場合は、虚偽表示に該当します。また、部分特許を製品全体の特許のように表示するケースも問題です。



「特許出願中」「特許申請中」の表示の可否


特許は、出願しただけでは成立せず、審査を経て登録されて初めて特許権となります。そのため、出願段階で「特許取得」と表示するのは虚偽表示にあたります。もっとも、製品パッケージや広告では、「特許出願中」、「特許申請中」、「Patent Pending」といった表示がよく見られます。それらは何を意味するのでしょうか。


特許出願後、特許庁の審査を経て特許取得に至るまでには、通常、約1年から1年半を要します。その間、競合他社に模倣されるリスクがあります。このため、他社に対して技術開発の状況を示し、模倣を抑止するために、「特許出願中」などの表示をすることがあります。


実際に特許出願をしている場合は、このような表示を行うこと自体は問題ありません。ただし、出願していないのに「特許出願中」などと表示した場合は、当然ながら虚偽表示にあたります。また、出願を取り下げた場合や拒絶が確定した後も表示を続けていると虚偽表示になり得ますので、注意が必要です。



虚偽表示を行った場合のリスク


虚偽表示にあたる行為に対しては、特許法第198条で罰則が定められています。具体的には、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。


また、特許法201条は、法人の業務に関して従業員等が虚偽表示を行った場合、法人に対して1億円以下の罰金刑が科される「両罰規定」を定めています。


これらの罰則が適用された実際の摘発例は多くありませんが、悪質な場合には処罰対象となり得ます。そもそも、誤った表示や紛らわしい表示をする行為そのものが、企業の信頼失墜につながります。



虚偽表示を回避するための実務上の注意点


虚偽表示のリスクを回避するための実務上の注意点としては、次の3点が挙げられます。


出願中と取得済みを明確に区別する

「特許出願中」と「特許取得」は、意味が大きく異なります。カタログやチラシなどの販促物、ウェブサイトなど、さまざまな媒体における表示に注意を払う必要があります。


また、社内では「出願中」の認識でも、広告制作会社が「特許取得」と表現してしまうこともあります。マーケティング部門と知財部門の連携不足で起こりやすい問題ですので、部署横断的に周知しておくことが重要です。


特許番号を併記する

特許表示を行う場合は、「特許第〇〇〇号」「〇〇技術:特許第1234567号」というように特許番号を併記する方法が推奨されています。番号や具体的技術を併記することで誤認を防ぎ、技術の信頼性を高められます。


表示の定期的なチェック

特許権は最大20年で満了します。また、特許年金の未納で消滅する可能性もあります。特許の有効性を適切に管理し、カタログ、Webサイト、パッケージなど、自社の製品や媒体における表示を定期的に確認することが重要です。


例えば、「10年前に取得した特許を表示しており、特許料の未納で権利消滅したにもかかわらずパッケージ表示はそのまま」といったケースが問題になります。古い製品カタログやWebサイト、海外向け資料などは特に見落とされがちです。


少なくとも年に1回は特許表示を棚卸し、表示媒体のリストや表示ルールを知財部門が管理・共有できるようにしておくとよいでしょう。



まとめ


実際には特許権が存在しないにもかかわらず、製品や広告で「特許取得」などと表示し、特許で保護されているかのように見せる行為は、特許の虚偽表示として禁止されています。虚偽表示は企業の信頼失墜につながり、罰則の対象となる可能性もあります。


特許表示や「特許出願中」の表示を行う際は、権利の有無や対象技術との関係、出願状況などを正確に把握し、誤解を招かない適切な表示を行いましょう。


井上国際特許商標事務所では、経験豊富な弁理士が、特許の表示に関して実情に合ったアドバイスをいたします。ぜひ一度、ご相談ください。


 
 
 

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