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立体商標の登録要件とは? 商品の形状そのものをブランドとして守るには

  • 4月6日
  • 読了時間: 6分

商品や容器の形状、店舗の外観など、「形そのもの」がブランドの象徴になっていることがあります。こうした立体的な形状を商標として保護する制度が、立体商標です。


今回は、立体商標の定義や制度が設けられた背景から登録要件まで、具体例を交えながら分かりやすく解説します。



立体商標とは


立体商標とは、商品の形や容器、建物、キャラクターなどの立体的な形そのものを商標として保護する制度です。通常の商標が文字や図形などの平面的な標識であるのに対し、立体商標では、三次元の形状そのものが出所識別標識として機能します。


出所識別標識とは、商品やサービスが「どの事業者によって提供されているか」を消費者が見分けるための目印となる標識のことです。例えば、商品の独特な形状や店舗の外観など、形そのものを見ただけで特定の事業者の商品・サービスが認識できるとき、その形そのものが立体商標として登録される可能性があります。


立体商標の対象となる例としては、次のようなものが挙げられます。


  • 商品そのものの形状

  • 容器や包装の形状

  • 店舗や建物の外観

  • マスコットキャラクターの立体形状



立体商標制度が設けられた背景


立体商標制度は、1996年の商標法改正で導入され、翌年から運用が開始されました。その後、2020年の法改正により店舗の内装なども保護対象に加わるなど、保護の範囲は広がっています。このような立体商標制度が導入された背景には、主に次の3つの要因がありました。


ブランド表現の多様化

ひとつは、ブランド表現が多様化してきたことです。


企業のブランドは従来、典型的な商標である文字やロゴで表現されていました。しかし、ブランド表現が多様化するにつれ、商品の容器や包装、店舗の外観など、形状によって識別されるケースも増えてきました。


従来の商標制度ではこのような形状を十分に保護できない場合があり、制度の整備が求められていました。


国際的な制度との整合

国際的な知的財産の枠組みでは、すでに立体商標が保護対象となっていたことも背景にあります。


米国では1946年制定のランハム法(Lanham Act)のもと、商品やパッケージの形状などの「トレードドレス(trade dress)」が商標として保護されてきましたし、1994年に導入された欧州共同体商標(現:EU商標)制度のもとでも、三次元形状(3Dマーク)が商標として登録できます。


こうした流れを受けて、日本でも国際的な知的財産制度との整合を図る必要がありました。


ブランド価値の保護

ブランド表現が多様化するにつれ、容器や包装、店舗デザインといった形状も、企業にとって重要なブランド資産と認識されるようになりました。


このため、独特な形状が模倣されることによる出所の混同を防ぎ、企業のブランド価値や消費者の利益を守るべく、形状そのものを商標として保護する制度が求められていました。



立体商標の根拠法:商標法における位置づけ


こうして改正された商標法では、第2条第1項において、商標の定義に「立体的形状」が明確に含まれています。具体的には、文字、図形、記号、立体的形状、またはこれらと色彩との結合であって、商品やサービスに使用されるものが商標として定義されています。


このため、商品の形状や容器、店舗外観なども、出所識別標識として機能する場合には、商標として登録できることになります。



立体商標の登録要件:「機能的形状の除外」と「識別力」


立体商標が登録されるためには、通常の商標と同様に、商標法上の登録要件を満たす必要があります。ここでは、特に重要な2つの要件「商品等の形状のみからなる商標ではないこと」および「識別力があること」について解説します。


商品等の形状のみからなる商標ではないこと

商標法第4条第1項第18号では、「商品等の形状であって、その商品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる商標」は、登録を受けることができないと定められています。


これは、次のような形状を特定の企業だけが独占できるようにしてしまうと、他社が同様の機能を持つ商品を作ることが難しくなり、市場競争を不当に制限するおそれがあるためです。


  • 商品の機能を実現するために必然的に採用される形状

  • 商品の性能や使いやすさに直結する形状


したがって、上記のような機能的な形状のみからなる商標は登録できないものとされています。


識別力があること

商標は、商品やサービスの出所を識別できるものでなければなりません。つまり、自社の商品・役務を他社の商品・役務から識別できる「識別力があること」が、要件として求められます。


このため、一般的に採用されている形や単に機能を実現するための形を商標登録しようとしても、「識別力が欠けている」と判断され、登録できません。識別力が認められるには、「この形=この企業の商品」と認識される独自性や、長年の使用や広告による識別力獲得を証明する必要があります。


具体的には、出願や審査の過程で次のような客観的資料を提出し、形状が識別力を有することを示さなければなりません。


  • 売上高や販売数量

  • 使用期間

  • 広告宣伝の実績

  • メディア掲載

  • 消費者調査(認知度調査)など


自社の商品や容器、店舗の外観などの形そのものの商標登録を目指す際には、これらの要件充足を見据えた商品展開やマーケティング、資料収集を行うことが重要です。



立体商標の具体例:登録が認められた3つのケース


最後に、立体商標の登録が認められた具体例を3つ紹介します。


コカ・コーラのガラス瓶

コカ・コーラのくびれた独特のガラス瓶は、世界的に知られる立体商標の代表例です。このボトルは1915年にデザインされ、遠くから見てもコカ・コーラと分かる形状としてブランドの象徴になりました。形状そのものが商品を識別する標識として機能するため、日本を含む多くの国で立体商標として保護されています。


出典:J-PlatPat


きのこの山

明治のチョコレート菓子「きのこの山」の形状は、日本で登録されている立体商標の代表例です。2015年に出願された当初は「単なる菓子の形状」として却下されましたが、長年の販売実績とアンケート調査に基づく90%以上の高い認知度を示す証拠を示した結果、2018年3月30日、3度目の出願で登録されました。


出典:J-PlatPat


ケンタッキーフライドチキンのカーネル像

ケンタッキーフライドチキンの店舗前に設置されているカーネル・サンダース像も、立体商標として登録されています。消費者は、店舗の前に立つカーネル像を見ただけで同社の店舗であると認識できます。この識別力が認められ、カーネル像は同社のサービスの出所を示す標識として保護されています。


出典:J-PlatPat



まとめ


立体商標は、商品、容器、店舗などの「形そのもの」をブランドの目印として保護する制度です。この制度を活用すれば、商品等の形状の模倣を防ぎ、企業のブランド価値を守ることにつながります。


ただし、登録のためには「識別力」をはじめとする商標登録の要件を備えていることが求められます。このため、登録に向けた手続過程では、長年の使用実績や広告宣伝、認知度調査といった客観的資料をいかに収集・提出できるかが鍵になります。


井上国際特許商標事務所では、立体商標制度に精通した弁理士が、登録を円滑に進めるためにサポートいたします。立体商標の登録出願をご検討の方は、ぜひ一度、ご相談ください。



 
 
 

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