意匠の新規性喪失の例外規定とは?適用要件と具体例も紹介
- 2025年12月8日
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新製品の展示会出品や発売前のオンライン先行販売、業界誌への掲載など、新デザインの意匠出願前に、市場の反応を見るためや販促のために一部の媒体でデザインを公開することがあります。
ところが、公開されたデザインには意匠登録の要件である「新規性」がありません。そんなとき、公開デザインでも例外的に意匠登録を可能にする「新規性喪失の例外規定」が役に立ちます。
ここでは、新規性喪失の例外規定の適用要件から手続き、実務上の注意点まで、具体例とともに解説します。
意匠の新規性喪失の例外規定とは
意匠法における「新規性」の原則
意匠登録を受けるためには、原則としてその意匠の「新規性」が要件となります。
新規性とは、意匠登録出願をする前に、日本国内または外国において公然と知られたり、あるいは実施されたりしていないことを指します。
例えば、以下のような場合は新規性が認められません。
国内外で製品として販売された、または展示された意匠
国内外で公表された刊行物(書籍や雑誌、インターネット上の記事など)に掲載された意匠
国内外で公然と(不特定多数の人が利用できる場所で)実施された意匠
意匠登録出願前に第三者が実施していた意匠
新規性喪失の例外規定が必要な理由
意匠制度は、新しいデザイン(意匠)を保護することで、それを生み出したデザイナーや企業のデザイン開発への意欲を促し、ひいては産業全体を活性化することを目的としています。
しかし、新規性喪失を恐れてデザインの意匠登録前の展示会出品やSNS掲載、試作品販売などができないとなると、産業の活性化がかえって妨げられてしまいます。
そこで、このような事態を防ぐために、意匠法に「新規性喪失の例外規定」が設けられました。この規定は、デザインが公に発表された後であっても、一定の条件を満たせば意匠登録を受けられるようにするものです。
新規性喪失の例外規定は、デザインの早期公開や市場評価と、意匠権による保護の両立を図り、ひいては産業を活性化することを目的としているのです。
新規性喪失の例外規定の適用要件
意匠出願前のデザイン公開
新規性喪失の例外規定の適用を受けるには、まず、意匠出願前にデザインを公然と知られる状態にしたこと、あるいは自ら公開したことが必要です。具体的には、以下のような形態が考えられます。
商品展示会での出品
インターネット上のウェブサイトへの掲載
公表された刊行物(雑誌、新聞など)への掲載
公の場での発表
なお、このように公開されたデザインと後に出願する意匠との間に同一性または類似性が認められることが、例外規定適用の前提となります。
新規性喪失日から1年以内の出願
例外規定の適用を受けるには、新規性を喪失した日(デザイン公開の日)から1年以内に意匠登録の出願をしなくてはなりません。
したがって、デザインを公開する際には、出願までの期間を意識し、期限内に手続きを進められる状態にしておきましょう。
例外規定の適用を受けることの「届出」
例外規定の適用を受けるには、その旨の「届出」が必要です。この届出は、原則として意匠登録の出願と同時に行います。
ただし、届出に必要な書類や記載事項については、次章の「新規性喪失の例外規定の適用手続」で詳述します。
届出を行う主体は、意匠権者またはその権利を承継した者となります。例えば、自身がデザインを公開した場合は本人が、会社としてデザインを公開した場合はその会社の担当者が届出を行うことになります。
新規性喪失の例外規定の適用手続
意匠登録出願時の届出
新規性喪失の例外規定を受ける旨の届出は、原則として出願時に行います。具体的には、願書の「特記事項」欄に、意匠法第4条第2項の適用を受ける旨を明記します。
例外適用証明書の提出
出願と同時に、または出願から30日以内に、公開された事実を証明するための例外適用証明書を提出します。
かつては意匠登録を受ける者の行為に起因して公開された「全ての」意匠を網羅した例外適用証明が求められていました。しかし、意匠法第4条3項が改正され、現在では「最先の日に行われたものの一の行為について」証明すれば足りることとなっています。
例外適用証明書には、主に以下のような事項を記載します。
①公開の事実
公開日
公開場所(展示会名、ウェブサイトURL、雑誌名など、具体的な公開媒体)
公開者
公開意匠の内容(展示会の写真、掲載誌、SNSのスクリーンショットなど、公開意匠が現れた写真などを貼付する。別紙添付でも可)
②意匠登録を受ける権利の承継等の事実
公開意匠の創作者
公開の原因となる行為時の権利者
意匠登録出願人
公開者
意匠登録を受ける権利の承継について
行為時の権利者と公開者との関係等について
正確な手続きの重要性
新規性喪失の例外規定の適用手続については、特許庁のホームページを参照して詳しい情報を得ることができます。
例えば、証明書の書式は「意匠の新規性喪失の例外規定についてのQ&A集~出願前にデザインを公開した場合の手続について~」(令和5年12月)に掲載されていますので、参照してみてください。
もっとも、例外規定の適用要件は厳格であり、書類の不備が出願の権利を失う原因となりかねません。このため、意匠登録の専門家である弁理士に相談し、書類作成と手続きを適切かつ迅速に進めることをお勧めします。
具体例と注意点
新規性喪失の例外規定を活用できる具体例
新規性喪失の例外規定を活用できる具体例としては、以下のようなケースが挙げられます。
展示会での新デザイン発表
正式に商品を発売する前に、先行して展示会で新デザインを発表し、市場の反応を見る場合。
インターネット販売サイトへの掲載
新商品の発売に先駆けて自社ウェブサイトのオンラインストアで予約販売を開始した場合。
企業ウェブサイトでの試作品紹介
新製品開発の過程で、ウェブサイト上に試作品のデザインを公開し、市場の反応を見る場合。
SNSでのデザイン案の公開
SNSを通じてデザイン案を公開し、消費者の意見を募る場合。
デザインコンテストでの受賞作品の公表
デザインコンテストで受賞し、その作品がメディアで紹介された場合。
業界誌へのデザイン解説記事掲載
自社製品のデザインについて、その特徴や開発秘話などを解説する記事が業界誌に掲載された場合。
このようなケースは、いずれも新規性が失われるため原則として公開後の意匠登録が妨げられます。しかし、新規性喪失の例外規定の手続きを適切に踏むことで、新デザインのプロモーション活動と意匠登録の両立を達成できます。
新規性喪失の例外規定はあくまで「例外」
新規性喪失の例外規定があるからといって、意匠登録に先立ち新デザインを公開することには慎重になるべきと考えられます。なぜなら、デザイン公開後、意匠登録までの間に、競合他社などがそのデザインを模倣して意匠登録してしまう可能性は否定できないからです。
新規性喪失の例外規定が適用されるからといって、出願日が公開日に遡るわけではありません。公開されたデザインを模倣した他者が、先に出願・意匠登録を完了してしまった場合、意匠法の先願主義に則って先に出願した者に意匠権が認められてしまいます。
このため、新規性喪失の例外規定はあくまで「例外」と捉え、意匠の出願・登録に向けた手続きを速やかに進められるよう用意しておきましょう。
まとめ
意匠の新規性喪失の例外規定は、デザインを公開して新規性が失われた後でも、一定の条件を満たせば例外的に意匠登録を受けられる制度です。
もっとも、公開から1年以内の出願・届出、公開事実の証明など、手続きは厳格に定められています。新デザインの公開と意匠権の確保を両立させるには、綿密な事前準備が求められます。
井上国際特許商標事務所では、経験豊富な弁理士が意匠登録の手続き代行を承っています。迅速な意匠登録をご希望の方は、ぜひ一度、ご相談ください。



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