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特許料の「追納」とは?納付期間を過ぎた場合の権利回復について詳しく解説します

  • 12 分前
  • 読了時間: 8分

特許料の納付期限を過ぎてしまったからといって、直ちに特許権が消滅してしまうわけではありません。一定期間は「追納」ができ、追納期間を経過しても救済手続きにより特許権を回復できる可能性があります。


今回は、特許料の追納と権利回復手続きについて、概要から具体的な記載事項や注意点までをわかりやすく解説します。



特許料の基本


特許料は、特許権を維持するために一定の期限までに納付すべき官庁費用の一種です。特許の設定時に支払う登録料と、4年目以降の権利維持のために支払う特許料(年金)があります。


特許の設定時に支払う登録料

登録料は、特許権の設定登録の日から3年を経過するまでの期間について、3年分をまとめて納付しなければなりません。


納付期限は、特許査定(合格)の謄本送達から30日以内となっています。


4年目以降の特許料

4年目以降の特許料(年金)は、毎年、納付すべき期間の開始前までに納付(前払い)することになります。納付期限の計算方法は、次のとおりです。


1.特許庁に登録された設定登録日を確認する

まずは、特許証や特許公報を見て、登録日の日付を確認しましょう。


2.次回の納付期限を割り出す

特許料(年金)は、原則として、1年ごとに前年の期限日(登録日の応当日)までに支払います。


例えば、設定登録日が2024年2月19日の場合、第4年分の納付期限は2027年2月19日 です。ただし、土日祝日には例外ルールがあります。もし計算した期限日が土曜日、日曜日、国民の祝日、または年末年始(12/29〜1/3)にあたる場合は、その翌営業日まで期限が延長されます。


先の例だと、第5年分の納付期限は2028年2月19日となりそうですが、同日は土曜日にあたるため、納付期限は2028年2月21日(月)まで延長されます。


納付期間を過ぎてしまうとどうなる?

特許料の納付期限を過ぎると、原則として特許権は消滅します。特許権が消滅すると、特許権者はその特許にかかる発明を独占的に行使する権利を失い、第三者が自由にその発明を利用できるようになってしまいます。


しかし、期限超過後でも一定の条件下で「追納」や「回復(救済)手続き」を行うことで、失われた特許権を回復できる場合があります。これらの手続きを正確に理解し、速やかに対応することが、権利維持のために非常に重要です。以降、その救済策について詳しく解説します。



期間経過6ヵ月以内の救済策は「追納」


特許料の納付期限超過後の救済策の一つが、追納による権利回復です。


追納の概要

追納とは、本来納付すべきであった特許料に加えて、その倍額の特許料を納付することです。


追納すると、原則として納付期限内に納付したものとみなされ、特許権を回復できます。追納による権利回復は、納付期限から6ヵ月以内に限り可能です。


この6ヵ月という期間は、特許権者にとって権利回復のチャンスとなる重要な期間です。期限を過ぎてしまうと、追納による権利回復はできなくなります。


具体的な手続きと注意点

追納の手続きは、特許庁に対して「特許料納付書」を提出し、所定の金額(本来の特許料+それと同額の割増特許料)を納付することで行います。実質的に、本来の特許料の2倍の額を支払うことになります。


この際、納付期限超過の理由を詳細に記載する必要はありません。速やかに手続きを進めることが重要です。追納の手続きは、特許庁のウェブサイトからオンラインで行うか、所定の納付書を郵送して行うことができます。


追納手続きのポイントは次のとおりです。


  • 追納期間を過ぎると原則として権利は失効する

  • 倍額納付となるが権利を維持するためには必要な手続き

  • 追納が確認され次第、権利は回復される


万が一、この6ヵ月の追納期間も徒過してしまった場合は、後述する「回復(救済)手続き」による権利回復を検討することになります。まずは、この追納期間内に速やかに手続きを完了させることが、権利維持の最も確実な方法となります。



期間経過6ヵ月超過後の救済策は「回復(救済)手続き」


追納期間である納付期限超過後6ヵ月を過ぎてしまった場合でも、一定の条件を満たせば特許権を回復できる可能性があります。これが「回復(救済)手続き」です。


回復(救済)手続きは、納付期限超過による特許権の消滅という結果を可能な限り回避するための最後の手段です。ただし、この手続きをとれる期間は限定的で、かつ一定の要件が設けられています。


救済措置の対象となる期間

回復(救済)措置を受けるには、以下の2つの条件をどちらも満たしている必要があります。


  • 手続きができるようになった日(失念していたことに気づいた日や、病気などの理由がなくなった日から2ヵ月以内)

  • 追納期間の経過後(本来の追納期限=6ヵ月が終わった翌日)から1年以内


救済措置の適用要件

回復(救済)措置を受けるための要件は、期間内に納付できなかったことが「故意でなかったこと」です。


かつては「正当な理由があること」という厳しい要件が設けられていました。しかし、令和3年の改正法により、令和5年4月1日以降に救済手続きの期間内にあるものについては、「故意でなかったこと」へと要件が緩和されました。


回復理由書の提出

回復(救済)手続きでは、先述の期間内に「回復理由書」を提出しなければなりません。回復理由書には、以下の事項を具体的に記載する必要があります。


期限までに納付できなかった理由及び手続可能となった日

具体的にどのような事情により特許料納付ができなかったのかを記述します。また、その事情が解消され、手続きが可能になった具体的な日付を明記します。理由の例としては、担当者の病気・怪我、予期せぬ災害、重要な書類の紛失・破損、会社のシステム障害などが考えられます。


期限までに納付できなかったことが故意でなかったこと

特許料の納付を意図的に怠ったわけではないことを記述します。


特許料と回復手数料の納付

回復(救済)手続きをとる段階で既に追納期間(6ヵ月)を過ぎているため、まずは本来支払うべき年額の2倍を納付する必要があります。


例えば、第10年分の特許料(1請求項だった場合)は19,300円+請求項数×1,600円=約21,000円。これの2倍なので、約42,000円 程度となります。加えて、回復手数料として212,100円を納付しなければなりません。


このように、回復手数料は金額が大きいため、予算との兼ね合いで回復手続きをとるか否かを判断する必要があります。



特許の回復(救済)手続きの注意点


回復(救済)手続きは、納付期限超過によって失われた特許権を復活させるための重要な制度ですが、必ずしも認められるとは限りません。また、権利回復が認められたとしても、その効力に制限がかかる場合があります。


回復が認められない事例

要件が緩和されたとはいえ、「故意による」納付遅延と判断された場合には、権利回復は認められません。例えば、以下のようなケースでは回復が認められない可能性が高いです。


意図的な納付遅延

権利を意図的に放棄する目的で、あるいは納付を遅らせることで何らかの利益を得ようとしたと判断される場合。経営判断の一環で意図的に納付しなかった場合なども含まれます。


管理体制の著しい不備

企業や組織内での特許管理担当者が複数いるにも関わらず、担当者間の連携不足や連絡ミスが頻繁に発生し、その結果として納付期限を徒過した場合。ただし、個人の過失とは異なるため、状況によっては認められることもあります。


担当者の所在不明など連絡不能な状態

納付期限が近づいているにも関わらず、担当者が長期不在や連絡不能な状態にあり、かつ、その状況を回避・是正するための代替措置が講じられていなかった場合。


これらの事例に該当する場合、たとえ「故意ではなかった」と主張しても、その主張が認められず、権利回復手続きが却下されるリスクがあります。


回復後の効力制限と第三者保護

たとえ回復手続きによって特許権が復活しても、追納期間(納付期限超過後6ヵ月)が過ぎてから回復手続きが完了するまでの間に第三者が特許発明を事業として実施していた場合、当該第三者との関係においてその効力は遡及しません(第三者による特許侵害とは認められません)。


この効力制限は、特許権者が納付期限を守らなかったことによって生じる不利益を、善意の第三者に転嫁させないための保護措置です。したがって、権利回復が認められたとしても、直ちに第三者に対する権利行使が可能になるわけではない点に注意が必要です。



特許料の納付忘れを防ぐための権利管理


特許料の納付期限超過は、特許権を失うリスクをもたらします。このような事態を防ぐためには、事前の権利管理と防止策が不可欠です。


まず、社内での特許管理体制を構築しましょう。具体的には、特許の有効期限や特許料の納付期限を管理する担当者を定めたうえで、仕組み化して管理しましょう。スプレッドシートや専用の管理ソフトを用いれば、納付期限を一覧で把握し、リマインダーも設定できます。期限管理ツールの活用も有効です。


複雑な手続きや長期的な管理が難しい場合は、専門家である弁理士に相談することも賢明な選択肢です。弁理士は、適切な管理方法のアドバイスや、実際の納付手続きの代行も行っています。


これらの対策を講じることで、特許料納付忘れによる権利失効のリスクを大幅に軽減し、大切な特許権を確実に維持できます。



まとめ

特許料の納付期限を過ぎても、追納や回復(救済)手続きを適切に行えば、特許権を取り戻せる可能性があります。ただし、追納は期限超過後6ヵ月以内に限られ、さらに期間を徒過した場合の回復手続きは要件や期間が厳しく、費用負担も大きくなります。


また、回復が認められても第三者に対する効力が制限される場合がある点も要注意です。大切な特許権を確実に守るには、日頃から納付期限を正確に管理し、社内体制の整備や専門家の活用を通じて期限徒過を未然に防ぐことが何より重要です。


井上国際特許商標事務所では、経験豊富な弁理士が、特許権の維持管理や回復手続きに関して実情に合ったアドバイスをいたします。特許料の追納や期限管理にお困りの方は、ぜひ一度、ご相談ください。


 
 
 

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