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「特許異議申立」と「特許無効審判」の違いについて解説


「自社製品に搭載しているノウハウが、知らないうちに他社の特許技術として登録されていた」あるいは「他社から特許権侵害の警告が届いた」――そんな場面で他社の特許の有効性を争う手段として、特許異議申立と特許無効審判の2つの制度があります。


どちらの制度も、申立て/請求が認められれば、問題となっている特許を「はじめからなかったもの」として扱う効果をもつ一方で、異なる点もあります。今回は、特許異議申立と特許無効審判の相違点について解説します。



特許異議申立と特許無効審判の共通点

特許異議申立(以下、異議申立)制度は、広く第三者に特許の見直しを求める機会を与えて、特許を認めた処分の適否につき特許庁が審理する制度です。


一方、特許無効審判(以下、無効審判)制度は、特許に関して利害関係をもつ者が、特許の無効を主張して特許庁に審判を求める制度です。


異議申立で「取消決定」が下されると、特許は初めからなかったものとみなされます。また、無効審判で「特許を無効にすべき旨の審判」が下されると、特許は初めから(場合によっては無効事由が発生した時点から)なかったものとみなされます。


つまり、どちらの制度においても、申立てや請求が認められると「特許権が存在しなかったもの」とみなされます。異議申立も無効審判も、特許が認められた後にその有効性を争う手段であり、申立てや請求が認められた場合の効果は共通しています。



異議申立と無効審判の違いとは?

では、異議申立と無効審判ではどのような点が異なるでしょうか。制度趣旨から、審理構造の違い、手数料の違いまで、主に7つの違いを紹介します。


制度の趣旨

異議申立と特許無効審判は、制度の趣旨そのものが異なります。


異議申立は、特許が特許権者に付与されてから一定期間、広く第三者に特許の見直しを求める機会を与え、早期に権利を安定させることを目的としています。一方、無効審判は、特許権をめぐる紛争解決を主な目的としています。


このような制度趣旨の違いは、申立人/請求人の範囲、申立て/請求の期間、審理構造の違いにも表れています。


申立人/請求人の範囲

異議申立は、広く第三者に特許の見直しを求める機会を与える制度であるため、申立てができる人については「何人も」(特許法第113条)と広く規定されています。


一方で、紛争解決を目的とする無効審判では、問題となる特許権をめぐって争っている当事者同士の紛争解決を目指す制度であるため、請求人は「利害関係人」に限られます(同第123条)。


なお、ここで言う「利害関係人」とは、具体的には次のような者を指します。


  • 当該特許発明と同一である発明を実施している/していた者

  • 当該特許発明を将来実施する可能性を有する者

  • 当該特許権に係る製品・方法と同種の製品・方法の製造・販売・使用等の事業を行っている者

  • 当該特許権の専用実施権者、通常実施権者等

  • 当該特許権について訴訟関係にある/あった者又は警告を受けた者

  • 当該特許発明に関し、特許を受ける権利を有する者



申立て/請求の期間

先述のとおり、異議申立は早期に特許処分の適否を審理して、権利を安定化させることに主眼があります。このため、異議申立ができる期間は「特許掲載公報の発行の日から6月以内に限り」と定められています(同第113条)。


一方、当事者間の紛争解決に主眼を置く無効審判は、特許掲載公報の発行から6カ月を経過してもいつでも請求できますし、特許が消滅した後でも請求できます(同第123条)。


審理構造

申立て/請求がなされた後の審理構造にも、違いがあります。


異議申立は審査系の手続きであり、審査は特許庁と特許権者の対立構造で行われます。このため、申立人は必要事項を記載した異議申立書を特許庁長官に提出しますが、審査に積極的に関与することはできません。異議申立の手続きは、申立書に記載された「特許異議の申立ての理由」や提出された証拠に基づき、書面ベースで行われます(同第118条参照)。


無効審判は、主に紛争解決のための制度なので、当事者系の手続きです。このため、特許権者と無効審判請求人の対立構造で審理が行われ、特許庁は中立的な立場に置かれます。無効審判の審理には原則として口頭審理があり(同第145条)、請求人と特許権者(被請求人)はお互いの主張・立証をくりひろげて特許の有効性を争います。


申立て/請求の理由

異議申立も無効審判請求も、次のような公益的事由を理由に申立て/請求をすることができます。


  • 明細書の記載不備

  • 新規性・進歩性の欠如

  • 実施可能要件の欠如

  • 条約違反など


異議申立と無効審判とで異なるのは、無効審判請求に関してのみ、共同出願違反や冒認(ぼうにん)出願といった権利帰属に関する事由を理由に無効審判請求できるという点です。


不服申立て

特許庁と特許権者の対立構造である異議申立と、請求人と特許権者(被請求人)との当事者間の対立構造である無効審判とでは、不服申立ての可否にも違いがあります。


異議申立で特許を取り消す「取消決定」が出された場合は、特許庁長官を被告として東京高等裁判所の知的財産高等裁判所に提訴できます。しかしながら、特許を維持する「維持決定」がなされた場合や異議申立が却下された場合は、何らの不服申立てもできません。


一方、無効審判の審決に対しては、特許を無効にする「認容審決」が出された場合だけでなく、特許を維持する「棄却審決」が出された場合も不服申立てが可能です。


具体的には、認容審決に対しては、特許権者である被請求人が請求人を被告として東京高等裁判所の知的財産高等裁判所に提訴できますし、棄却審決に対しては、請求人が被請求人を被告として同様に提訴できます。


手数料

異議申立と無効審判では、手数料も大きく異なります。比較的簡易な手続きである異議申立の手数料は「16,500円+(請求項の数×2,400円)」なのに対し、無効審判の手数料は「49,500円+(請求項の数×2,400円)」となっています。



まとめ

特許異議申立と特許無効審判には、制度趣旨、申立人/請求人の範囲、申立て/請求できる期間、審理構造などに違いがありますが、いずれも特許の有効性を争うための手段ですから、戦略的に申立書を記載したり、主張・立証したりする必要があります。


特許実務や裁判例を踏まえた専門的な知見とノウハウが求められる内容ですので、手続きの早い段階から専門家に依頼されることをおすすめします。


井上国際特許商標事務所では、特許関連の手続き経験豊富な弁理士がサポートいたします。特許の有効性を争う手段をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。


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