芸名・バンド名・インフルエンサー名・馬名の商標登録について解説します



芸名やバンドの名前を商標登録できることはご存じですか? 例えば、「SMAP」や「宇多田ヒカル」、「サザンオールスターズ」などの芸名やグループ、バンド名は商標登録されており、「知名度の横取り」を防いでいます。


また、最近ではネットの世界を中心に活躍するインフルエンサーやYouTuberも、名前に紐づいたイメージや信用を守るために商標登録するケースが増えています。さらに、競走馬が擬人化されたキャラクターが登場するゲーム「ウマ娘」のブームにより、馬名の商標登録にも光が当たるようになりました。


このページでは、芸名、バンド名、インフルエンサー名、馬名などの商標登録について詳しく解説します。



芸名やバンド名を商標登録する理由とは?


芸名:知名度の横取り防止のため


芸名やコンビ名の商標登録は、宇多田ヒカル(ユースリー・ミュージック)やダウンタウン(オフィス エム・ツー他)を始め、数多く行われています。


芸名を商標登録する理由は、芸能事務所がタレントのプロモーションや育成に多額の投資をして獲得した知名度やブランドを保護するためです。


例えば、タレントの加護亜依さんは、元々所属していた事務所が名前を商標登録していました。その後、加護さんは新しい事務所へ移ったのですが、同名で活動したい加護さんの利益と、「加護亜依」というブランドを育成してきた旧事務所の利益との対立が起こり、加護さんが原告となり商標登録の抹消を求めた訴訟を起こしています。


このように、芸能事務所としては、せっかく育てたミュージシャンが別の事務所に移って同じ名前で活動するようになると、移籍先の事務所に知名度を横取りされてしまう格好になります。これを防ぐことが、芸名を商標登録する目的のひとつとなっています。


バンド名:バンド存続のために商標が非常に重要


バンド名やグループ名も、サザンオールスターズ(アミューズ)やSMAP(ジャニーズ事務所)など、数多く商標登録されています。


バンド名やグループ名を商標登録する目的は、脱退したメンバーが別の場所で新バンドを結成して同じバンド名で活動を始めたような場合に、商標登録がなくてはこれを阻止する法的手段がないためです。さらに、脱退したメンバーが先に商標登録してしまったら、もはやそのバンド名は使えなくなってしまいます。


例えば、長瀬智也さんがTOKIOを脱退したことは、皆さんの記憶に新しいことでしょう。このとき、仮に「TOKIO」の商標登録が未了であったとすれば、長瀬さんが新メンバーを集めてTOKIOとして活動を始めたとしても、残ったメンバーはこれを阻止する術がなく、さらに長瀬さんが「TOKIO」を商標登録したとすれば、3人はもはやTOKIOを名乗れない事態に陥ってしまうのです。


このように、大切なバンド名やグループ名を商標登録することは、バンドやグループの活動存続のために大変重要なのです。



インフルエンサー名や馬名は商標登録できるか


インフルエンサー名:商標登録できる


インフルエンサーの名前も商標登録が可能です。YouTuberやティックトッカー、インスタグラマーなど、主にSNS上で発信力を持つインフルエンサーにとっても、名前の横取りは他人事ではありません。


インフルエンサーは、独自の動画や画像の発信でファンを獲得し、イメージを確立し、影響力を高めます。ようやくインフルエンサーとしての知名度が上がってきたところに、同じ名前で活動する人が出てきたらどうでしょう。


知名度が利用されると、そちらの視聴回数が伸びてしまったり、視聴者が混乱したりしてしまいます。場合によっては、名前から想起されるイメージが毀損される可能性もあります。 さらには、後発のインフルエンサーが先に商標登録してしまったら、せっかく高めた知名度を捨てて別の名前での活動を強いられることになります。インフルエンサーも、安心してその名前を使い続けるために、商標登録しておくのが得策です。


馬名:商品の販売を目的とした商標登録が一般的


馬名も商標登録が可能です。例えば、「オグリキャップ」や「アーモンドアイ」はおもちゃやゲームソフトなどの販売を目的として商標登録されています。


最近、馬名に関する商標登録に注目が集まっているのは、アニメやソーシャルゲームを展開する「ウマ娘」の影響でしょう。馬名に関しては、有名人の名前や肖像から生じる顧客吸引力「パブリシティ権」による保護が最高裁判所の判例で否定されているため、何らかの対策を考えている馬主の方もいらっしゃるかもしれません。

現状、商標登録を行うことで、おもちゃやゲームソフトなど指定商品の範囲内での馬名の保護が可能です。そのため、所有馬が活躍した場合、競馬以外の商品・役務においても商標登録をしておく意味はあるものと考えられます。


なお、「自身の競走馬の名前が他の馬につけられないようにする」ことを目的に商標登録を行う必要はありません。これは、公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナルの審査により、知名度を確立した馬の名前が別の馬につけられる事態が起こらないよう管理されているためです。



名前を商標登録する具体的なメリットとは?


冒頭で、「知名度の横取り防止には商標登録を」と述べましたが、商標登録をすると具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。詳しく解説します。


差別化


ひとつは、その者の同一性を明確にし、他の者と識別できる「差別化」のメリットです。


似た雰囲気を持つバンドやインフルエンサーが出てきても、商標で守られた名称があれば、他との混同を防ぎ、視聴者やファンに即座に認識してもらえる効果があります。


信用の保護


もうひとつは、信用の保護です。


商標制度は、商標を独占的に使用する権利を定めて保護する制度です。これによって、誰がその商品やサービスを提供しているのか「出所」を示すことにその中核的な機能があります。


よって、商標登録した名称が勝手に使われたり、これによってイメージが毀損されたりした場合は、法的な措置として差し止め請求や損害賠償請求ができます。また、登録された商標はインターネット上でも公開されますので、登録していること自体が抑止力にもなります



名前を商標登録する場合の区分は?


商標出願の際には、必ず指定商品ないし指定役務と区分を明示しなくてはなりません。これは、指定商品・役務が、商標法施行令に定められた45区分に振り分けられており、その範囲でひとつの商標権として権利行使できる仕組みになっているためです。


芸名やバンド名、インフルエンサー名は、一般的に以下のような「商品又は役務」を指定して商標出願を行います。


芸名・バンド名・インフルエンサー名


芸名、バンド名については、教育サービスの提供やイベント開催、娯楽サービスの提供を「役務」とする第41類。インフルエンサー名についても、インターネットを利用して行う映像の提供が第41類に含まれます。


馬名(おもちゃ・ゲームを想定)


馬名は、指定商品としておもちゃやゲームソフト等を含む第9類、オンラインゲームの提供が含まれる第41類で登録することが考えられます。


ライブ・コンサートグッズ


ライブやコンサートなどのイベントでグッズやポスターを販売したり、アパレル商品などに名前を使ったりするケースもあります。そのような場合に備えて、第16類「紙、紙製品及び事務用品」、第18類「革及びその模造品、旅行用品並びに馬具」、第25類「被服及び履物」など、広範囲にわたる特許の出願が必要になる場合もあります。


登録できない名前もある


商標登録できない名称もあります。以下の例は、登録拒否事由に該当し商標登録できません。

・同じ区分ですでに商標登録されている名称又はこれと類似している名称

・「バンド」などの普通名称

・本人の承諾なく他人(法人を含む)の名前、芸名、ペンネームを使用して作った名称


商標登録をスムーズに進めるためにも、登録したい名前が登録拒否事由にあたらないか、予め調査しておくとよいでしょう。



まとめ


今回は、芸名、バンド名、インフルエンサー名、馬名の商標登録について解説しました。


商標登録をしておけば、安心して名前を使い続けることができます。ただ、区分及び指定商品・役務の選択や登録拒絶事由の該当性を適切に判断し、スムーズに手続きを進めるには、専門知識が必要になります。


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