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「商標法」と「不正競争防止法」の違い・関係とは?

商標法と不正競争防止法は、知的財産権の保護を目的とする法律です。どちらも、商標や商品名の表示を保護することで事業者の業務上の信用を守るためのものですが、これら2つの法律はどのような関係にあるのでしょうか。


ここでは、「商標法」と「不正競争防止法」それぞれの法律の保護対象や権利行使の条件の違いに触れながら、商標法と不正競争防止法の関係について解説します。



商標法・不正競争防止法とは

商標法と不正競争防止法の関係を理解する前提として、これら2つの法律の概要と相違点について解説します。


商標法とは

商標法は、商品名やブランド名、ロゴマークなどの「商標」を保護することで、業務上の信用維持を図ろうとする法律です(商標法第1条参照)。


商標法の保護対象となる「商標」とは、商標権者により出願され、特許庁による審査を経て登録された登録商標のみで、登録されていない商品名やブランド名、ロゴマークなどは商標法では保護されません。


また、出願の際に、商標権の対象となる商品ないし役務(サービス)を指定して出願する必要があり、登録される商標権が及ぶ範囲もその指定により変動します。


例えば、花王株式会社の「アタック」という洗濯洗剤の商品名は、「第3類:洗浄剤、化粧品」を指定して商標登録されており、その商品について商標権が発生しています。したがって、洗浄剤や化粧品に「アタック」というネーミングを用いると商標権侵害になりますが、例えば、類似しない商品である「第13類:護身用スプレー」に同じネーミングを用いてもその商標権を侵害しないと考えられます。


商標権の侵害があった場合は、商標権者は当該商標と同一または類似の商標を使用した者(侵害者)に対して、商標使用の禁止や損害賠償を求められます。損害賠償が認められるには、侵害者に過失があることが要件となります。もっとも、商標法では侵害者の過失が推定される(第39条)ため、商標権者側で過失を証明する責任はありません。


不正競争防止法とは

不正競争防止法は、不正競争にあたる行為を規制して、事業者の公正な競争を確保することを目的とする法律です(不正競争防止法第1条)。


同法第2条1項各号には、「不正競争」にあたる行為が列挙されています。それらの行為のうち次の2つの行為は、その保護範囲が商標法と重なる部分があります。


  • 1号「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し(略)他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」

  • 2号「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、(略)提供する行為」


1号では「周知表示混同惹起(じゃっき)行為」が規制されており、2号では「著名表示冒用行為」が規制されています。いずれも商標などの商品等表示に対する業務上の信用を保護しようとする規制です。


しかし、不正競争防止法では、商標登録などを前提とせずに、不正競争にあたる「行為」さえあれば、当該行為の禁止や損害賠償を求めることができます。


一方で、商標法のような「過失の推定」はされないため、訴える側の原告が、被告の過失につき立証責任を負うことになります。



商標法と不正競争防止法の関係

商標法と不正競争防止法は、特別法と一般法の関係にあります。また、権利行使のための要件が異なるため、相互に補完し合う関係にあるとも言えます。


一般法と特別法の関係

広く不正競争行為を規制する不正競争防止法と、登録された商標につき指定された商品・役務の範囲内で権利保護を図る商標法とは、いわゆる一般法と特別法の関係にあります。


したがって、商標権侵害が認められないケースでも、不正競争防止法に基づき行為の禁止や損害賠償が認められる余地があります。例えば、次のようなケースを見てみましょう。

X社がAという商品を開発・販売したところ、予想外に一大ブームを巻き起こす商品となった。X社がAの商標未登録のまま生産・販売に追われているうちに、商標未登録であることを知ったY社が、同じ商品名の競合商品を格安で販売したため、X社の商品の売り上げは激減した。

このような場合、X社はAにつき商標権を持たないことから、商標法の保護対象にはなりません。しかし、Y社の行為が「周知表示混同惹起(じゃっき)行為」ないし「著名表示冒用行為」にあたることを立証できれば、X社はY社に対して不正競争防止法に基づき同じ商品名の使用差止めを求められます。


補完関係

不正競争防止法で保護される余地があるとはいえ、侵害者の行為が「周知表示や著名表示にあたるかどうか」(周知性の要件・著名性の要件)、さらには「故意または過失があるかどうか」の立証は容易ではありません。


他方、商標登録さえしておけば、相手方が自社商標と同一ないし類似の商標を指定商品・役務と同一又は類似の商品・役務に使用していることを立証するだけで商標権侵害が認められます。不正競争防止法上では認められない請求も、商標法上では認められることになります。


こうした点を踏まえると、不正競争防止法と商標法は、相互に補完し合う関係にあるとも言えます。立証の難しい不正競争防止法に過大な期待を抱くのではなく、両方の法律に基づき保護を図れるよう、備えておくと安心です。



まとめ

今回は、商標法と不正競争防止法の関係について解説しました。いずれの法律も、商標や商品等の表示に対する業務上の信用保護を目的としており、侵害者に対する差止め請求や損害賠償請求の根拠となり得る法律です。


もっとも、登録商標を限定的に保護する商標法と、不正競争を広く規制する不正競争防止法とでは、保護対象や権利行使の条件が異なります。いずれの法律に基づくアプローチもとれるよう、商標登録をはじめとする権利保護のための体制を整えておきましょう。


井上国際特許商標事務所では、商標登録の手続き代行から知的財産権侵害への対抗措置まで、様々なご相談をお受けしています。ぜひ一度、ご相談ください。


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