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税関差止申立ての手順とコツ―模倣品を水際で止める最新実務

  • 執筆者の写真: Eisuke Kurashima
    Eisuke Kurashima
  • 5 日前
  • 読了時間: 7分

近年、海外から流入する模倣品は巧妙化し、企業のブランド価値や消費者の安全を脅かす深刻な問題となっています。それらの模倣品を国内へ入れないために、権利者が水際で活用できる実務ツールが「税関差止申立て」です。


今回は、税関差止申立ての仕組みから手続の流れ、実務上のポイントまでを詳しく解説します。



税関差止申立てとは


税関差止申立ては、権利者が自身の知的財産権を侵害するおそれのある貨物の輸出入を差し止め、認定手続を行うよう税関に申し立てる制度です。


なかでも、輸入差止申立ては、模倣品が国内に流入するのを水際で阻止するための強力な制度となっています。


申立ての対象となる権利

税関差止申立ての対象となる権利は、商標権、著作権、特許権、実用新案権、意匠権、育成者権、原産地名称表示(地理的表示)といった知的財産権です。


模倣品の例

具体的な模倣品の例としては、以下のようなものが挙げられます。


  • ブランドロゴなどを無断で使用した衣類、バッグ、時計など。

  • 違法コピーされたDVD、書籍、ソフトウェアなど。

  • 模倣品の製造に用いられた技術やデザインを侵害するもの(ただし、権利行使には制限がある場合も)。

  • 産地を偽装したワインやチーズなど。



税関差止申立ての手順


ここからは、税関差止申立てを行うための手順を解説します。


事前準備(権利の確保と証拠収集)

税関差止申立ての前提として、まず、模倣品が侵害している知的財産権が何かを確認する必要があります。


具体的には、商標権、著作権、特許権、実用新案権、意匠権、原産地名称表示(地理的表示)といった権利が日本国内で有効に存続していることを確認し、権利の存在を証明する書類(特許証、登録証など)を準備することが第一歩となります。


さらに、権利侵害を立証するための証拠収集も不可欠です。


具体的には、模倣品と真正品を比較した写真や、模倣品が流通している事実を示す情報など、模倣品が自らの権利を侵害していることを示す客観的な資料を収集しましょう。これらの事前準備を丁寧に行うことで、税関差止申立ての成功率を高められます。


また、税関では、権利者が税関差止申立ての手続きを迅速に行えるよう、事前相談を受け付けています。相談窓口や必要書類については、財務省のウェブページを参照してください。


差止申立ての一般的手順|財務省関税局


申立て書類の作成と提出

税関差止申立てにおいては、申立て書類が権利保護の意思表示となり、税関が差止めの判断を下す上での根拠となります。したがって、正確かつ詳細な書類の作成と提出がきわめて重要です。


申立てに必要な主な書類は、以下の通りです。



申立書の記載にあたっては、権利内容を明確に特定し、侵害を受けている(または受けるおそれのある)貨物の情報、そして権利侵害の具体的な状況を、客観的な証拠とともに記載しましょう。とくに、模倣品と真正品を識別できる特徴や侵害態様を具体的に示すことで、税関での審査を円滑化できます。


形式審査

権利者からの税関差止申立てを受け、税関は、記載事項と添付書類を確認して受理か不受理かを判断する形式審査を行います。


形式審査の結果、申立てが受理されれば、申立情報は全国の税関での取締りに活用されます。なお、受理された申立ての有効期間は最長4年で、更新も可能です。



申立てから差止めまでの流れ


税関差止申立てが受理されると、税関での取締りに活用されます。例えば、侵害の疑いのある疑義貨物が輸入されそうになった場合、税関はその貨物を留置し、認定手続に移行します。


認定手続きの流れは、以下のとおりです。


  1.  税関が権利者と輸入者に通知する。

  2.  権利者は、権利の存在・範囲・識別ポイントなどを示す意見書と証拠を税関に提出する。輸入者は、(権利者の)権利不存在や侵害非該当性を主張・立証する。

  3.  税関は、両者から提出された資料に基づき侵害の有無を判断する。侵害があると判断した場合は、輸入を差し止める(没収などの措置を講じる)。侵害がないと判断した場合は、輸入を許可する(留置を解除する)。


なお、あらかじめ権利者から「輸入差止申立て」があり、これが受理されていた場合は、②の段階で輸入者から争う旨の書面の提出がなければ、権利者による証拠・意見の提出が不要となる簡素化手続きがとられます。



税関差止申立てを成功させるためのコツ


税関差止申立てを成功させるためには、いくつかのコツがあります。


権利の明確化と証拠の質

まずは、権利の明確化と証拠の質が重要です。申立ての際に提出する書類には、ロゴの細部や材質、品質基準など、模倣品と真正品を明確に識別できる情報を詳細に記載しましょう。また、商標権登録証、意匠登録証、製造委託契約書など、有効な知的財産権の立証に必要な客観的証拠を提出することも重要です。


申立て書類の精度向上

申立て書類には、具体的かつ客観的な根拠を示しながら、権利内容と侵害態様を詳しく記載しましょう。必要に応じて弁理士などの専門家のアドバイスを得ながら、申立て書類の精度を高めることが、結果として、円滑な水際対策につながります。


税関との円滑な連携

税関との円滑な連携も重要です。差止対象となりうる貨物に関して継続的に情報交換を行うとともに、税関から照会があった場合は、迅速かつ的確な情報提供を行いましょう。



模倣品対策における最新実務動向


近年、模倣品による被害は深刻化しています。これに対抗するために、税関の対応能力向上や、権利者への情報提供の迅速化が進んでいます。また、各国の税関当局間での情報共有や連携も強化され、国際的に模倣品流通ルートの遮断を目指しています。


近年の模倣品被害の傾向と特徴

模倣品による被害は巧妙化・多様化しており、なかでも、インターネットを通じた販売チャネルの拡大は、模倣品を流通させる一因となっています。近年の模倣品被害の傾向と特徴としては、以下のような点が挙げられます。


  • 被害品目の多様化:アパレル、ブランド品といった従来からの品目に加え、医薬品、化粧品、玩具、電子機器など、生活に密着した製品における模倣品の流通が増加しています。

  • 巧妙化する手口:製品の品質だけでなく、パッケージやロゴデザインまで精巧に模倣され、一般消費者が真正品と見分けにくくなっています。また、SNSやオンラインマーケットプレイスなどを悪用した販売が増加し、追跡が困難になっています。

  • 安全・健康への脅威:医薬品や化粧品、玩具などの模倣品は、品質管理がなされていないため、健康被害や事故につながるリスクが高まっています。


これらの傾向を踏まえ、自社製品が模倣品の被害に遭わないよう、水際での阻止策を強化していく必要があります。


水際取締りの強化

模倣品被害の深刻化を受け、税関における水際取締りも強化されています。具体的には以下のような取り組みが進められています。


  • 差止申立て制度の活用促進:知的財産権者が、模倣品情報を税関に提供し、差止申立てを行いやすくする。

  • 税関職員の専門性向上:模倣品を見抜くための研修の実施や、最新の模倣品情報共有体制の構築。

  • 関係機関との連携強化:警察や関係省庁、海外の税関との情報交換や捜査協力の推進。

  • AI・IT技術の活用:貨物検査におけるAI分析の導入や、情報分析能力の向上。

  • 権利者との協力体制の強化:権利者からの積極的な情報提供や、税関との共同パトロールの実施。

  • 罰則の強化:模倣品の製造・販売・輸入に対する罰則が厳格化され、抑止力が高まっています。

  • 国際協力の推進:各国の税関当局間での情報共有や連携が強化され、国境を越えた模倣品流通への対応能力が向上しています。


まとめ


模倣品による被害は、企業のブランドイメージ低下や収益減だけでなく、ときには消費者の安全を脅かす深刻な問題です。


このような被害を防ぐには、知的財産の権利者が主体的に対策を講じる必要があります。商標登録や意匠登録といった権利登録を前提に、最新動向を踏まえた監視体制を強化し、税関差止申立てを活用した模倣品の水際対策に努めましょう。


井上国際特許商標事務所には、知的財産権に関する知識と経験が豊富な弁理士が所属しています。ぜひご相談ください。




 
 
 

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