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デザインに関する特許の取り方と特許が取れない場合の対策

更新日:4 日前



私たちの身の回りの物には、さまざまなデザインがほどこされています。


例えば靴の裏のデザインは、視覚的な効果だけでなく、凸凹状の模様で「靴を滑りにくくする」ためのアイデアも含まれています。このような、デザインにアイデアが含まれているケースでは、外観デザインの意匠登録だけでなく、デザインに関する特許を取得できる可能性もあります。


今回は、そんな「デザインに関する特許」の取り方を解説します。さらに、特許を取得できなかった場合の対策についても触れますので、ぜひ最後までお読みください。



デザインに関する特許とは?


デザインに関する特許を解説する前提として、特許権について確認しておきましょう。特許権とは、発明(=アイデア)を使って独占的に製品を製造したり販売したりできる権利です。特許権は、特許法に規定されています。


一方、「意匠」とは物品などの外観デザインことで、「意匠権」は意匠登録を受けることで付与される意匠法上の権利です。


デザインに関する特許を取得するには、そのデザインに特許法で保護されるべき発明が含まれている必要があります。つまり、デザインに何らかの技術的なアイデアが含まれている場合にのみ、特許法上の保護の対象となるのです。


ちなみに、米国の特許制度では、Design Patent(意匠特許)と呼ばれる分野があります。米国の知的財産制度では、意匠法が存在しない代わりに、デザインを保護する特許があるのです。



デザインに関する特許を取得するための手順


では、日本の知的財産制度において「デザインに関する特許」を取得するには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。順に解説していきます。


1.デザインに何らかの技術的なアイデアが含まれているか確認する

まずは、特許を取得したいデザインに何らかの技術的なアイデアが含まれているかを確認します。


例えば冒頭の「靴裏のデザイン」は、単なるデザインにとどまらず、凸凹状の模様で靴裏を滑りにくくするためのアイデアとも言えます。


実際にこれまで企業が取得した特許の中にも、デザインにアイデアが含まれる例がいくつもあります。


事例1:ゴルフボールのディンプル


こちらは、株式会社ブリヂストンのゴルフボールの球面に配置されたディンプルのデザインです。このデザインは、美的な外観を向上させると同時に、飛び性能を向上させるアイデアであるため、特許が認められています。


事例2:ゴルフボールの2層構造


こちらも同社のゴルフボールの例です。2層構造のカラフルなデザインのゴルフボールについて、ファッション性と高級感を維持しながら、傷のつきにくい構造を実現したアイデアとして特許を取得しています。



2.発明を特定する

デザインを意匠登録するには、図面や写真で意匠を特定しますが、アイデアにつき特許を取得するには、物の構造要素を基本的に文書で特定する必要があります。


したがって、デザインのうちのどの仕組みが「発明」にあたるのか、デザインに含まれるアイデアの構造要素を文章で言語化できるようにしておきましょう。


3.発明が特許法の要件を満たすか確認する

特許を取得するには、特許法に定められた要件を満たす必要があります。発明の要件はいくつかありますが、特に重要な要件が「新規性」と「進歩性」です。


新規性とは、対象となる発明が「客観的に見て新しい創作技術であること」です。そして進歩性とは、「その分野の専門家を基準として、容易に創作できる発明でないこと」です。


新規性や進歩性は、過去の判例などを踏まえて判断される専門性の高い要件です。特許権の申請に先立ち、要件該当性についてあらかじめ専門家に相談しておくことをおすすめします。


4.アイデアについて特許権の申請をする

ここまで準備ができたら、いよいよアイデアについて特許権を申請する段階へと進みます。特許権の申請手続きについては、こちらの記事をご覧ください。




デザインに関する特許を取得できない場合は?


デザインにアイデアが含まれていない場合や、特許法上の「発明」に該当しない場合は、意匠登録や商標登録など、他の知的財産権で権利を保護できる可能性があります。


意匠登録を申請する

デザインが模倣されやすかったり、商品の「顔」の役割を担っていたりするケースでは、特許取得の可否に関わらず意匠登録を申請することをおすすめします。


事例:新幹線の車両デザイン


例えば、新幹線の車両デザインはアイデアとしての性質も兼ね備えていますが、模倣されやすいデザインであるため意匠登録されています。


商標登録を申請する

商標登録で権利保護をはかる方法もあります。


事例:おさかなスポンジ


例えば、生活雑貨メーカーの株式会社マーナは、手になじみやすくコップの底まで洗いやすい魚の形状をした食器洗い用スポンジ「おさかなスポンジ」を、立体商標として登録しています。



まとめ

特許を取得できるかどうかは、デザインに技術的なアイデアが含まれるか、そのアイデアは特許法上の要件を満たすかが決め手になります。


要件該当性の判断や先行特許の調査、特許が認められやすい申請書類の書き方など、特許取得にはさまざまな専門的な知見を要します。また、デザインに関する権利を保護する方法としては、特許だけでなく意匠登録や商標登録といった方法もあります。


井上国際特許商標事務所は、デザインに関する権利保護に必要な知見と豊富な出願経験を有しています。スピーディなレスポンスで最適な手段をご案内しますので、ぜひ一度ご相談ください。


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