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メタバースの知的財産権|アバターやアイテムの著作権・商標権・意匠権における注意点とは

  • 執筆者の写真: Eisuke Kurashima
    Eisuke Kurashima
  • 7月10日
  • 読了時間: 6分
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没入感のある仮想空間「メタバース」は、ゲーム、エンターテイメント、ビジネスなど、さまざまな分野で活用が進んでいます。


多大な可能性を秘めたメタバースは、その自由度の高さから、現実世界と同様に、あるいはそれ以上に知的財産権に関する複雑な問題が発生しやすくなっています。


ここでは、メタバースにおける知的財産権の基礎知識とトラブル対策について解説します。



メタバースとは? 法律の整備が進む新たな経済圏


メタバースとは、「Meta(超)」と「Universe(宇宙)」を組み合わせた造語で、インターネット上に構築された仮想空間のことです。利用者は、アバターとして空間内を自由に移動し、他の利用者と交流したりイベントに参加したり、コンテンツを作成・売買したりすることができます。

メタバースのプラットフォームでは、仮想ライブやイベントの開催、仮想店舗でのショッピング、仮想空間での会議や研修、デジタルアートやアイテムの作成・販売など、さまざまな活動が行われています。


近年は、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術の進化、5G通信の普及などにより、現実世界と仮想空間の境界が一層あいまいになり、私たちの生活や経済活動に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。一方で、この新たな空間における法的課題、とりわけ知的財産権の取り扱いについて、整備が追いついていないのが現状です。



メタバースで注意すべき3つの知的財産権

メタバース空間では、さまざまな知的財産権が関わってきます。なかでも問題となりやすいのは、コンテンツやアバターに関連する「著作権」と、仮想空間内の名称やアイテムに関連する「商標権」です。


①著作権:アバターやUGC(ユーザー生成コンテンツ)は誰のもの?

著作権とは、創作的な表現(著作物)に対して著作者に与えられる権利であり、著作権者は、他者による著作物の無断利用を制限できます。


仮想空間における主な著作物としては、以下のようなものが考えられます。


  • アバターのデザインや動き

  • 仮想空間内の建築物やオブジェクト

  • ユーザーが作成・アップロードした画像、音楽、動画

  • イベントの演出やスクリプト


これらの著作物を、権利者の許諾なく複製、改変、公衆送信(アップロードや展示)することは、著作権侵害となる可能性があります。とくに、ユーザー生成コンテンツ(UGC)が活発なメタバースでは、意図せず他者の著作物を侵害してしまうリスクが高まります。


このため、メタバース内で何かを創作したり、他者のコンテンツを利用したりする際は、その表現が誰かの著作権を侵害していないか十分に注意する必要があります。


②商標権:有名ブランドのロゴや名称を無断で使うリスク

商標権は、商品やサービスに使用される名称やロゴなどの標識について、商標権者が独占的に使用できる権利です。メタバース空間では、仮想空間内の名称やアイテム名、サービス名などが商標権の対象となり得ます。


例えば、有名なブランド名や商品名を無断で仮想アイテム名に使用したり、現実世界の店舗のロゴを無断で仮想空間内の建物に表示したりする行為は、商標権侵害となる可能性があります。


③意匠権・不正競争防止法:アイテムデザインの模倣は違法?

メタバース空間では、意匠権や不正競争防止法なども問題となる場合があります。


意匠権とは、物品の形状、模様、色彩など視覚を通じて美感を起こさせるデザインを保護する権利です。デザインである以上、仮想空間におけるアバターのコスチューム、アイテムの形状、建築物のデザインなどが意匠権による保護を受けるかどうかが問題となります。しかし、意匠権はあくまで「物品」のデザインを保護する権利であるため、現行法下では保護対象外となる可能性が高いと言えます。


また、不正競争防止法による保護も考慮すべきです。不正競争防止法は、他人の商品等の表示(商品や営業の表示)として広く認識されているものと同一・類似の表示を使用する行為などを規制する法律です。現実の著名なブランドや商品のデザインを模倣し、消費者に誤認させるような仮想アイテムを提供する行為は、不正競争防止法違反にあたる可能性があります。



メタバースでの知的財産権トラブルを防ぐには?

メタバースにおける知的財産権トラブルを防ぎ、適切に利用するためには、ユーザーとプラットフォーム提供者の双方が対策を講じる必要があります。


【ユーザー向け】自分の権利を守り、他者の権利を侵害しないために

自身が作成したコンテンツ(空間、アバター、アイテムなど)には、原則として著作権が発生します。これは、自身の創作物を守る大切な権利です。もし、自身のコンテンツが誰かに無断で利用された場合は、プラットフォームの通報機能などを利用し、速やかに運営者に報告しましょう。必要に応じて、弁理士や弁護士などの専門家に相談することも検討してください。


一方で、他のユーザーや企業が作成・所有するコンテンツを利用する際には、その権利に配慮する必要があります。具体的には、以下のような点に注意しましょう。


  • 既存コンテンツの無断利用は行わない。

  • プラットフォームの利用規約を確認する。利用規約には通常、コンテンツの作成、アップロード、共有に関するルールが記載されています。権利侵害に関する対応方法も確認しておきましょう。


これらの点を理解し、他者の権利を尊重して行動することが、メタバースにおけるトラブルを防ぎ、誰もが安心して楽しめる空間づくりにつながります。


【プラットフォーム事業者向け】利用規約で明確にすべきこと

メタバースプラットフォームを提供する事業者は、利用規約等で権利関係を明確にすることが重要です。ユーザーがどのようなコンテンツを作成・利用できるのか、権利帰属はどうなるのかなどを分かりやすく示す必要があります。


具体的には、以下の事柄を定めておくとよいでしょう。


  • コンテンツの権利帰属: UGCの権利が誰に帰属するのか(ユーザーか、プラットフォームか、共有かなど)を明確に示します。

  • 利用許諾範囲: プラットフォームがユーザーのコンテンツをどのように利用できるか(表示、複製、改変、配布など)の範囲を具体的に定めます。また、第三者の知的財産権を侵害する行為を明確に禁止し、具体的な侵害例を挙げることも有効です。

  • 責任範囲: 知的財産権侵害が発生した場合の、プラットフォームおよびユーザーそれぞれの責任範囲を定めます。


また、侵害コンテンツへの対応フローを整備し、迅速かつ適切な対応ができる体制を構築することも重要です。さらには、可能な範囲で、既知の侵害コンテンツや不正なアップロードを防ぐ技術導入も検討しましょう。



まとめ

メタバース空間では、UGCや仮想アイテム、アバター表現などをめぐり、著作権や商標権が問題となり得ます。


知的財産権侵害を防ぐためには、ユーザー側とプラットフォーム提供者側双方の理解と対策が求められます。健全なメタバースを維持・発展させるためにも、メタバースにおける知的財産権の理解と知識のアップデートに努めることが重要です。その上で、トラブル回避のための適切な対策を講じましょう。


井上国際特許商標事務所には、知的財産権に関する知見が豊富な弁理士が所属しています。メタバースにおける知的財産権をめぐるリスク予防や権利保護にお悩みの方は、ぜひご相談ください。


 
 
 

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