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ドメイン取得時に商標トラブルを回避する方法とは?

更新日:8月7日

日常やビジネスにおけるインターネット利用が当たり前になったいま、会社や個人がドメイン名を取得し、Webサイトを開設することもめずらしくありません。


ドメイン名とは、「インターネット上の住所」を分かりやすい文字列で表したものです。この文字列を決める際に見落とされがちな問題が、商標権の侵害です。


今回は、ドメインを取得する上で注意したい商標トラブルとその回避方法について解説します。



商標権侵害を注意すべきケース

ドメインとは、「インターネット上に存在するWebサイトの住所」のようなもの。有料で任意のドメインを取得する際、ドメインの文字列を自ら指定します。


例えば、当事務所のWebサイトのドメイン名は「https://www.inoue-patent.com」です。このドメイン名の「inoue-patent」が、もし他者の商標(文字商標)と同一または類似であれば、商標権の侵害となる可能性があります。


もっとも、「inoue-patent」には商標の識別力がない(商標法第3条)ため、そもそも商標登録ができません。よって、当Webサイトのドメイン名に関しては、他者の商標権を侵害する心配はありません。


このように、ドメイン名に含まれる文字列がいわゆる「ありふれた氏・名称」である場合や、すでに自社で取得している商標である場合には問題ありません。


しかし、一般的にドメイン名を取得する際には、他者の商標権を侵害しないよう、注意が必要です。具体的には、ドメイン名「www.×××.com」の「×××」部分が他者の商標と同じだったり類似していたりしないか、最初に確認しておく必要があります。



商標の識別力に関する記事はこちら


商標権を侵害した場合の法的リスクと判例

ドメイン名に他者の商標と同一又は類似の文字列が含まれている場合、商標権侵害にあたる可能性があります。


ある文字列が商標として登録されたら、商標権者以外は、商標登録の際に指定した商品・サービスについて、これと同一又は類似の文字列を、商標権者の許諾なく使用できなくなります。そして、商標権者は、無断でその商標を使用した第三者に対して、法的に使用の差し止めを求める差止請求ができます。


実際に、商標権者である原告からの差止請求を受けて、被告にドメイン名の使用差し止めを命じた裁判例も複数あります。


商標権侵害のデメリットは、ドメイン名を使用できなくなるだけではありません。場合によっては、損害賠償や信用回復措置(謝罪広告の掲載など)を求められるなど、経済的なリスクもはらんでいます。そのため、ドメイン名を取得する前に「他者の商標権を侵害していないか」を漏れなく確認しておく必要があります。


▼ドメインの使用差し止めを命じた裁判例


東京地判平成29年(ワ)第3428号



ドメイン名による商標権侵害を回避するための対策

では、ドメイン名による商標権侵害を回避するために、どのような対策をとるべきでしょうか。ここでは、主な回避方法を2つ紹介します。


ドメイン名を取得する前に「商標調査」を行う

ドメイン名を取得する前に、まずドメイン名に含まれる文字列、「www.×××.com」の「×××」部分と同じあるいは類似する商標が登録されていないかを調査しましょう。 すでに登録された商標かどうかを調べることを「商標調査」と言います。商標調査には、特許情報プラットフォーム(通称「J-PlatPat」)の簡易検索機能が便利です。


▼特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で商標調査をする手順

J-PlatPatのWebページを開くと、簡易検索画面に「四法全て」「特許・実用新案」「意匠」「商標」と4種類の検索サービスが並んでいます。これらのうち、「商標」にチェックをつけた上で、検索窓に調べたい文字列を入力します。


例えば、「www.joyfull.ne.jp」というドメイン名の取得を検討している場合、調べたい文字列は「joyfull」です。


まずは、検索窓に「joyfull」を入力して検索しましょう。



検索結果を見ていくと、レストランチェーンの株式会社ジョイフルが「Joyfull\Restaurant」(登録番号第3008977号)の商標を取得しています。


呼称欄には「ジョイフルレストラン」「ジョイフルレストラント」のほか、「ジョイフル」も記載されています。



調査の結果、取得を検討していたドメイン名に含まれる「joyfull」に見た目や読み方が酷似している商標が存在していることが分かります。この登録商標では「西洋料理を主とする飲食物の提供」が指定されていますので、飲食店で「www.joyfull.ne.jp」というドメイン名は避けたほうが良いと結論づけられます。


このように、専門家でなくとも、簡易な商標調査であれば可能です。


しかし、検索ワードの選択やしぼりこみ、類似性の判断などを適切に行うには、専門家の知識とノウハウが欠かせません。商標権侵害を確実に回避するには、事前調査の段階から専門家に相談することをおすすめします。


▼ドメイン名の一部を商標登録しておく

事前の商標調査を経てドメイン名を取得したとしても、取得後に商標権侵害が発生する危険性は残ります。


商標登録は、先に商標申請をした人に商標権が認められる「先願主義」です。そのため、ドメイン名を取得した後に、第三者がドメイン名に含まれる文字列と同一又は類似の商標を登録申請し、商標登録してしまった場合は、その第三者が商標権者となります。


このケースでは、商標が含まれるドメイン名を使用している側が、商標権を侵害している状態になってしまいます。こうした事態を避けるために、ドメイン名に含まれる主要ワード、「www.×××.com」の「×××」部分だけでも、先に商標登録しておくことをおすすめします。


▼Webサイトにドメイン名を表示するなら全体を商標登録しておく


ある文字列をドメイン名の一部に使用するだけでなく、ドメイン名全体をロゴのようにしてWebサイトに表示したい場合は、ドメイン名全体を商標登録しておきましょう。


例えばこちらは、引越手続き.com株式会社のWebサイト(https://hikkoshi-tetsuzuki.com/)です。



同社は、「引越手続き.com(ヒッコシテツズキドットコム)」というドメイン名全体を、ロゴ商標として商標登録しています。



Webサイトへドメインの表示を想定している場合は、単にドメイン名で使用する場合と比べて、より厳格な商標調査を行いましょう。


また、他者に真似されたり、先に商標登録されたりすることを防ぐためにも、あらかじめ商標登録を済ませてからWebサイトに表示するようにしましょう。



まとめ


ドメイン名を取得する際は、ドメイン名の使用が他者の商標権侵害にあたらないかどうかを事前に調査しておくことが大切です。また、ドメイン名を公開する前に、ドメイン名の一部や全体を商標登録しておくと安心です。


どの範囲でいつまでに商標登録すべきかの判断は、事案によって異なります。漏れのない商標調査から商標登録完了までをスムーズに行うには、専門家に相談することをおすすめします。


井上国際特許商標事務所では、商標の登録状況の調査を無料で承っています。商標出願・登録実績も豊富にございます。ぜひお気軽にご相談ください。


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