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特許の共同出願契約とは? 決め方や意義、実施における注意点などを解説します

  • 執筆者の写真: Eisuke Kurashima
    Eisuke Kurashima
  • 3月10日
  • 読了時間: 6分

複数の企業ないし個人の共同開発から生まれた発明については、共同で特許を出願できます。そして、特許の共同出願に際して共同開発者間で結ばれる契約が、共同出願契約です。


今回は、特許の共同出願契約の意義から、定めるべき条項、注意点までを一挙に解説します。



特許の共同出願契約の意義


特許の共同出願契約とは、共同出願者の間で合意を交わす契約のことです。まずは、前提として「特許の共同出願」のメリットを確認したうえで、「共同出願契約 」の必要性について解説します。


特許の共同出願のメリット

特許の共同出願とは、2名以上の出願人が共同で特許を出願することを指します。複数当事者による開発は、それぞれの強みを活かしてより大きな成果を生み出す有効な手段です。


そして、共同開発によって生まれた発明の共同出願には、次のようなメリットがあります。


  • 資金面:出願にかかる手数料をはじめとする費用負担を軽減できる。

  • 開発面:共同出願した特許技術を継続的に共同でブラッシュアップし、発明の完成度を高められる。


共同出願契約の必要性

このようなメリットがある一方で、特許の共同出願にはリスクもあります。例えば、貢献度に応じた適切な権利配分がなされなかったり、費用負担をめぐる意見の相違が生じたりする可能性も否定できません。


先ほど挙げたメリットも、一歩間違えば次のようなデメリットに転じかねません。


  • 資金面:費用負担の認識にずれが発生する可能性がある。

  • 開発面:発明の方向性や内容について意見が対立する可能性がある。


加えて、共同出願した特許の利用や処分が過度に制限されるおそれもあります。


このようなデメリットを最小化し、円滑な共同出願を実現するために重要となるのが共同出願契約です。共同出願契約を締結することで、費用負担、権利の持分、発明の実施などに関するトラブルを未然に防ぎ、円滑な共同出願を実現することができます。



共同出願契約の目的と法的根拠


次に、共同出願契約の目的と法的根拠を解説します。


共同出願契約の目的

共同出願契約の目的は、共同出願に伴う権利義務関係を明確化し、将来発生しうる紛争を未然に防ぐことにあります。口約束だけでは「言った」「言わない」の水掛け論になりやすく、後々のトラブルに発展するおそれがあります。


しかし、契約書を作成しておけば、誤解や認識の相違を防ぎ将来的な紛争リスクを低減できます。また、契約書は当事者間で法的拘束力を持つため、共同出願契約を結んで権利義務関係を法的に安定させる狙いもあります。


共同出願の法的根拠

共同出願の法的根拠としては、民法上の「契約自由の原則」が挙げられます。これは、当事者の意思に基づいて自由に契約を締結できるという原則です。


共同出願契約も、この原則に基づき当事者間で自由に内容を決定できます。ただし、公序良俗に反する内容や法律で禁止されている内容の契約は無効となります。


また、特許法にも共同出願に関する規定が存在します。例えば、特許法第38条は、共同出願人が共有に係る持分を定めたときは、その持分に従い権利を行使すると規定しています。つまり、共同出願契約において権利の持分比率を定めることは、特許法が想定し認めている行為なのです。



共同出願契約に必須の7条項


共同出願契約では、後々のトラブルを防ぐために、最低でも次の7条項を盛り込みましょう。


  • 出願の対象

    • どのような発明を特許出願の対象とするか、その範囲を明確に定義します。

  • 権利の持分比率

    • 各出願人が発明にどの程度貢献したか、どの程度のコストを割いたかなどを踏まえて、権利の持分比率を定めます。

  • 出願・維持の手続き分担と費用負担

    • 特許出願や維持のための手続を当事者のどちらが担うのか、そして出願・維持にかかる費用をどのように分担するかを、規定します。

  • 特許発明の実施

    • 特許の共有者は、原則として他の共有者の同意を得ずにその特許発明を実施できます。実施を制限する場合は、実施できる範囲や条件を明確に規定します。

  • 第三者への実施許諾

    • 共同特許は、原則として共有者の同意なく第三者に譲渡・売却したり専用実施権や通常実施権を実施して第三者に使わせたりできません。例外的に認める場合は、第三者への実施許諾の可否や条件、得られた収益の分配方法を定めます。

  • 紛争解決条項

    • 紛争が生じた場合の解決手段(仲裁・調停など)を定めます。

  • 契約期間と終了事由

    • 契約期間、更新の条件、終了事由、終了後の権利帰属について規定します。


これらの条項を明確に定めておくことで、共同出願における権利関係や責任分担を明確化し、将来的な紛争を未然に防ぐことができます。記載がない場合は、特許法や民法の規定に従いますが、あいまいさが残ると後々トラブルに発展してしまいます。


ここに列挙した条項以外にも、将来の紛争可能性を予測しながら、確認的な条項も含めて明記しておくとよいでしょう。



共同出願契約締結の注意点

共同出願契約は、将来の紛争を予防し、円滑な共同開発を達成するための重要なプロセスです。内容によっては、専門家のアドバイスを求め、万が一トラブルが発生した場合に備えておかなくてはなりません。


専門家への相談が推奨されるケース

共同出願契約は、特許法、民法法など、複数の法律が関係する複雑なものです。専門家のアドバイスを受けることで、契約内容の妥当性を高め、将来のトラブルリスクを軽減できます。特に、以下のようなケースでは、専門家への相談が強く推奨されます。


  • 複雑な技術に関する特許出願の場合

  • 共同出願者の数が多く、利害関係が複雑な場合

  • 海外への特許出願を検討している場合


費用はかかりますが、後々のトラブルを考えれば、専門家への相談は必要不可欠な投資と言えるでしょう。安心して共同出願を進めるためにも、積極的に専門家を頼りましょう。


トラブル発生時の対応

共同出願契約においてトラブルが発生した場合、まずは契約書の内容に基づいて解決を図ることが重要です。契約書の条項を丁寧に確認し、当事者間で協議を行い合意形成を目指します。


しかし、当事者間での協議が難航する場合や、契約書の解釈に争いがある場合は、まずは弁理士などの専門家に相談しましょう。協議や専門家への相談を経ても解決に至らない場合は、仲裁(ADR)、調停、訴訟といった法的措置を検討することになります。


もっとも、法的措置は時間と費用がかかるため、最終手段として考慮すべきです。早期解決のためには、事前の予防措置として、契約締結時に専門家に相談し、明確かつ詳細な契約書を作成することが重要です。



まとめ

特許の共同出願は、複数の発明者が協力し合って効率的に大きな成果を生むための有効な手段です。しかし、共同出願に伴う権利や義務、費用負担などを明確にしておかなければ、後々紛争に発展するリスクがあります。


円滑な共同出願を実現するには、共同出願者間で予め十分に協議し、相互理解を深めたうえで、契約書によって権利関係を明確に定めておきましょう。契約条項の内容や文言に不明な点があれば、専門家に相談して適切なアドバイスを受けることも大切です。


井上国際特許商標事務所では、特許出願の経験豊富な弁理士が、お客様の事情に合ったアドバイスをいたします。ぜひお気軽にご相談ください。


 
 
 
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