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「ロゴ商標」と「文字商標」 違いや取得すべき商標の見分け方とは?

更新日:5月12日


商標には、ロゴ商標や文字商標などさまざまな種類がありますが、どの種類の商標を取得すべきかを、どのようにして見極めればよいのでしょうか。


ここでは、商標の種類や、ロゴ商標と文字商標それぞれのメリット・デメリットを解説するとともに、ロゴ商標と文字商標の違いや、取得すべき商標の見分け方について解説します。取得すべき商標を判断する上での参考にしてください。


商標とは?

商標とは、企業などが自社の商品・サービスを他社のものと区別するために使用するマークのことです。 商標は企業にとって自社の商品・サービスとブランドイメージとを結びつける象徴的な役割を担います。同時に、消費者にとっては、その企業への信用や安心感をもとに商品・サービスを選ぶ上での目印になります。 このように商標制度は、企業の自社商品・サービスにひもづくブランドと、当該ブランドに対する消費者の信用の両方を守る役割を果たしています。


商標の種類

商標法では、商標の種類について「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」(商標法第2条第1項柱書)と定めています。


商標には、文字、図形、記号、立体的形状などさまざまな種類があります。ひとつずつ説明していきましょう。


1.文字商標

文字商標は文字だけで構成される商標です。ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字、数字などの「文字」で表される商標がこれにあたります。


また、文字商標の中でも、特許庁長官があらかじめ定めたフォントを使用し、フォントにデザインがほどこされていない文字商標を「標準文字商標」と呼びます。


文字商標の例



標準文字商標の例


2.図形商標




図形商標は、写実的なものを図案化した商標や、幾何学模様などの図形だけで構成される商標です。


よく知られた例では、クロネコヤマトの猫の親子を図案化したロゴや、カメラを模したインスタグラムのロゴなどがあります。


3.記号商標

記号商標は、暖簾(のれん)記号や文字を図案化して組み合わせた記号や記号的な紋章を指します。三菱グループの3つのひし形が集まったスリーダイヤ・マークなどは、記号商標の典型例です。




4.結合商標

出典:

出典:


結合商標は、文字、図形、記号、立体的形状などの2つ以上を組み合わせた商標です。異なる意味合いをもつ文字と文字を組み合わせた商標も、結合商標の一種です。


結合商標の例を挙げればきりがありません。KFCのロゴは、バケツ型の容器(バーレル)とカーネル・サンダースの似顔絵を図案化した図形に「KFC」の文字を組み合わせた結合商標ですし、ナイキのロゴは、スピード感を表現した記号に「NIKE」の文字を組み合わせた結合商標です。


その他の商標


文字商標、図形商標、記号商標、結合商標の他にも、立体商標、動き商標、ホログラム商標、色彩のみの商標、音商標など、さまざまなタイプの商標があります。


ロゴ商標と文字商標の峻別(しゅんべつ)はあいまい

それでは、実際に商標を取得しようとする際、どの種類の商標を取得すべきか、どのような基準で判断すれば良いのでしょうか。


とりわけ、ロゴ商標と文字商標のどちらを選ぶかは難しい問題です。 文字商標は、先に述べたとおり「ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字、数字などの文字で表される商標」ですが、ロゴ商標は明確な定義がありません。 ロゴ商標には、図形商標、記号商標、結合商標などが含まれます。また、文字商標の中でも色や特徴的な書体を使ったデザイン性の高い文字商標を、「標準文字商標」と区別して「ロゴ商標」と呼ぶこともあります。


例えば、キヤノン株式会社が登録している商標には、標準文字商標とロゴ商標の両方があります。「キヤノン」という標準文字で登録されている文字商標もあれば、同社のロゴとしてよく知られている「Canon」のローマ字で登録されているロゴ商標もあるのです。


同社のロゴは、ローマ字から成る文字商標ともいえそうですが、単なるローマ字の連なりではなく内側にはねる「C」を含む特徴的なデザインがほどこされています。文字商標というよりはロゴ商標と呼ぶのに相応しい商標です。


このように、ロゴ商標と文字商標は、デザイン性の有無というあいまいな基準で分けられているにすぎません。したがって、ロゴ商標と文字商標の峻別自体にさほど意味はありません。

取得すべき商標を見分けるポイント

取得すべき商標を見分けるポイントは、次の2点です。

  1. 取得する商標の使い方に合わせる。

  2. 露出度が高いものから取得する。


使い方に合った商標について登録を受ける

ロゴ商標と文字商標のどちらの登録を受けるかを考えるポイントのひとつは、「実際に事業を展開する上でどのような使い方をするか」という実態に合わせることです。なぜなら、使用実態のない商標は取り消される恐れがあるからです。


商標制度には、「不使用による取り消し」という仕組みがあります。例えばその商標を使いたい人が取消審判請求を申し立てた場合、商標権者が「過去3年間で使用実態があったこと」を証明しない限り、商標が取り消されてしまいます。


取り消されてしまう商標を取得しても無駄になるため、ロゴ商標と文字商標のどちらを取得するかを検討する際には、「実際どのように商標を活用するのか」という使用実態を明らかにしておくことが重要です。その上で、実際に使用することが見込まれる種類の商標について登録を受けるようにしましょう。


露出度が高いものから取得する

ひとつの商品・サービスにつき複数の種類の商標を取得することも可能です。ただ、費用や人的コストの観点から、取得する商標を絞り込む必要が生じることもあります。


そんなときは、露出度が高い商標から取得しましょう。他者の目に触れやすい商標であればあるほど、競合他社に真似されるリスクが高まりますし、真似されるリスクの高い商標ほど、商標権の保護の必要性が高まるためです。


よって、どの種類の商標を優先的に取得するかは、露出度、すなわち商標の使用頻度を考慮して決めると良いでしょう。



文字商標・ロゴ商標のメリット・デメリット

最後に、ロゴ商標と文字商標のそれぞれのメリット・デメリットにも触れておきます。ロゴ商標と文字商標のどちらの登録を受けるべきか、検討材料のひとつとしてご活用ください。


文字商標のメリット・デメリット

文字商標のメリットは、フォントやデザインに縛られることなく出願できる点にあります。


文字商標は、デザインが固まる前段階でも出願・登録が可能です。その上で、商標取得後にデザインを改めて考案したり変更したりできます。また、単純に文字だけで重複・類似の商標があるかどうかを調べられるので、商標調査も容易です。


このように、スピーディに出願できる点が文字商標の最大のメリットといえます。


一方、デザイン性が保護されない点はデメリットといえるでしょう。


当然ながら、文字商標ではデザイン性は保護されません。したがって、ネーミングと文字デザインが定着してきた頃、他社が文字をわずかに変えた同デザインを使用して両者の見分けがつきにくくなった場合でも、文字商標だけでは侵害を排除できない可能性があります。


文字商標で出願後、特定のフォントやデザインが決まった場合は、いち早くロゴ商標も取得するようにしましょう。


ロゴ商標のメリット・デメリット

ロゴ商標のメリットは、他社の商標との識別性が高いため、ブランドイメージを醸成しやすい点です。標準的な文字と比べて、デザイン性のある文字や記号、図形などを使ったロゴは、消費者の記憶に残りやすく、目印になりやすい特性があります。 一方、デメリットは、フォントやデザインに縛られることです。一旦登録してしまえば、そのロゴ商標で守られるデザインは固まってしまいます。逆にいうと、デザインが確定するまでロゴ商標の出願はできません。


商標法は、先に商標登録の出願手続きを行った出願者が優先される「先願主義」を採用しています。そのため、商標を取得したければ他社に先がけて出願することが重要です。


しかし、ロゴ商標のデザインを練るのに時間をかけていると、他社に先を越されるリスクが高まります。他社が同一のネーミングで商標を取得して、もはや類似の商標は取得できないといった事態に陥りかねません。 考案に時間を要するために迅速性が失われることが、ロゴ商標のデメリットといえるでしょう。


まとめ

ロゴ商標と文字商標の境目はあいまいな上、商標の使用方法や使用頻度によって、取得すべき優先順位も異なります。的確な判断のもとスムーズに手続きを進めるには、事例の調査力と専門的な知識が欠かせません。


井上国際特許商標事務所では、商標出願に先立つ事前調査から迅速な登録手続きまでを承っております。ぜひお気軽にご相談ください。


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