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特許無効審判とは?手続きの流れから注意点までを解説



特許権侵害訴訟や特許権侵害の警告を受けたとき、これに対抗する強力な手段として、特許無効審判という制度が挙げられます。特許無効審判で無効審決が確定すると、対象となる特許はもとから「ないもの」として扱われるため、特許権侵害もないことになります。


本記事では、そんな特許無効審判の手続きの流れから、要件、注意点までを解説します。


特許無効審判の概要


特許無効審判とは

特許無効審判とは、新規性・進歩性などの要件を満たさないにもかかわらず権利化されてしまった特許権を、無効にできる制度です。


一般的に、特許権侵害を理由とする訴え(差し止め請求訴訟、損害賠償請求訴訟など)や特許権侵害の警告を受けた者が、これに対抗する手段として、特許無効審判を請求します。


特許無効審判で無効審決が確定すると、対象とされた特許権はもとからなかったものとみなされます。


特許異議申立と特許無効審判との違い


特許法第113条に規定されている特許異議申立は、特許権の付与につき再審査を求めるための制度です。特許権が特許掲載公報で公表されてから6カ月間の間であれば、誰でも特許異議申立をすることができます。

一方で、特許無効審判は、特許の公報掲載から6カ月を超えても請求できるだけでなく、特許権が消滅した後にも請求できます。しかしながら、請求人の範囲は特許異議申立よりも狭く、利害関係人に限られます。



特許無効審判の流れ


特許無効審判の流れは、次のとおりです。

  1. 請求人が特許庁に特許無効審判を請求する。

  2. 特許庁で特許無効審判請求書の方式審理が行われる。

  3. 特許庁から被請求人(特許権者)に対して無効審判請求書の副本が送達される。

  4. 被請求人が無効審判請求書に対して答弁書で反論する。場合によっては、無効理由解消のために請求の範囲や明細書、図面などの訂正請求をすることも可能。

  5. 請求人が弁駁書で答弁書に反論する(4.と5.を数回繰り返すこともある)。

  6. 特許庁の審判廷で本審理が行われる(両当事者が口頭または書面で意見を主張する)。

  7. 審判官による審決が行われる。


審決において審判官は、それまでに提出された証拠と本審理で形成した心証をもとに、対象となる特許が無効かどうかを判断します。審決の結果に不服がある当事者は、無効審判の請求人・被請求人のいずれであっても、知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起できます。



特許無効審判の要件


特許無効審判の請求権者


特許無効審判を請求できる者は、利害関係人に限られます。


ここで「利害関係人」とは、その特許権があることで法律上の利益やその権利に対する法律的地位に直接の影響を受ける者、またはその可能性のある者を指します。


具体的には、特許権侵害訴訟の被告とされた者や、対象となる特許権と類似の発明について特許権を有する者、類似の発明を用いて製品を製造・販売している者などが、特許無効審判を請求できます。


特許無効審判の対象

特許無効審判は、存続している特許権のみならず、消滅した後の特許権についても請求できます。


また、請求項が2つ以上ある場合は、請求項ごとに無効審判請求できます。同様に、請求項ごとの取り下げも可能です。


特許無効審判の無効理由

特許無効審判の無効理由は、特許法第123条1項各号に列挙されています。


最も重要な無効理由が、新規性・進歩性の欠如です。その他、明確性要件(特許請求の範囲が明確であること)や実施可能要件(特許請求の範囲に記載された発明を実施できる程度に明細書に必要な事項が記載されていること)がみたされていないことなども、無効理由にあたります。


例えば新規性・進歩性を無効理由として主張する場合は、特許が権利化された際の審査から漏れていた先行文献を見つけ出すなどして、「新規性・進歩性がなかったこと」を示さなければなりません。


なお、無効理由の根拠となる証拠の多くは、先行文献、実験報告書、陳述書といった文書の形で提出されます。動画や音声を収録した記録媒体も、書証として提出可能です。また、鑑定人や当事者による審判廷での証言も、証拠になります。



特許無効審判の注意点


特許無効審判の注意点は、他の特許関連手続きと比べて時間も費用もかさむことです。


特許無効審判は、すでに認められている特許権を「なかったこと」にしてしまう制度です。特許無効が認められれば、特許権者の権利に重大な影響が生じるため、無効かどうかは慎重に判断されます。


ちなみに、特許無効審判(実用新案無効審判を含む)の平均審理期間は、2020年で12.5カ月、2021年で14.1カ月、2022年で13.4カ月でした。


審決に対して取消訴訟を提起する場合は、さらに争いが長期化します。


また、一旦審査を経て認められた特許権の有効性を争う以上、無効請求をする側には徹底的な調査と資料収集を前提とした主張・立証が求められます。その分、調査費用や資料作成の費用が増す可能性も想定しておかなくてはなりません。




まとめ


特許無効審判請求は、特許権侵害訴訟を提起されたり特許権侵害の警告を受けたりした場合に、これに対抗できる強力な手段です。


一方で、無効審決が下されれば、被請求人である特許権者は権利を失ってしまうため、特許無効審判の請求人と被請求人(特許権者)は真正面から対立し、徹底的に争うことになります。


調査や資料作成のための費用はかさむものの、専門家の助けを借りて万全の態勢で臨むことをおすすめします。


井上国際特許商標事務所では、特許関連の手続き経験豊富な弁理士が、特許無効審判の準備段階から最終的な解決までをサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。


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