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パテントクリフ(特許の崖)とは? 医薬品分野における対策・実例について紹介します

製薬会社の決算会見などで耳にすることの多い「パテントクリフ」という言葉。日本語では「特許の崖」と訳されます。


本記事では、主に医薬品分野の特許をめぐり問題となる「パテントクリフ(特許の崖)」とは何を意味するのか、実例や対策を混じえて解説します。



パテントクリフ(特許の崖)とは?

まずは、特許の崖とも表現されるパテントクリフがどのような現象かについて解説します。


特許満了に伴い売上高が急落する減少

パテントクリフ(特許の崖)とは、特許の存続期間が終了することで起きる、急激な売上高の減少を意味します。


特許権が有効に存続する期間は、出願日から原則として20年です。この特許の存続期間が満了することにより、それまで特許で守られていた技術を使った製品・サービスを独占できなくなります。


独占による優位性が失われ、他社による安価な後発製品との競争にさらされると、特許製品から得られていた売上げが、まるで崖から落ちるように急激に減少してしまいます。これが特許の崖、パテントクリフです。


特に製薬業界で問題に

パテントクリフは特に、製薬業界で問題視されやすい現象です。その理由は、新薬の中核をなす有効成分に関する技術、いわゆる「物質特許」が、通常1つの特許権で保護されているからです。



自動車や電子機器といった工業製品では、1つの製品にいくつもの特許技術が使用されています。そのため、1つの特許技術を独占できなくなっても、その製品の優位性がすぐに失われることはありません。パテントクリフは問題となりにくいのです。


一方、新薬を主力製品としてビジネスを展開する製薬メーカーにとって、パテントクリフは主力製品の優位性が失われ、ジェネリック医薬品と呼ばれる後発医薬品との競争にさらされることを意味するのです。製薬会社の経営に多大な影響を与える最重要課題の1つとなっています。


パテントクリフの実例

パテントクリフは、すでにいくつもの実例があります。ここでは、代表的なものを紹介します。


武田薬品工業「ベルケイド」

武田薬品工業では、2018年3月期に多発性骨髄腫治療薬「ベルケイド」の特許期間が終了し、2019年3月期の売上げが減少した。注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療薬「ビバンセ」の特許期間も2023年に終了し、複数の後発医薬品が販売されている。


第一三共「メバロチン」

第一三共は、高脂血症の治療に使われる「メバロチン」が2006年に特許期間の終了を迎え、「メバロチン」の売上げが大幅に減少した。これをカバーすべく開発された新薬「オルメテック」も2017年に特許が切れ、その影響で2019年3月期の決算では167億円の減収となった。


アステラス製薬「ベシケア」「タルセバ」「ファンガード/マイカミン」

アステラス製薬は、過活動膀胱治療薬「ベシケア」と抗がん剤「タルセバ」が2019年5月に、抗真菌薬「ファンガード/マイカミン」が同年3月に米国で特許切れを迎え、2020年3月期の売上げに影響した。



パテントクリフに備えた対策方法

新薬開発を行う製薬会社にとって、パテントクリフは避けがたい問題です。しかし、特許期間が終了する時期、すなわちパテントクリフが到来する時期は予め予測できます。


製薬会社各社は、中長期的な経営戦略の中でパテントクリフに備えた対策を打っています。代表的な対策方法として、次の3つがあげられます。


コストの削減

パテントクリフ対策の1つ目が、コスト削減です。パテントクリフで見込まれる売上減による打撃を抑えるために、成果が上がらない研究を中断して研究費用を削減したり、パテントクリフの到来する時期に合わせて人員整理をしたりといった対策が行われます。


新薬開発

2つ目が、新薬開発です。新薬の開発には長い年月がかかるため、製薬会社では既存製品の特許期間が終了する時期を見込んで長期的に研究開発に取り組んでいます。パテントクリフが近づいてくると、開発を加速させて新薬完成をパテントクリフに間に合わせるために、研究開発費に多額の投資を行うこともあります。


M&A

自社で長期にわたり研究開発を進めていても、必ずしも高い需要の見込まれる新薬を予定通り開発できるとは限りません。このため、新薬完成に近づきつつある企業や、需要の高まっている分野の新薬開発に役立つ知見を有している企業を買収することで、パテントクリフに備える方法もあります。実際に、製薬業界ではパテントクリフに備えたM&Aが盛んに行われています。


まとめ

新薬の特許の存続期間終了により製薬会社が直面するパテントクリフ。単にコストを削減してダメージを抑えるのみならず、新たな主力製品を生み出すための長期的な研究開発やM&Aによって対策を講じなくてはなりません。


そのためには、既存の特許の活用と将来的に目指すべき特許取得を踏まえた知的財産戦略が問われます。井上国際特許商標事務所では、医療分野の特許戦略に関する案件も承っております。パテントクリフにお悩みの方は、是非ご相談ください。


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