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商標の「不使用取消審判」とは?3年以上使われていない登録商標を消す方法

  • 13 分前
  • 読了時間: 7分

ネーミングやロゴを商標登録しようとしたら、すでに他社が商標登録してしまっていた。しかし、実際には使われていないようだ――。そのような場面で有効な手段となるのが、商標の「不使用取消審判」です。


今回は、そんな不使用取消審判について、制度の概要から認められるための要件、具体的な手続きの流れまで、わかりやすく解説します。



商標の不使用取消審判とは

商標の不使用取消審判は、商標法第50条に規定されている制度です。登録されている商標が一定期間使われていない場合に、その登録を取り消すことができるしくみで、商標登録原簿を整理し、円滑な商標利用を促すために設けられています。


まずは、この制度の目的と特徴を紹介します。


商標法と不使用取消審判制度の目的

商標制度は、「商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」(商標法第1条)ことを目的としています。したがって、あくまで「使用する」前提の商標のみを保護する制度です。


一方、使用されていない、いわゆる「眠れる商標」や「幽霊商標」が登録されたままだと、その商標を実際に活用したい他社の円滑なビジネスを妨げ、産業の発達を阻害してしまいます。そこで、商標登録原簿を整理し、ひいては産業の発達を促進すべく、商標の不使用取消審判の制度が設けられています。


商標の不使用取消審判の特徴

商標の不使用取消審判の特徴のひとつが、誰でも請求できるという点です。商標権者やライセンシー、競合他社といった利害関係人に限られず、誰でも請求人になることができます。


また、不使用取消審判が請求された場合、商標権者が商標の使用を証明しない、あるいはできないケースが多く、取消が認められる確率が高いことも特徴のひとつです。



不使用取消審判が認められるための要件


請求人が主張すべき要件

不使用取消審判が認められるためには、「継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていない」(商標法第50条第1項)ことが要件となります。


すなわち、請求対象となっている商標が取り消されるためには、審判請求前の3年間、日本国内でその商標が一度も使用されていないことが必要です。請求人は、審判請求書においてこの点を主張します。


被請求人が証明すべき要件

これに対して、被請求人である商標権者が「その請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていること」(同法同条第2項)を証明すれば、取消を免れることができます。


このとき、商標権者が「使用をしている」というためには、登録されている商標そのものを使用していること、または書体の変更や平仮名・片仮名・ローマ字の相互変更など、社会通念上同一と認められる範囲でその登録商標を使用していることを証明しなくてはなりません。


加えて、その登録商標の使用が、登録時に指定した商品・役務についてなされている必要があります。したがって、指定商品・指定役務とは異なるカテゴリーにおいてその商標を使用していたとしても「使用をしている」とはみなされず、取消が認められることとなります。


なお、使用していなかった場合でも、そのことにつき「正当な理由」が認められれば、例外的に商標は維持されます。もっとも、「正当な理由」として認められるのは、震災、輸入制限、薬機法(医薬品医療機器等法)上の規制など、商標権者のコントロールが及ばない外的事情によって使用できないケースに限られます。準備不足や資金不足、経営方針の転換といった内部事情は「正当な理由」には該当しません。


「駆け込み使用」の排除

商標法第50条第3項には、いわゆる「駆け込み使用の排除」に関する規定が設けられています。これは、長期間にわたり商標を使用していなかった商標権者が、不使用取消審判を請求されることを知った後に、形式的に使用実績を作ることを防ぐためのものです。


具体的には、審判請求前3カ月から審判請求の登録の日までの間にされた商標の使用について、その使用が不使用取消審判の請求がされることを知った後に行われたものであることを請求人が証明したときは、その使用は商標法第50条第1項にいう「使用」とは認められません。


この場合、たとえ形式的に商標が使用されていたとしても、不使用を覆すための「使用」としては評価されず、取消を免れる根拠にはなりません。


なお、駆け込み使用に該当する場合であっても、その使用について正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、例外的に取消を免れる余地があります(同項但書)。



不使用取消審判の手続き


以下では、不使用取消審判の具体的な手続きの流れを解説します。


審判の請求

不使用取消審判は、請求人が特許庁に対して審判請求書を提出することから始まります。この際、請求人は、対象となる商標登録番号を記載するとともに、取り消したい範囲も指定します。取り消したい範囲を指定するのは、ひとつの商標につき複数の指定商品・指定役務がある場合、その一部のみを対象として取り消すことも可能なためです。


特許庁に審判請求書を提出する際の手数料(印紙代)は、次の計算式で算出されます。


印紙代 = 15,000円 +(区分数 × 40,000円)


(出典:特許庁ウェブサイト「産業財産権関係料金一覧」)


したがって、例えば1区分につき取消審判を求める場合は55,000円の印紙代がかかります。加えて、弁理士などの専門家に依頼する場合、別途手数料が発生します。


被請求人による答弁書の提出

審判の請求を受けた特許庁は、被請求人である商標権者に対して、審判請求があったことを通知します。通知を受けた商標権者は、審判請求の登録前3年以内に当該商標を使用していたことを示す証拠を添えて、答弁書を提出しなければなりません。答弁書の提出期限は、特許庁から審判請求書の副本が送達された日から原則として40日以内です。


要件の項ですでに解説したとおり、「使用をしている」ことの立証責任は商標権者側にあります。商標権者は、答弁書で「審判請求の登録前3年以内に当該商標を指定商品または指定役務の範囲で使用していること」(いわゆる「要証期間」内の使用)を具体的に主張するとともに、商品カタログ、納品書、ウェブサイトのスクリーンショットといった証拠をもってこれを証明しなければなりません。


審理・審決

続いて、特許庁の審判官が、不使用取消の審理を経て審決を下します。審判官は、請求人と被請求人から提出された主張と証拠をもとに審理し、商標を維持するか、取消の審決を下すかを判断します。


被請求人が使用の事実を証明したり、使用していないことにつき正当な理由が認められたりした場合には、商標は維持されます。一方、使用の事実や正当な理由の証明ができなかったり、証拠が不十分であったりした場合には、取消の審決が下され、商標は取り消されます。


請求から審決が出るまでの期間は、おおむね半年から1年程度です。商標権者からの答弁書や証拠の提出がない場合は比較的スムーズに進行しますが、当然ながら、「使用をしている」ことが証拠とともに主張されるケースもあります。請求人としては、迅速に取消の審決を得るため、これに対する反論の準備をしておきましょう。先に紹介した「駆け込み使用の排除」は、典型的な反論のひとつとなります。



まとめ

他社の商標登録があるために、自社の商標と同一または類似する商標を登録できない――。そのような場合には、まず対象商標の使用実態を調査してみましょう。具体的には、店舗や看板、広告、商標権者の公式サイト、ECサイト、SNSやプレスリリースといった媒体における表示を確認します。もし3年以上その商標が使用されていなければ、不使用取消審判は強力な武器となります。


もっとも、不使用取消審判を成功させるには、商標の類似範囲の解釈や証拠の妥当性など、専門的な知識と経験が求められます。このため、審判請求や反論の過程では、専門家のアドバイスを求めることを強くおすすめします。


井上国際特許商標事務所では、商標制度に精通した弁理士が、不使用取消審判の手続きを円滑に進めるためにサポートいたします。不使用取消審判をご検討の方は、ぜひ一度、ご相談ください。


 
 
 

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