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結合商標の類否判断とは?ロゴと文字が分離観察されるケース

  • 7 日前
  • 読了時間: 7分

ロゴマークとブランド名や企業名などの文字を組み合わせて出願する「結合商標」。


結合商標の類否判断では、商標全体を一つとして観察するのが原則ですが、一定の場合には、ロゴや文字などの一部を抽出して既存商標との類似性を判断する「分離観察」が行われます。そのため、結合商標全体としての印象が異なっていても、要部が他人の商標と類似すると判断され、商標登録が拒絶される可能性があります。


今回は、そんな結合商標の類否判断について、分かりやすく解説します。ロゴと文字が分離観察された実際の判例も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。



結合商標の類否判断の原則と例外


結合商標とは、複数の文字、図形、記号などが組み合わさった商標のことです。結合商標も商標である以上、商標登録の要件を満たす必要があります。そこで、すでに登録されている商標や周知商標との類否が問題となります(商標法第4条参照)。


出願商標と既存商標との類否は、次の外観・称呼・観念の3つの観点から判断されます。


  • 外観:見た目の形や構成が似ているか。

  • 称呼:発音したときの響き(読み方)が似ているか。

  • 観念:認識される意味やイメージが似ているか。


実際には、外観・称呼・観念によって取引者や需要者に与える印象、記憶、連想などを、指定商品・指定役務や取引の実情も踏まえて総合的に判断します。結合商標では、原則として商標の全体を一つとして観察する「全体観察」が行われます。しかし、一定の条件下では、一部の要素を要部として抽出し、他人の商標と比較することがあります。これが「分離観察」です。



結合商標で「分離観察」が行われる理由


分離観察とは、結合商標を構成する文字やロゴなどの一部が独立して強い印象を与える場合に、その部分を要部として抽出し、他人の商標との類否を判断する方法です。


特許庁がなぜ分離観察を行うかというと、例えば、取引者や需要者がある結合商標を見たとき、商標の構成によっては、ロゴだけで特定のブランドを認識したり、文字部分だけで会社や商品を呼び表したりすることがあるからです。そのような場合、出所の混同が生じる可能性があります。


このため、結合商標を全体で見ると類似していなくても、需要者が要部として認識する部分が他人の商標と類似している場合には、類似商標として拒絶されることがあります。ただし、商標の一部をみだりに抽出することは認められず、あくまで全体観察が原則です。



ロゴと文字が「分離観察」される主なケース


では、どのような場合に分離観察が行われる可能性があるのでしょうか。


分離観察の判断で考慮されるポイント

特許庁の商標審査基準や裁判例では、商標全体の構成、各部分の結び付きの程度、識別力の強弱、称呼・観念の生じ方などを踏まえて、分離観察の可否を判断します。


例えば、以下のような商標の構成上の相違点は、各部分が独立して認識されるかを判断する材料となります。


  • 配置・距離:文字やロゴが離れて配置されている、あるいは上下二段に分かれている。

  • 視覚的差異:フォント(書体)、文字の種類(漢字とアルファベットなど)、大きさ、色彩が明確に異なる。

  • 意味・称呼:構成部分同士に観念上のつながりが乏しい、または全体の称呼が長く、一部で呼ばれやすい。


ただし、これらの事情が一つあるだけで、直ちに分離観察されるわけではありません。逆に、文字とロゴが全体として一つの新しい意味を構成している場合などは「一体不可分」とみなされ、原則どおり全体観察が行われやすくなります。


これを前提に、以下では、実務上および判例上定着している代表的な3類型を解説します。


強く支配的な印象を与える部分があるケース

「つつみのおひなっこや」事件(最高裁平成20年9月8日判決)では、分離観察を認める要件のひとつとして、「その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合」という基準が示されました。


この基準に従い、結合商標の一部が取引者や需要者に対して商品・役務の「出所識別標識(ブランドの目印)」として強く支配的な印象を与える場合には、その部分だけを抽出して他人の商標と比較することがあります。


ただし、「つつみのおひなっこや」事件では、各文字の大きさと書体が同じで、一行にまとまりよく表示されていることなどから、「つつみ」の部分が強く支配的な印象を与えるとは認められませんでした。単に一部を切り分けられるように見えるだけでは、分離観察できない場合があります。


他の部分の識別力が弱いケース

「リラ宝塚」事件(最高裁昭和38年12月5日判決)は、リラの図形と「宝塚」の文字を組み合わせた商標について、両者が分離して観察することが取引上不自然なほど不可分に結合していないことなどから、「宝塚」の文字部分を抽出した類否判断を認めた事例です。


また、指定商品・指定役務との関係で、一般名称や品質、用途、産地などを表すにすぎず、識別力の弱い部分が含まれる場合には、識別力のある部分が要部として抽出されることがあります。


例えば、ロゴと商品の一般名称が結合している「(特徴的なロゴ)+チョコレート」(指定商品:菓子)という結合商標がある場合、「チョコレート」の文字部分は商品の一般名称であり、通常は強い識別力を持ちません。そのため、特徴的なロゴ部分を中心に類否が判断される可能性があります。


他の部分から称呼・観念が生じないケース

前述の「つつみのおひなっこや」事件で最高裁は、分離観察が許される類型のひとつとして、「それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合」という基準も示しています。


これは、抽出する部分以外の構成部分から、出所識別標識としての称呼(読み方)や観念(意味)が事実上生じないと認められるケースです。


例えば、単なる丸や四角の枠といった極めて単純で目立たない幾何学的な図形と造語の文字が組み合わさった結合商標がある場合、需要者は通常、その図形部分を単なるデザインの飾りと捉え、そこから特定の称呼や観念を生じません。そのようなケースでは、文字部分が要部として抽出され、他人の商標との類否が判断されることがあります。



結合商標の分離観察への対策


せっかくデザインした結合商標が拒絶されたり、他者の商標権を侵害したりするリスクを軽減するためには、以下の対策が有効です。


部分ごとに事前調査する

結合商標の出願に先立ち、全体だけでなく、ロゴ単体、文字単体といった部分ごとの調査も行いましょう。特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の商標検索ページをはじめとするツールを活用し、結合商標の各部分につき先行商標の有無を調べることが重要です。



単体出願も視野に入れる

ロゴと文字を常に一体で使用する場合は、結合商標としての出願が選択肢になります。一方、ロゴだけ、文字だけでも使用する予定がある場合は、それぞれを個別の商標として出願することも検討しましょう。


それぞれを登録しておけば、使用態様の変更に対応しやすく、他社による模倣に対して権利を行使する際の選択肢も広がります。ただし、単体出願をすれば、結合商標の拒絶リスクがなくなるわけではありません。


デザインの一体感を高める

ロゴと文字を一体のブランドとして認識させたい場合は、配置や大きさ、書体、意味上のつながりなどを整え、全体としてまとまりのあるデザインにする方法があります。


ただし、デザインの一体感を高めれば、必ず全体観察されるとは限りません。実際に使用する態様と、出願する商標の構成をそろえることも重要です。



まとめ


結合商標の類否判断は、全体観察が原則ですが、構成部分の結び付きや識別力、称呼・観念の生じ方によっては、要部を抽出した分離観察が行われます。明確な境界線が引きにくく、過去の判例や特許庁の審査基準を踏まえた検討が必要です。


自社のブランドを守り、安全にビジネスを展開するためにも、ロゴや文字を組み合わせた商標出願を検討する際は、弁理士などの専門家に相談することをおすすめします。


井上国際特許商標事務所では、商標制度に精通した弁理士が、商標登録を円滑に進めるためにサポートいたします。結合商標の出願をご検討の方は、ぜひ一度、ご相談ください。


 
 
 

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