刊行物等提出書の提出方法とは? 特許の情報提供制度をわかりやすく解説
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他者が出願した特許が自社ビジネスへの脅威になりそうなとき、特許が認められる前にできる対抗策が、「情報提供(刊行物等提出書)」です。
ここでは、特許の情報提供の意義から、刊行物等提出書の提出方法、実務に役立つポイントまでを解説します。
刊行物等提出書とは? 特許の情報提供制度の基本
まず、特許の情報提供の意義と第三者が情報提供を行う背景を紹介します。
刊行物等提出書による情報提供とは
特許の情報提供とは、特許庁で審査中の出願に対し、第三者が「この発明はすでに世の中にあるので、特許にするべきではない」という趣旨の情報を提供できる制度です。具体的には、「刊行物等提出書」に証拠となる資料を添えて、特許庁に提出します。
特許庁の審査官は、特許出願のあった発明に対して特許を認めるかどうかを審査します。もっとも、審査官が必ずしも世の中に存在しているすべての発明に関する情報を把握しているわけではありません。したがって、外部からの情報提供が、審査の精度を高めるうえで有益な材料となるのです。
刊行物等提出書が使われる場面
では、他者の特許出願に対して第三者が情報提供を行う動機は、どこにあるのでしょうか。第三者が情報提供を行う背景には、主に次のようなきっかけがあります。
競合他社の出願監視: 定期的に競合の出願状況を確認しているなかで、自社の既存製品に搭載されている技術や、既に公知となっている技術と酷似した出願を見つけた場合。
業界標準への影響回避: 業界全体で自由に使われるべき公知技術が、特定の企業に独占されそうになった場合(特定企業による技術の囲い込み防止)。
自社製品の開発・販売前調査: 新製品を出す前に周辺特許を調査しているなかで、自社のビジネス展開を阻害しそうな出願の権利化を未然に防ぐ場合。
警告状やライセンス交渉の発生: 公開中の特許出願について警告やライセンス交渉を受け、その出願の権利化を阻止したい場合。
特許が成立した後に「異議申し立て」や「無効審判」を起こすことも可能ですが、それらの手続きには多額の費用と時間がかかります。
一方、特許の情報提供には印紙代(特許庁への手数料)がかかりません。費用対効果の高い対策です。
刊行物等提出書の提出方法【4つのステップ】
次に、情報提供の手続きについて、具体的に解説します。
証拠(刊行物等)を集める
特許の要件である「新規性」や「進歩性」を否定するための証拠を集めます。具体的には、次のような資料が挙げられます。
特許の公開公報:公開公報に掲載されている明細書や図面の写し。最も一般的で強力な証拠になります。
書籍、雑誌、論文、カタログ: 対象特許の出願日よりも前の発行日のものに限ります。
インターネット上のウェブサイトの印刷物: 公開日、URLアドレス、問い合わせ先などの情報もあわせて押さえておきましょう。
「刊行物等提出書」を作成する
「刊行物等提出書」は、提出するメインの書類です。特許法施行規則の様式第20「刊行物等提出書」に従って作成します。
刊行物等提出書の主な記載項目は、次のとおりです。
【提出人】 自分の住所又は居所、氏名又は名称を記載します。匿名を希望する場合は、住所・氏名の省略も可能です。また、弁理士などに手続き代行を依頼することで、自身が情報提供元であることを秘匿する方法もあります。
【事件の表示】 対象となる特許の「出願番号」(「特許出願202X-XXXXXX」など)を記載します。
【提出物の目録】 提出する証拠の一覧です。証拠となる資料(文献A、文献B、……)をリストアップします。
【提出理由】どの文献のどの部分が、出願された発明のどの請求項(クレーム)に関係しているのかを、具体的に説明します。例えば、「引用文献1と2を組み合わせれば、本願発明は容易に考え出せる」といったロジックを簡潔に記載します。
なお、「刊行物等提出書」の書式は、独立行政法人工業所有権情報研修館が公開する「各種申請書類一覧(紙手続の様式)」で確認できます。
特許庁へ提出する
証拠となる資料を添えて、刊行物等提出書を特許庁に提出します。手数料は無料ですので、収入印紙の貼付は不要です。提出方法には、次の3つのパターンがあります。
オンライン提出: 専用ソフトを利用してオンラインで提出する手段です。(電子出願ソフトサポートサイト )
郵送:以下の宛先に郵送で提出する手段です。
〒100-8915 東京都千代田区霞が関3-4-3 特許庁長官宛
窓口持参: 特許庁出願課の受付窓口に直接提出する手段です
これら3つのうち、オンライン提出が審査官に最も迅速に情報が届く手段です。特許庁は、このオンラインによる情報提供を推奨しています。
刊行物等提出書を提出した後の流れ
提出された情報は審査官に提供されます。審査官は、その情報を判断に利用するか否か、利用する場合はその情報を前提に特許を認めるか否かを判断します。そして、「確かにこれは特許にできない」と判断すれば、出願者に対して拒絶理由通知が出されます。
なお、情報提供者が、自分の提出した情報がどう判断に使われたかを知りたい場合は、特許庁からフィードバックを受けることができます。その場合、刊行物等提出書の【提出物件の目録】の次に【利用状況の通知を希望する旨】という項目を設けたうえで、「希望する」と明記しておきましょう。
ただし、刊行物等提出書が匿名で提出されていた場合は、通知先が不明であるためフィードバックは受けられません。
刊行物等提出書を提出するときの実務ポイント
最後に、実務に役立つ3つのポイントを紹介します。
刊行物等提出書は早めに提出する
情報提供は、審査官が拒絶理由通知や査定を行う前に提出することが重要です。とりわけ、出願公開後から審査開始までの段階で提出できると、審査に反映されやすくなります。
対比表を作る
出願されている発明の構成要素と、証拠資料のどこにそれが書かれているかを一つずつ対応させた表を添付すると、審査官の理解が格段に早まります。
例えば、「請求項1の要素Aは、資料1の図3に記載されている」といった形で表に整理するなど、一覧性を考慮して整理することで、審査官が拒絶理由に採用しやすくなります。
進歩性の欠如を指摘する
進歩性は、最も指摘しやすい要件のひとつです。
例えば、「資料1に資料2の技術事項を適用する動機付けが存在するため、当業者であれば容易に想到できる」というように、複数の資料をもとに進歩性の欠如を突くロジックを検討しましょう。
刊行物等提出書は匿名でも提出できる
特許出願に対して情報提供があった場合は、『特許情報プラットフォーム|J-PlatPat [JPP] 』で広く公開されます。競合他社に自社がマークしていることを知られたくない場合は、匿名で情報提供するとよいでしょう。
ただし、先述のとおり、匿名での情報提供に対しては特許庁からのフィードバック通知が受けられません。提供した情報が特許庁の判断にどう使われたかを把握したいときは、弁理士などに情報提供の手続き代行を依頼することをおすすめします。
まとめ
特許の「情報提供(刊行物等提出書)」は、他者の特許成立を防ぐうえで非常に強力かつ低コストなツールになります。
疑わしい出願や脅威になりそうな出願を見つけたら、放置せず、適切な証拠を添えて情報提供を行うことで、自社のビジネス環境を有利に整えられます。手続き自体はシンプルですが、スムーズな手続きと論理構成が重要になります。
井上国際特許商標事務所では、経験豊富な弁理士が、特許の情報提供に必要な情報収集や書類作成をお手伝いします。ぜひ一度、ご相談ください。



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