間接侵害とは? 直接侵害との違いや成立するケースをわかりやすく解説
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特許で保護されている製品そのものを製造・販売すると、当然ながら特許侵害となります。しかし、その製品を作るために不可欠な部品を無断で製造したり、侵害を助長するツールを販売したりすることも、「間接侵害」という形態の特許侵害になり得ます。
今回は特許の間接侵害について、具体的な事例を交えながら解説します。
間接侵害とは? 直接侵害との違い
特許の間接侵害とは、特許製品の製造・販売のような直接的な特許侵害ではないものの、直接侵害を引き起こしたり助長したりする可能性のある行為を、特許侵害とみなす制度です。
特許権の効力は本来、特許請求の範囲(クレーム)に記載されたすべての構成要件を備えたもののみに及びます。これは「オールエレメントルール」と呼ばれる考え方です。特許侵害についても、原則としてこのルールを前提に、発明の全構成要素を満たした物や方法を実施することが特許侵害となります。
しかし、例えば特許製品を構成する部品をセットで販売するような行為が特許侵害に当たらないとすると、脱法的な特許逃れが横行してしまいます。そのような事態を防ぎ、特許権者の利益を実質的に保護するために設けられた制度が、特許の間接侵害です。
間接侵害が成立する主な類型:特許法101条の考え方
間接侵害を規定した特許法第101条は、その対象が「物の発明」か「方法の発明」か、また「専用品」か「非専用の不可欠品」かによって各号に整理されています。なお、同条第3号と第6号は、譲渡等または輸出のための所持を侵害行為とみなす拡張型の侵害に該当します。
ここでは、狭義の間接侵害を規制した第1号、第2号、第4号、第5号の各号について、「専用品型」と「非専用品・不可欠品型」に分けて解説します。
専用品型:特許法101条1号・4号
第1号と第4号は、ある部品やツールがその特許発明を完成させるためだけにしか使われない「専用品」である場合に、特許侵害とみなされるパターンを定めています。第1号は部品などの「物」の発明に関する規定で、第4号は「方法」の発明に関する規定です。
これは、特許対象の物や方法に使われる以外に使い道がない部品やツールを製造・販売している時点で侵害を助長していることになるため、間接侵害となるパターンです。ここでは、主観的な侵害認識の有無に関わらず、「客観的に、その部品等に特許対象の物や方法以外の用途が存在するかどうか」が判断のポイントになります。
非専用品・不可欠品型:特許法101条2号・5号
第2号と第5号は、ある部品やツールが他の用途にも使える汎用品であっても、その物や方法が発明による課題解決にとって不可欠な特徴的部分である場合には、特許侵害とみなされ得るパターンを定めています。第2号は「物」の発明に関する規定で、第5号は「方法」の発明に関する規定です。
その部品等が「発明による課題解決にとって不可欠な特徴的部分」にあたるというためには、単に必要な部品であるだけでは足りません。この点は、実務上、発明の本質的部分や特徴的技術思想との関係で激しく争われる論点です。
また、このパターンの間接侵害が成立するには、先述の「不可欠な特徴的部分であること」という客観的要件に加えて、主観的要件も備わっていることが条件となります。具体的には、侵害者に少なくとも次の認識があることが必要です。
・当該発明が特許発明であることを知っている
・その部品等が当該発明の実施に用いられることを知っている
間接侵害にあたる具体例
間接侵害に該当し得るケースを、具体的に見てみましょう。
専用部品を製造・販売するケース
メーカーA社は「特殊な形状の浄水フィルター」の特許を持っています。B社は、A社の浄水フィルターにしか適合しない「交換用カートリッジ」を無断で製造・販売し、模倣品メーカーに提供しています。
この場合、当該カートリッジが他の浄水フィルターに使えない専用品であれば、完成品である浄水フィルター本体を販売していなくても、上記の専用品型の間接侵害になる可能性があります。
DIYキットを提供するケース
C社は「特定の順序で組み立てることで強度が飛躍的に高まる棚」の特許を持っています。D社は、C社の棚そのものの販売はしていませんが、その棚のパーツ一式と、特許通りの組み立て方を指示した説明書をセットにしたDIYキットを販売しています。
D社が販売したパーツ自体は加工された木板で、C社の棚の製作以外にも使えるパーツです。しかし、それらのパーツ一式は、発明の特徴的技術思想との関係、一般的木材との区別、説明書との一体性などを総合的に判断すると、「C社の発明の特徴的部分を実現するために不可欠な部材」と評価される可能性があります。
また、D社はC社の特許通りの組み立て方を指示した説明書をセットで販売しており、パーツ一式を「特許発明の実施に用いること」を知りながら提供していると推測されます。この場合、D社には上記の非専用品・不可欠品型の間接侵害が成立する可能性があります。
専用解析プログラムを配信するケース
E社は、特定のセンサーデータを用いて解析を行うシステムの特許を有しています。このシステムは、複数のソフトウェアプログラム、もしくはソフトウェアプログラムとハードウェアの組み合わせによって構成されています。F社は、その特許システムの手法を再現するための専用解析プログラムをインターネット上で配布・販売しました。
物理的な部品だけでなく、システムやプログラムも「物」として特許の対象となるため、E社の特許システムにのみ適用される専用解析プログラムを提供したF社は、専用品型の間接侵害にあたる可能性があります。
ただし、実務上、ソフトウェアの専用品認定は容易ではありません。例えば、汎用OS上で動作したり他システムへ転用可能であったりすると、専用品性が否定される可能性が高くなります。
間接侵害を回避するために確認すべきポイント
直接侵害であれ間接侵害であれ、特許侵害にあたる行為をしてしまうことはビジネス上のリスクになります。予期せぬトラブルに巻き込まれないよう、以下の視点で自社の製品やサービスをチェックしましょう。
部品・ツールの用途を確認する
自社が提供する部品やツールにどのような用途があるかを確認しましょう。汎用性の有無、すなわち「他の製品でも一般的に使われている」と言えるかどうかが、重要なポイントのひとつになります。なかでも、次の2つの視点が重要です。
他社の特定の特許を実現するためだけに、使われるものではないか
他の一般的な用途があるか
発明の特徴部分への関与を確認する
自社の部品やツールが、他社の特定の特許の肝となる特徴的部分に関わっているかどうかを確認しましょう。発明への貢献度が大きい部品やツールであるほど、間接侵害とみなされやすくなります。
関連する特許を事前に調査する
開発段階で、自社の部品が組み込まれる最終製品に関連する特許の有無を調査しておきましょう。競合他社の特許公報を調査する際には、完成品の形だけでなく「発明の本質的特徴がどこにあるか」にも着目してください。
まとめ
特許の間接侵害は、特許逃れを規制する目的で設けられた制度です。「模倣品の製造・販売は行っていないから特許侵害はしていない」と安心していると、思いがけず特許侵害にあたる行為をしてしまう可能性があります。
特許対象ではない部品やツールを製造・提供する場合にも、自社の行為が特許侵害になっていないか、慎重に判断しなければなりません。
井上国際特許商標事務所では、間接侵害に関するご相談も承っております。自社ビジネスに関して特許侵害の懸念がある方は、お早めにご相談ください。



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