画面デザインの意匠登録とは? 法改正の背景や具体例を紹介します


デジタル時計の表示画面や、最新のプロジェクションマッピングを活用した道案内図まで、私たちの日常はさまざまな画面デザインに囲まれています。


こうした画面デザインも、一定の条件を満たすことで「意匠登録」が可能です。令和元年に行われた意匠法改正により意匠登録で保護できる範囲が広がり、注目されています。


今回は、画面デザインの意匠登録について、法改正の背景や具体例とともに解説します。



「画面デザイン」とは?


デジタル時計、ウェブサイト、プロジェクションマッピング…時代と共に変化した画面デザイン

日々の暮らしで何気なく使っている家電製品の操作パネル、エレベーターの表示パネル、スマホやパソコンで閲覧する楽天、Amazon、ZOZO TOWNなどのECサイトなど、私たちの日常のあらゆる場所に画面デザインが存在しています。 画面デザインは、かつてはデジタル時計のように機器そのものに記録され、機器と一体になって表示されていました。ところが今では、画像デザインのデータ自体はウェブサーバー上に保存されるケースが主流になり、さらにはプロジェクションマッピングのように、画像デザインを表示させる物品(端末やパネルなど)を必要としないケースも登場しています。 このように、かつては画像を表示させる機器などの物品と一体性を帯びていた画面デザインが、技術が発展するにつれ、物品から独立した意匠としての価値を持つようになりました。


そもそも「意匠」とは何か

意匠は、簡単に言うとデザインです。そして、意匠権は人が創作したデザインを保護するための権利です。 意匠法は、意匠を保護することにより意匠の創作を奨励し、産業を発達させることを目的としています。意匠登録が完了すると、出願から最長25年間、意匠権者は意匠権を保持することができます。


従来、意匠権で保護される「画面デザイン」には物品との一体性が求められました。ところが、2020年に時代の変化に合わせた意匠法の改正が行われ保護対象が拡大、物品に記録・表示されていない画像デザインにも保護が及ぶようになりました。


意匠法における「画面デザイン」の定義とは

改正後の意匠法は、2条1項において、画面デザインとして保護される「画像」を次のように規定しています。 「画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。・・・)」 このように、「機器の操作の用に供される画像」、「機器がその機能を発揮した結果として表示される画像」、またはそれらの画像の一部が、意匠法上の「画像」にあたるとされています。



改正の意図と内容とは?

GUIの重要度の高まりが改正を後押しした

画面デザインの保護については、テクノロジーの発展に伴い、これまでも数回の法改正が実施されてきました。 平成10年改正では、物品の一部を構成する表示画面のデザインが意匠登録可能になりました。また、平成18年改正では、例えばDVDプレイヤーの操作画像がプレイヤーに接続されたテレビ画面に表示される場合のように、機器とは別の物品に表示される画像デザインも保護対象となりました。このように、意匠法の保護範囲は、徐々に広がりを見せています。

令和元年改正で物品との一体性要件が撤廃された背景にも、新技術の目ざましい発展があります。 IoTなどの普及によって機器同士がネットワーク上でつながるようになり、ユーザーと機器が情報をやり取りするための仕組み、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)の重要度が増しています。GUIを表示する対象も、必ずしも物品に表示されるとは限らず、道や壁、人体にまで表示できるようになりました。 インターネットサービスの多様化とスマートフォンなどの端末の普及により、企業のGUI研究・開発への投資額は増加。産業の発達のためにも、物品から独立した画面デザインそのものを保護する必要性が高まってきたのです。


改正意匠法による保護対象の拡大

意匠法が改正される前は、第1項で「物品」が直接的に「意匠」と定義されていて、「画面デザイン」が保護されるには、第2項にあるとおり、物品との一体性が要求されていました。

【改正前意匠法】
 21項 この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第8条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。

 同2項 前項において、物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合には、物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にするために行われるものに限る。)の用に供される画像であって、当該物品又はこれと一体として用いられる物品に表示されるものが含まれるものとする。

一方、改正後は、「『意匠』とは、物品…又は画像…であって、…」というように、画像デザインそのものが保護の対象になりました。物品との一体性要件が撤廃されたのです。

【改正後意匠法】
 21項 この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、…又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。…)であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。

改正意匠法で保護されるようになった「画面デザイン」

このような背景を受けて改正された意匠法によって、保護される対象はどのように変わったのでしょうか。具体例を挙げて見てみましょう。


▼家電製品の液晶パネルの操作画像

家電製品という「物品」に記録・表示される画面デザインです。改正前から保護対象に入っていました。改正による影響はありません。


▼通販サイト(ECモール)のウェブデザイン

パソコンやスマートフォンなどの端末機器(物品)に「表示」される画面デザインではあるものの、画面デザインのデータはクラウド上にあるケース。物品に「記録」されていないため、改正前は保護対象外。今回の法改正によって初めて、保護対象に含まれるようになりました。

▼建物の壁に投影された道案内図

近年、花火大会などの夜間イベントで、混雑回避や駅への道案内に、「通行制限中」や駅の方向を示すガイドプロジェクションを活用する動きが見られます。このようなプロジェクションマッピングを使った画像が「表示」される対象は、不動産。よって、物品への表示を要求する従来の意匠法では保護対象外でしたが、今回の改正で「物品」に「表示」されない画像も、保護対象となりました。

現行法で保護されない「画面デザイン」もある

保護対象が広がったとはいえ、意匠法の趣旨から対象外となる「画面デザイン」もあります。それは、「操作画像」にも「表示画像」にも該当しない画像です。 例えば、映画やゲームなどのコンテンツ画像、デスクトップの壁紙などの装飾画像。あるいは、装飾目的で建造物に投影されたプロジェクションマッピング。これらはいずれも、意匠登録することはできません。

なぜなら、意匠法の趣旨は、「意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、産業の発達に寄与すること」にあるためです。このため、産業の発達に寄与する可能性がある「機器の操作の用に供される画像」または「機器がその機能を発揮した結果をして表示される画像」だけが、保護対象とされています。 コンテンツ画像や壁紙、装飾目的の画像は、操作画像にも表示画像にもあたらないため、強い独占権を与える意匠法の保護は及びません。なお、コンテンツ画像などは文化の発展に寄与することを目的とする著作権法によって保護される可能性があります。



画面デザインを意匠登録するための手続き


出願から登録までの流れ

画面デザインの意匠登録出願から登録完了までのおおまかな流れは、次のとおりです。


  1. 願書に図面を添付し、出願料16,000円を納めて出願。

  2. 書類の形式的審査

  3. 登録要件の審査

  4. 登録査定

  5. 登録料の納付

  6. 意匠権の発生(設定登録)


3.の「登録要件の審査」をクリアできなかった場合は、4.の「登録査定」に先立ち拒絶理由の通知があり、意見提出や補正を行います。


意見・補正によって要件が満たされれば「登録査定」へと進み、満たさなければ「拒絶査定」へと進みます。拒絶査定に対しては、不服申し立ての手段として審判請求をすることができます。


画面デザインの意匠登録の登録要件

意匠登録の主な要件は、「意匠ごとの出願であること」、「工業上利用できる意匠であること」、「新規性」、「創作非容易性」、「先願」の5要件です。


▼意匠ごとの出願であること

意匠法では、一意匠一出願の原則のもと、出願1件につき1つの意匠しか含めることができません。


▼工業上利用できる意匠であること

どのような用途で使用する画面デザインであるのか、使用目的や状態、具体的用途を明示することが必要です。さらに、同一のデザインを複数量産し得ることも求められます。


▼新規性

出願前に公開されたデザインまたはこれに類似するデザインでないことを要求します。ただし、やむを得ず新規性が失われたようなケースでは、公開されてから1年以内に限り、所定の手続きを経て出願することで、新規性要件をクリアすることができます。


▼創作非容易性

意匠法の趣旨は、創作を奨励することにあります。よって、デザイナー等が容易に思いつくような意匠は、登録することができません。


▼先願

類似のデザインが出願された場合にどちらが登録されるかは、出願の先後で決まります。よって、デザインを思いついたタイミングが早くても、別のデザイナーが後から似たデザインを出願したら、そちらが意匠登録されてしまいます。逆に、先に思いついたにも関わらず出願が遅れた方は、類似デザインがすでに出願されているという理由で、拒絶されてしまいます。



意匠登録にかかる費用


意匠登録にかかる費用は、こちらの記事にまとめています。あわせてご覧ください。


まとめ

今回は、令和元年改正で保護が拡大された「画面デザイン」の意匠登録について解説しました。


画面デザインの意匠登録件数は、今後もますます増加が見込まれます。意匠登録が先願主義である以上、新たな画面デザインの保護には速やかな手続きが欠かせません。GUI関連の技術は日進月歩で進化しており、改正法施行後の登録実務も未知数な状況。適切な事前調査と迅速な手続きのためにも、専門家に相談することをおすすめします。


井上国際特許商標事務所では、画面デザインの意匠登録に関するご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。