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秘密意匠制度とは? 利用するメリットや手続き、注意点などを解説


秘密意匠制度とは、登録された意匠の内容を、3年を限度として意匠公報に掲載しないでおくことのできる制度です。


通常、出願した意匠は、特許などと同じく、原則として登録後すみやかに公開されます。ではなぜ、意匠登録にのみ、公開を先延ばしにする制度が用意されているのでしょうか?


ここでは、秘密意匠制度の意味や利用するメリット、さらに、具体例や注意点、手続の方法などを詳しく解説します。



秘密意匠制度とは?


秘密意匠制度とは、登録日から3年を限度に、意匠に係る物品や図面といった意匠内容を公報に掲載しないでおく制度のことです。


意匠登録についてはこちらをご覧ください。



秘密意匠制度が設けられた理由


意匠とは、簡単に言うとデザインのことです。物品のデザインを保護する意匠法は、物品の美的外観に関する創作を保護しています。


意匠法の保護対象となる意匠は、視覚的なデザインであり、一旦公開されると短期間で容易に模倣されやすい性質を有しています。一方、特許法の保護対象である発明は、技術に関するアイデアであり、短期間で容易に真似できるものではありません。


このように、デザインは知的財産の中でも特に模倣されやすい性質を持つため、意匠法にのみ秘密意匠制度が設けられています。


意匠権を取得して独占権があったとしても、他社に同一または類似の意匠が使われてしまうと、消費者から見ればそのデザインと他社製品が関連づけられてしまいます。


したがって、意匠登録から製品化まで時間を要するような場合に、意匠内容の公報掲載を一定期間留保する秘密意匠制度が役立つのです。



秘密意匠制度を活用した意匠登録の例


秘密意匠制度を活用した意匠登録の例は、自動車からスマートフォン、ゲーム機器、家電製品、便器、包装容器まで、多岐にわたります。


秘密意匠の対象となる意匠権の登録日や出願日、意匠権者などは公開されますが、意匠に係る物品や図面などは公報に掲載されません。以下のその例を2つ紹介します。


【本田技研工業株式会社(Honda)による秘密意匠の例:意匠登録1743540】

出典:J-PlatPat



【TOTO株式会社による秘密意匠の例:意匠登録1739900】

出典:J-PlatPat



秘密意匠制度の手続きと効果


秘密意匠制度を利用するための手続きと効果について解説します。


秘密意匠の手続き

秘密意匠制度を利用するには、対象となる意匠の出願者が、秘密意匠の請求をする必要があります。請求は、意匠出願時または登録料納付と同時に行わなくてはなりません。


請求書の記載事項は次のとおりです。


  • 出願人の氏名または名称

  • 出願人の住所

  • 対象となる意匠を秘密にすることを請求する期間


なお、「意匠を秘密にすることを請求する期間」は最長3年。請求後に「秘密意匠期間変更請求書」を提出することで、最初に請求した期間を延長または短縮することも可能です。


秘密意匠の効果

秘密意匠請求を完了したら、意匠の内容は3年を限度に意匠公報に掲載されない「秘密意匠」になります。掲載されない期間(=秘密期間)の起算点は、秘密意匠の請求日ではなく、意匠登録日です。


秘密期間が経過したら、通常どおり意匠公報に意匠の内容が掲載されます。


なお、秘密期間中であっても、次の場合は例外的に秘密意匠の内容が意匠権者以外の者に示されます。


  • 意匠権者の承諾があったとき

  • 裁判所から請求があったとき

  • 対象となる意匠またはそれと同一もしくは類似の意匠に関する審査、審判、再審または訴訟の当事者または参加人から請求があったとき



秘密意匠制度のメリット

ここでは、秘密意匠制度の2つのメリットを紹介します。


商品の発売までデザインを秘密にできる

秘密意匠制度を利用する1つ目のメリットは、商品の発売までにデザインを秘密にできることです。


通常の意匠登録であれば、図面などが公報に掲載されてしまいますが、秘密意匠であれば秘密期間中は意匠内容が掲載されません。


意匠登録から製品化まである程度の時間を要することが見込まれる場合は、出願又は登録料納付と同時に秘密意匠の請求をしておきましょう。意匠公報を通してデザインが露出することを防げるため、商品の発売前にデザインが知られてしまうことを防止できます。


競合他社をけん制できる

2つ目のメリットは、競合他社をけん制できるという点です。


例えば、意匠登録から短期間で製品化に至る見込みのある物品に関しては、秘密意匠を請求する必要はありません。しかし、意匠の内容が公開されている以上、他社は意匠権の侵害を容易に回避することができます。


そこで、例えば、意匠Aの登録とは別に、意匠Bについても意匠登録した上で、意匠Bについて秘密意匠制度を利用します。意匠Bの秘密期間中は、どのようなデザインが意匠登録されているか他社は知ることができません。意匠Aに関する意匠権を侵害しない製品を作ったとしても、それが意匠Bに関する意匠権を侵害してしまう可能性は残るわけです。


このように、デザイン戦略の一環として活用できる点も、秘密意匠制度のメリットです。



秘密意匠制度の注意点

秘密意匠制度には大きなメリットがある一方で、利用に際して注意すべき点もいくつかあります。


権利行使が煩雑になる

通常、意匠権の内容と同一または類似のデザインの製品を発見した場合、意匠の独占権を持つ意匠権者は、意匠権の侵害を理由に差し止め請求をすることができます。


しかし、秘密意匠の対象となっている意匠権については、権利行使に際して特許庁長官の証明を受けた書面を提示して警告しなければなりません。


本来であれば模倣品が市場に出回るのをすぐにでも阻止したいところですが、秘密意匠の場合は書面の発行と相手に対する警告を待たなくてはならないため、時間のロスが生じてしまいます。


侵害者の過失が推定されない


登録済みの意匠につき意匠権の侵害があった場合、原則として侵害者の過失が推定されます(意匠法40条)。しかし、秘密意匠の対象となっている意匠に同一又は類似の意匠があったとしても、侵害者の過失は推定されません(同条但書き)。


したがって、秘密意匠の秘密期間中に意匠権者が侵害者に対して意匠権侵害訴訟を提起したとしても、意匠権者の側が「相手方が意匠権の存在を知りながら意匠権を侵害したこと」等を証明しない限り、意匠権侵害は認められないことになります。


秘密意匠制度を利用する際には、権利行使におけるデメリットを踏まえて判断することをおすすめします。



まとめ


秘密意匠制度は、意匠内容が露出することを一定期間防げるメリットの大きい制度である一方で、権利行使の局面では注意すべき点もあります。


また、自社の権利保護の観点だけでなく、他社の意匠を調査する際にも秘密意匠制度を考慮したリサーチが求められます。


井上国際特許商標事務所は、秘密意匠制度をはじめとする様々な意匠権の取得から調査までを承っています。「デザイン開発戦略の観点から秘密意匠制度の利用を検討したい」「他社の秘密意匠の侵害を回避したい」といったご要望をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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