商標の審査には、平均9ヶ月ほどかかるとされています。しかし、もっと早く審査をしてもらいたいケースもあるはずです。そんなときにぜひ利用したいのが商標の「ファストトラック審査」です。
この記事では、商標のファストトラック審査とは何か、利用にはどのような条件があるのか、メリット・デメリットはどのようなものなのか、など詳しく解説していきます。
商標のファストトラック審査とは?
商標のファストトラック審査制度とは、商標の審査を6ヶ月程度に短縮して行う制度のことです。商標の審査期間は通常9ヶ月程度とされているため、3分の2ほどに短縮できます。
ファストトラック審査を行うための追加費用はなく、通常審査と同じ費用で利用できます。しかし、すべての審査に適用されるわけではなく利用の条件があるため、詳しく解説していきます。
ファストトラック審査が生まれた背景
商標のファストトラック審査が導入されたのは2018年9月のこと。2015年頃は3~4ヶ月程度だった商標の審査期間が、登録出願数の増加により1年以上に伸びてしまったことが背景にあります。
近年のビジネス情勢の変化は早く、商標の出願から1年後にはマーケットが大きく変化していることもあり得ます。そのため、権利取得の遅さによって支障をきたすことがなくなるよう、ファストトラック審査が設けられました。
当初、ファストトラック審査は「通常審査より約2か月早く審査をする」というものでしたが、2020年2月に強化を行い、出願から約6か月で審査を行う現在の運用に変更されました。
商標のファストトラック審査の利用条件
ファストトラック審査の利用条件は、以下の2つです。
出願時に、「類似商品・役務審査基準」、「商標法施行規則」又は「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」に掲載の商品・役務のみを指定している商標登録出願
審査着手時までに指定商品・指定役務の補正を行っていない商標登録出願
このふたつの条件を両方満たしている場合、自動でファストトラック審査が適用されます。そのため、ファストトラック審査を利用するために特別な手続きは必要ありません。なお、「役務」はサービスを意味します。
商標の「早期審査」と「ファストトラック審査」の違い
商標の審査を短期に終わらせるための審査方法には、「早期審査」制度もあります。こちらはさらに審査期間が短く約2ヶ月で審査が終わります。追加の審査費用はかかりません。
ファストトラック審査との違いは、商標を指定商品・役務に既に使用しているか、使用の準備を相当程度進めている必要があり、権利化について緊急性を要していることが必要なことです。そのため、商標の使用を証明する書類を提出するなど、事情説明を行なう手続が必須となります。ファストトラック審査より利用条件が厳しくなっていると考えましょう。
詳しくは、特許庁ホームページ「商標早期審査・早期審理の概要」をご確認ください。
早期審査とファストトラック審査の使い分け
早期審査とファストトラック審査の使い分けの判断は難しくありません。
すでに商標を使っていたり、まもなく商標を使い始める予定があったりして、すぐにでも商標を登録したい場合は「早期審査」を利用しましょう。
そうでない場合は、ファストトラック審査の利用が適当です。
商標のファストトラック審査にデメリットはある?
無料かつ自動で適用されるファストトラック審査ですが、ファストトラック審査の対象になるためには、「類似商品・役務審査基準」などに掲載されている商品・役務以外を指定することができないことがデメリットとなります。
商標権の効力は、商標登録の申請の際に指定した商品・役務に及びます。指定できる商品・役務が限定されることで、指定すべき商品・役務が指定できず、権利範囲に影響を及ぼす可能性があります。
ファストトラック審査の対象になる商品・役務
商標登録の際は、その商標を使用する商品や役務を必ず指定して出願する必要があります。
ファストトラック審査の対象となるのは、「類似商品・役務審査基準」、「商標法施行規則」又は「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」に掲載の商品・役務のみとなります。出願しようとしている商標がこれらに該当するかの確認は、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を利用するのがもっとも効率的です。
対象になる商品・役務の確認方法
まず、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」にアクセスします。トップページ上部のメニューの「商標」にカーソルを合わせて、「商品・役務名検索」を選びます。
すると、この画面が表示されるので、「データ種別」のチェックマークを「基」と「N」のみに入れます。
次に、「検索キーワード」のボックスに、出願したい商品・役務を入力して下部の検索ボタンをクリックします。
すると、検索結果画面が出ます。
ここで、データ種別の欄に緑色の「基」又はオレンジ色の「N」のマークがついている商品・役務はファストトラック審査の対象となります。
なお、ファストトラック審査を利用したい場合は、願書に記載する商品・役務すべてが「基」及び「N」マークがついたものである必要があります。
商標登録の手続きの流れ・必要な費用は?
商標登録の手続きの流れや、必要な費用については、こちらのページに詳しくまとめています。合わせてご覧ください。
まとめ
ファストトラック審査は、審査期間が最大で3ヶ月程度短縮されるにも関わらず、追加の費用がかかりません。そのため、対象になる商品・役務であれば、ぜひ利用したい制度です。
さらに急ぐ場合は、さらに審査が早い早期審査制度もあります。賢く使い分けて商標登録までにかかる時間を短縮しましょう。
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